橋下徹の研究

日本,,雑記

Vol.4-1.12-1094    橋下徹の研究

2023.01.12

今から50年近く前、1974年(昭和49)ジャーナリスト・立花隆氏による、「田中角栄研究 その金脈と人脈」が発表された。

文字通り田中角栄元総理の金脈と人脈の実態を明らかにしたもので、首相退陣のきっかけとなった。

今回の、百田尚樹氏の「橋下徹の研究」(飛鳥出版)を見て即座に「田中角栄研究」を思い出した。

今の時代と50年前とは比べるにはあまりにも環境が違い過ぎるのと、人物のスケールも桁外れに違う。表題は同じでもかなり内容は違うが、橋下氏の人物像がほぼストレートに入ってきて実に分かりやすかった。

今では超有名になった橋下徹氏、弁護士であり政治評論家でありタレントでもある。過去には大阪府知事に大阪市長をも務め将来有望視された政治家でもある。

故石原慎太郎氏や故安倍晋三氏にもその素質を買われ近しい関係でもあった。

ジイは、その素質の中でも実行力と対処能力の高さには感心し、つい最近まではたまに?がついたがまだ期待する人物であった。

その、ちょっとおかしいなと?疑問を初めて感じたのは橋下氏が大阪府知事時代だ。オーケストラの楽団や文楽の補助金を大幅に減らしたことである。

ジイの記憶では「『文楽』のどこが面白いやん」と言ったとか言わなかったとかが新聞に載った時には、さすがにこの人の国家意識の低さというか、日本文化への無智を目の当たりにし、情緒の欠如を感じがっかりした。

政治家をやめてから度々そのような発言を聞くようになり注意深く見ていたが、今回ウクライナ戦争のコメントを聞いた時には百田氏ではないが “ 唖然 ” としたといより、ついにブチ切れてしまった。

この、「橋氏徹研究」にもあるが、靖国神社の認識、沖縄問題などへの発言を聞いて、決して政治家にしてはならない人間だと確信を持った。昔流行ったディベートとというジャンルにおける、試合巧者というレベルに下げざるを得ない。

決定的だったのは、ウクライナ人の国際政治学者グレンコ・アンドリー氏を前にしての発言である。

「祖国防衛のために命を落とすことが一択になるということが、僕は違うと思うんですね。・・・プーチン大統領だってどこまで生きるんですか。今70ですよ、あと30年も生きられませんよ。・・・ロシアが瓦解するまで、国外で退避したっていいじゃないですか。祖国防衛、そこで命を落とす、それしかないという状況にみんななってしまうと、国外退避することが恥ずかしいことだ、それはやっちゃいけないことなんだ、売国奴だなんていうような批判を恐れてしまうような、そういう空気の方が僕はおかしいと思うんです」

と語った。この国外退避は女性子供だけの話ではない。国民全員の退避が前提の話だ。つまり降伏せよと言っているのだ。

「あと十年、二十年頑張りましょうよ。もう一回そこからウクライナを立て直してもいいじゃないですか。プーチンだっていつか死ぬんですから」

ウクライナ国民4000万人が国外退避できたとして、ロシアの国土になった後にどうしてウクライナをとり戻すのか。日本の歴史も知らないくらいだからウクライナがどんな苦難の歴史を歩んできたか知る由もないだろう。あまりにも軽すぎる発言。それをウクライナ人の政治学者の前で斟酌なく話してしまう人間性、「秀才脳回路短絡バカ」としか言いようがない。

もちろん、グレンコ・アンドリー氏は激怒した。

沖縄に至っては
「沖縄は『沖縄独立の賛否』『中国政府に沖縄の港を貸すことの賛否』を問う住民投票をしかけて、沖縄が日本から逃げてもいいのか、特に中国側に寄ってもいいのかどうかを、政府与党や本土の国民に対して突きつければいいのです」

とは、驚きである。完全に中国の回し者である。

これらの発言はすべて本人がツイッターやテレビで発言したものである。恐ろしい人間像が浮かび上がった。

考えは人それぞれである。橋下氏に賛同される方も多かろう。現に、ラサール石井氏などは、中国が攻めてきたらさっさと降参し、中国の良いところ?で平和に過ごしたい。などと発言していたのを思い出す。

日本をこよなく愛するジイとしては悲しいこと限りない。

しかし、靖国論争に対し、百田氏と橋下氏の「どちらの意見を支持しますか?」というアンケートに81%以上が百田氏の意見に賛同者がいたのには少々安堵した。

橋下氏は弁護士である。厳しい司法試験を勝ち抜いた秀才であることは間違いない。その頭脳から発する思想とは何に由来するのであろうか。この本はその深層に迫ったものではない。

本のさわりしか紹介できないが、まずは読んでいただきたい。膨大なツイッターにテレビでの発言が、分かりやすくまとめ上げられている。テレビ画面やツイッターからの発言を主に考察しているため、橋下氏のストレートさは十分伝わってくる。

元教諭や同窓生が語った9項目の人物評があるが、現在の橋下氏そのものである。是非手に取って一読をお勧めしたい。

次回作は、橋下氏がこのような思想に至った原点を探る「橋下徹研究・無思想への道程(仮題)」なるものを百田氏にお願いしたい。そうなるとかなり分厚い本になる。儲かりまっせ~、百田氏。

ブログランキング・にほんブログ村へ