日本の職人気質 今いずこ
Vol.3-10.22-1012 日本の職人気質 今いずこ
2022.10.22
「三菱電機不正 新たに70件」
もう見慣れたニュース記事になってしまった。情けないと言うか、日本のモノづくりへのこだわり、職人気質はどこへ行ってしまったのだろうか。
もう何年もという時間軸で不正は普通のことになってしまった感がある。日本のというより、日本人の信頼を地に貶めるような不正が何年も続いている異常に慣れてしまった。
21日の新聞のニュースに
◆三菱電機の一連の品質不正問題で、外部の専門家による調査委員会の最終報告を公表したあとに、新たに70件の不正が見つかった。
不正をして何の得になるのであろう。経費の節約か、手間をかけたくないのか。
国内に22ある製造拠点の約8割にあたる17拠点で不正が行われていたのだ。ここまでくれば組織ぐるみである。
驚くことなかれ、昨年6月に不正が表面化した6月以降も不正が続いていたというから驚きである。
ここ20数年の不正の実態である。
<1980年>
- 1980~ パロマ ⇒ 動作不良事故死無報告
<2000年>
- 2000.6 三菱自動車 ⇒ リコール隠し
- 2000 雪印乳業 ⇒ 設備故障での集団食中毒
- 2000 ミスタードーナツ ⇒ 無認可添加物混入
<2001年>
- 2001 雪印乳業 ⇒ 牛肉偽装
- 2001.10 雪印食品関西ミートセンター ⇒ 外国産牛を国内産に偽装
<2002年>
- 2002.5 ダスキンミスタードーナツ ⇒ 違法酸化防止剤 添加
- 2002.8 日本ハム ⇒ 外国産牛を国内産に偽装
- 2002 ミートホープ ⇒ ミンチ牛肉にミンチ豚肉を混入
<2006年>
- 2006.10 不二家 ⇒ 期限切れ原材料使用
<2007年>
- 2007~15 東洋ゴム ⇒ 断熱パネルの性能偽装
- 2007.8 石屋成果 ⇒ 賞味期限偽装
- 2007.10 赤福 ⇒ 消費期限偽装
- 2007.11 船場吉兆 ⇒ 食品偽装
<2008年>
- 2008 丸明(岐阜養老) ⇒ 偽装表示
<2010年>
- 2010.4 田辺製薬工業バイファ ⇒ 承認申請データ改ざん
<2013年>
- 2013.2 浪花酒造 ⇒ 原材料偽装
- 2013 大手ホテル・百貨店(阪急阪神ホテルズリッチ他) ⇒ 食材偽装
<2014年>
- 2014 木曽路 ⇒ 食材偽装
- 2014.6 ノバルティス ⇒ 臨床研究データ捏造
<2015年>
- 2015.6 化学及血清療法研究所 ⇒ 不正ワクチン製造
- 2015.10 旭化成建材・三井住友建設 ⇒ 杭打ち工事データ改ざん
- 2015.10. 旭化成建材・日立ハイテクノロジーズ ⇒ 杭打ち工事データ改ざん
- 2015.10 千葉県の建設設計事務所 ⇒ 耐震偽装
- 2015.11 タカタ ⇒ 燃費・排ガスデータ改ざん
<2016年>
- 2016.4 三菱自動車 ⇒ 燃費データねつ造
- 2016.5 東亜建設工業 ⇒ 空港工事での地盤改良データの改ざん
- 2016.5 スズキ ⇒ 燃費・排ガスデータ改ざん
- 2016.9 神戸製鋼 ⇒ 性能データ改ざん
- 2016.9 神鋼鋼線ステンレス ⇒ 性能データ改ざん
- 2016 ダイコー(産廃処理) ⇒ 期限切れ食品の不正転売
- 2016 三笠フーズ ⇒ 事故米食用偽装転売
<2017年>
- 2017.5 東芝エレーベータ ⇒ 設計不正
- 2017.6 山本化学工業 ⇒ 原薬登録捏造・製造法無届変更・出荷判定記録不 記載・ 製造記録捏造
- 2017.9 日産自動車 ⇒ 完成検査を勝手に変更
- 2017.10 スバル ⇒ 完成検査を勝手に変更
- 2017.11 三菱マテリアルグループ ⇒ 製品の検査データの書き換え他
- 2017.11 東レグループ ⇒ 製品の検査データの書き換え
<2018年>
- 2018.2 宇部興産 ⇒ 無検査による出荷
- 2018.3 東洋ゴム ⇒ 免震用ゴムの試験データ偽装
- 2018.6 スバル ⇒ 燃費・排ガスデータ改ざん
- 2018.6 日立化成 ⇒ 製品の検査データの書き換え
- 2018.7 日産自動車 ⇒ 燃費・排ガスデータ改ざん
- 2018.10 カヤバシステムマシナリー ⇒ オイルダンバー検査データ改ざん
- 2018.10 日立化成 ⇒ 不正検査
- 2018.11 日立化成 ⇒ 検査データの改ざん
- 2018.12 トーカン ⇒ 品質データ偽装
<2019年>
- 2019.2 三菱重工エンジン&ターボチャージャ ⇒ 基準を超えたアスベスト製品出荷
- 2019.2 川金ホールディングス ⇒ 制振装置に改ざん
- 2019.6 スズキ ⇒ 完成車検査で国の基準を逸脱
- 2019.5 IHI ⇒ 航空エンジン整備の検査不正
- 2019.3 住友重機械 ⇒ 半導体製造装置向け部品の不適切検査
何故、不正が行われるのか、いくつかの点が上げられている。
① 収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土
② バランスを欠いた工場運営
③ 不適切行為を招く不十分な品質管理手続き
④ 契約に定められた 仕様の順守に対する意識の低下
⑤ 不十分な組織体制
あたりまえに考えられることが上げられている。
しかし、そうかなと思う。ジイは少し前、老体にムチ打ってある会社のパートを少し経験した。
全員を集めて、本社の社長や専務の訓示のようなビデオが流れる。
そこではいつも、「みなさん、頑張って○○を獲得してください。一人一人の頑張りが我が社の成長に最も大事なことであります。」いつも言うことは同じである。
本来なら「我が社の製品は “ お客様のために我が社が精魂込めて作ったものです ” お客様に懇切丁寧に説明してください。お客様がいらないと言えば、どんなどんなところを直せばいいでしょうか、教えてください。もっといい商品をつくります。 そう言って教えを乞うてください。そして我が社はお客様に喜んでいただける商品を作るのです。みなさん、自信と誇りをもって仕事をしてください。お客様に貢献しているという自負をもって仕事に励んでください」
このように社員に語りかける社長がいないのではないか。ただ我が社の収益だけにハッパをかける。『目の前の商品が誰かを幸せにするんだ』と思えば不正どころか目が「爛々」と輝きそれこそ疲れさえ吹っ飛ぶのではないか。
それぞれの部署の長が社長の意を汲み以心伝心で社員全員に伝わる。それこそが会社の強みである。
かつて松下幸之助は我が社は「人を育てる会社です」と言ったという。そういうことではないか。
今日も、テレビで、日本に来た外国人が「プロフェッショナル」という番組で、料理人のプロの技術にこだわるドキュメンタリーを見て、料理人を目指したと語っていた。まさに日本が誇る職人気質が人を育てる。
日本の勤勉で誠実、仕事へのこだわりに見られる妥協を許さない技術の高さ、その土台が崩れている。その昔、手を抜こうものなら “ スパナが飛んできた ” 本田宗一郎や松下幸之助の時代を懐かしまずにはいられない。
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