米・サウジアラビア・中
Vol.3-12.10-1061 米・サウジアラビア・中
世界は一瞬たりとも油断できない。
中東の実力者と中国の接近。またもやアメリカの悩みの種となった。
2022.12.7日から3日間、中国・習近平国家主席がサウジアラビアを訪問した。
中国は米牽制。サウジは米中の間に入って両国を操ろうというのか、それとも米中という世界の1、2位の経済・軍事大国のいいとこどりを目論むのか、つまり、石油を武器にする商売と、安全保障上、両軍事大国との親密度を上げることによりパワーバランスを見据えた両国のしたたかな戦略だ。
しかし、どう見てもサウジ&中国の接近は米国に分が悪い。
いずれ国王に就任するムハンマド・ビン・サルマン皇太子。2018年に起きた反体制派サウジアラビア人記者殺害事件で、ムハンマド皇太子が殺害を承認したとする米機関の報告書の公表により、サウジ側は皇太子の関与を否定して反発、関係が冷え込んだ経緯がある。
その関係もあってか、ウクライナ戦争でエネルギー価格高騰を受け、今年7月に原油の増産を求めたが、やんわり断られている。
その米国とサウジのギクシャクに割り込んだのが中国。
習近平総書記は、暗殺や人権問題などまったく意にも介さない。いわば絶対権力を持つ両国は「同じ穴のムジナ」としてある意味ドラスチックに進められる同類の強みがある。
一方、アメリカは自由民主主義、且つバイデン大統領はこと「人権」に関してはうるさい。
すでに、ここで差がついてしまう。
サウジは中国の原油輸入量の18%を担う最大の調達先。サウジにとっても最大の貿易相手国ときている。
中国は中国共産党一党独裁で結論は早い。一方サウジアラビアも政体はサウード家による絶対君主制であり、中国共産党よりも強い絶対的権力を保有する。
アメリカは何よりも民主主義、結論に時間がかかる。さらに世界の民主主義を先導する立場上、サウジ皇太子の殺害事件もないがしろにできない。世界の警察官を放棄した後、影響力はかなり弱くなっている。
中国はしたたかである。そこを見逃さなかった。
12月7日からサウジアラビアを訪問。サウジは人権問題でぎくしゃくするアメリカを牽制する意味でも、中国・習近平総書記の訪問はベストタイミングとなった。
習氏は7.8.9日と滞在、アラブ諸国との首脳会議に出席し中東との関係を強化した。サウジとは経済協力を軸に300億ドル(4兆1千億円)規模の協定に署名する予定だという。何でもありの中国はアメリカと違いうってつけの大国である。
2016年にサウジと結んだ包括的な戦略的パートナーシップは「平和と安定、繁栄と発展」をもたらしたと強調し、今回の首脳会議は「新たなレベル」に導くと述べ、今後の進化に期待を寄せた。
声明によると
① 内政不干渉の原則を守る
② 両国の人権弾圧をめぐる欧米の批判に一致して対抗する
アメリカが排除した通信機器大手ファーウェイも受け入れ、さらに、中国語教育の拡大の他、政府や企業が交わした合意文書は46件に上るという。
サウジのエネルギー省は、中国の信頼できるパートナーであり続けると述べ、エネルギー供給網拡大のため国内に拠点を設け、両国の関係を推進する意向を示した。
中東には民主主義とは程遠い国が多い中、中国のような何でも呑み込んでしまう国とはやりやすいはずである。
アメリカにとって中国の台頭は頭の痛い問題である。中国が中東やアフリカ、太平洋の島嶼国等、発展途上国を手当り次第取り込んでいくようなことになれば、過去の2大大国「米・露」の冷戦期よりよりやっかいな国際環境になっている。
多くの途上国が中国の誘いに乗るのは、金持ちで独裁、結論の速さにあるのではないか。
今後、世界は大きく3つに分類されていくのかもしれない。
1、アメリカを中心とする西側諸国の自由民主主義陣営
2、中露などの、権威・独裁主義陣営
3、インドのように双方に関係を持ちつつ独自の道を模索する諸国
たまたまラジオから流れてきたのはマウンティングという言葉である。巷にある個人同士の優位性を示す行動の様々は、その経緯や排除の論理に至るまで、人間関係の生き様と国家間の駆け引きは何ら変わらない。
世に生きるすべての動物には必要不可欠な行動なのであろう。
平穏無事に一つの考えでまとまることはあり得ない。今さらではないが、美しい地球だが生きて行くのは大変なことだ。
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