ブルータス、お前もか?
Vol.5-6.9-1153 ブルータス、お前もか?
2024-06-09
車の認証申請による不正事件という深刻な謝罪会見で、トヨタ自動車・豊田章男会長は苦笑いを浮かべ、「ブルータス、お前もか?」とジョーク?まがいの発言をしたのには驚いた。
日本の頂点に立つ企業である。「型式指定」の認証申請における不正は日本の信用を根底から崩した。トヨタだからこそ起こしてはいけない不正の罪深さを会長は認識していないのではないか。
今回の不正は ❝ 取るに足らない問題 ❞ と、ことさら小さな問題であるというように印象付けるためのパフォーマンスか、それとも純利益4兆円を生み出す企業としての驕りか?真意は不明だが、日本の信用はガタ落ちである。
日本車の人気の根底には、技術力、安全性、耐久性、故障しない車というモノへの信頼性に加え、日本人の誠実な人間性をも評価されてきた。
日本企業のトップに君臨するトヨタ自動車(Wikipediaによれば)
※トヨタグループ全体の2022年の販売台数は1,048万台と、3年連続で世界1位となった。世界最大の自動車メーカーの1つであり、2021年時点の単独売上高は全世界の企業の中で世界9位。2022年における企業ブランド力は全世界で6位。売上高、時価総額、営業利益という点において日本最大の企業である。
とある通り、企業内容は世界に誇れる立派な世界企業である。今回の不正は自社の好調な業績と、長年において自動車業界を牽引してきた自負が傲慢に変質、いつの間にか謙虚さを忘れ去ったのかもしれない。
「ブルータス、お前もか?」は、信頼していた者の裏切りを表現する、ラテン語の詩的な格言だ、日本のいや世界の信頼を裏切った罪は計り知れなく大きい。その重大性を全く理解していないと実感するとともに、トヨタ自動車会長としての人間性を疑う。
成り上がりの ❝ おっさん ❞ と何も変わらない。
スティーブ・ジョブスを真似てか、会見ステージやコマーシャルでのパフォーマンスも日本の味を忘れた西洋かぶれでかえって不格好である。
自動車業界の不正はここ数年続けざまである。何度自動車業界のトップが頭を下げる光景を見てきたことか。真摯なる日本ははすでに過去のものだ。当の本人はそんなことなど気にもしていないであろうが。
何しろダイハツ工業と日野自動車を子会社とし、SUBARUの筆頭株主でもある。
つい先日発表があったように、2024年3月期の純利益は単独で4兆円を超えた。日本一の大企業である。「ほんの小さな不正」がどうした!?という思いが、笑みを浮かべながらのブルータス発言につながっているのは間違いない。
今、自動車は新たな転換期にある。
世界は脱炭素を起因にEV車へのシフトが叫ばれている。日本のEV車トップの日産ですら14万台弱の中、アメリカ・ステラと中国・比亜迪(BYD)が牽引するEVは2023年度BYDが157万台、ステラが120万台。日本は完全に置き去り、出遅れ感は否めない。
NIKKEI Mobilityによる世界のEV車販売シェアだが
1位 米ステラ 19.3%
2位 中国BYD 16.0%
3位 独VWグループ 8%
4位 米GMグループ 6.6%
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10位 日産・三菱・仏ルノー 3.2%
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24位 トヨタグループ 1.0%
これを見れば一目瞭然、EV車販売は完全に出遅れている。
しかし、日本や欧州勢に一時のEV熱からは、ちょっと冷静になりつつある。
脱炭素潮流で一気にEV熱が上がったものの、すでに販売は減速傾向にある。理由はいくつかある。そのメリット・デメリットである。
◆ EVの課題
(デメリット)
① 充電設備がない(集合住宅に住んでて車庫がない)
② 走行距離に不安(200Km~400Km)
③ 価格が高い(大雑把に100万円以上高い)
④ 充電に時間がかかる(急速80%充電まで20~40分)
⑤ バッテリーの高い交換費用(保証8年数十万円の交換費用)
⑥ 車種が少ない
⑦ ガス欠ならず電欠時は駆動輪がロックされ押して移動は不可能
⑧ 重いバッテリーは300〜500kg程度。ガソリン車は満タンにして60Kg(1ℓ≒750g)とするとEVのバッテリーはかなり重い、タイヤの減りにも影響する)
◆EV導入の主なメリット
① 走行中にCO2を排出しない
② 揺れや振動が少ないスムーズな走り
③ ガソリン車より維持費を抑えられる
④ 長距離を走るほど燃費が抑えられる
⑤ 非常時に蓄電池として使える
⑥ 補助金制度が手厚い
⑦ 自動車関連の減税が受けられる
⑧ 国立公園の有料駐車場が無料になる
等々だ。
しかし、世界の潮流は脱炭素が底流にあり、EVは時代の流れであるという見方は強い。ただアメリカでは、民主党側の『EVは気候変動対策に役立つ』という声と、共和党側の『気候変動問題はメディアに誇張されたもので、大した課題ではない』という声の対立があると、アメリカ政治コンサルタント・マイケル・マーフィー氏が産経のコラムに書いている。万が一トランプ氏が大統領にでもなれば、アメリカEVは冷え込むかもしれない。
ただ、EV市場はバッテリーの画期的な軽量・小型化が実現するのと同時に充電インフラが充実すれば、様相は大きくかわるだろう。ただし少々の時間を要することは間違いない。その間に水素を燃料とするエンジンなど熾烈な開発競争も同時進行する。自動車の近未来は大きな転換期を迎えた。
その将来の転換期を確信し、ソニーなどの異業種がEV市場に参入を決めた。スマホのようにソフトウエアの書き換えによって性能を向上できる次世代車・SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)の分野だ。
現段階では数々の壁を乗り越える必要があるが、その未来は少し時間を必要とする。しかし予想をはるかに超える画期的な車の出現が期待され、ワクワク感は将来の希望でもある。
そのような夢の世界とは裏腹に、欧州ではドイツがEV補助金を終了、VWがEV車減産に踏み切ったように動きは流動的になってきた。
日本のトヨタの世界市場に占めるEV割合が1%というのも日本の自動車業界はEVかHVか、はたまたPHVか。さらには水素自動車なのか?、非常に難しい車の将来を断定するのは難しい。その過渡期を有利にと研究にしのぎを削っているのが現状ではないか。
そんな中でもEV販売1%のトヨタはしたたかである。
EV販売台数世界一となった中国・比亜迪股份有限公司(BYD)と2019年に合弁会社を設立し中国EV生産に力を貸しているのである。
トヨタのHPには
比亜迪股份有限公司
トヨタ自動車株式会社
比亜迪股份有限公司(以下、BYD)とトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、2019年11月7日に電気自動車の研究開発に関する合弁会社の設立に向けた契約を締結して以降、両社で準備を進めてまいりましたが、この度、登記を完了し、5月中を目途に事業を開始することになりました。新会社の社名は「BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー有限会社(以下、BTET)」で、董事長にトヨタの岸 宏尚が、総経理にBYDの赵炳根が就任します。
会社設立にあたり、新董事長の岸 宏尚は、「新会社では、BYDとトヨタそれぞれの強みを持ったエンジニアがひとつ屋根の下に集い切磋琢磨しながらクルマづくりに取り組むことで、中国のお客様に喜んでいただけ、性能にも優れた電気自動車の開発を目指します」と語りました。・・・・・
合弁会社の概要を見ると
・本社 広東省 深セン市 坪山区
・事業内容 電気自動車及びそのプラットフォーム、関連部品の設計・開発等
・出資比率 トヨタ(50%)・BYD(50%)
なんのことはない、中国・BYDのEVはトヨタの技術がつまっているのだ。
BYDのコマーシャルはTVで流れるが、一切トヨタの名前は出ない。BYDがEV市場を席捲する中、EVシェア1%でも何の心配もいらないのだ。心配なのはトヨタの技術が、政治的に日々脅しを受ける中国に吸い取られているのではという心配である。
接続水域を含め尖閣諸島周辺で中国の船を確認するのは169日連続、領海侵犯は18日を数える。つい最近では呉江浩・中国大使が「台湾をめぐり、日本が『中国の分裂』に加担すれば『日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる』と語った。」軍事力を振りかざし強烈な脅迫をした。
その中国と合弁会社をつくり、技術協力をするトヨタとは、、、日本国の安全より金儲けが第一主義がすけて見えて少々うんざりだが、トヨタ会長の『ブルータス、お前もか?』の会見で悲しいかなその実像を見た思いがする。
その昔、『武士は食わねど高楊枝』という格言があったが、ジイのようなトシになるとそんな「武士の清貧や高潔さ」をどこかで求めてしまう。
そういえば、財務関係は金庫番に任せ、車づくりに没頭、モータースポーツを愛し、F1ドライバー・アイルトン・セナを支援し、不誠実な仕事振りにスパナを投げつけた本田宗一郎の笑顔を懐かしく思い出す。
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