命がけの証言
Vol.2-5.1-473 命がけの証言
2021.5.1
<命がけの証言:著者・清水ともみ / WAC㈱>
本の帯には
~ウイグル人たちの真実に目を背けないでください~ とある。
言わずと知れた習近平・中国による「強制収容所」の恐怖、文化的ジェノサイド、臓器狩り、中絶の強要などを告発したマンガである。
ショックなのは、序章やあとがきに書かれた文面だ。
「経済面、文化面、人的交流でも抜き差しならない間柄になっている国は非常に多く、その中でも国民がその恐ろしさを認識していない、国としても危険性を発信せず肩を組んでいる世界の大国は日本ではないでしょうか。」
グーの音も出ない。いままさに大河ドラマで放映中の「渋沢栄一」の心根や今何処だ。
それを裏付けるように加藤官房長官は
「我が国には人権問題のみを直接、あるいは明示的な理由として制裁を実施する規定はありません」
さらに外務省は
「日本としてはジェノサイドとは認めていない」と発言するのみ。
ならば、言葉でもいい
「我が国は人権弾圧をゆるさない」と一言いえばいいだけの話だ。その一言が何故出ない。昔よく言われた顔の見えない日本人そのものである。武士道を世界に発信した新渡戸稲造は遠い昔のおとぎ話である。
まさしく逃げ口上だけは超一流、国家として三流である。
本の内容の一部を紹介する。
<序章>
・・・街中いたるところに金属探知機が設置されていて、銃火器を持っていないか検査を受ける・・・。ホテルロビーには「祈り禁止」「ウイグル語禁止」の文言があちこちに貼られていました。
・・・食事をしようと村に入ると、パトカーが村を包囲し、ウイグル人を捕まえていた。・・・日常茶飯事で発生していました。
中国共産党は、強制収容所に収監している人々から臓器を強制摘出し、年間10万件以上の臓器を世界に提供しています。
あろうことか、フジテレビは情報番組『特ダネ!』で「日本から中国へつないだ“命のバトン”(2020.6.16)というテーマで放送した際には、中国の臓器移植のスピードを称賛する始末でした。
・・・北朝鮮や中国の人権弾圧などを見て見ぬフリをしているのは、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウです。その事務局長の伊藤和子氏は「人権は国境を越えて」(岩波ジュニア新書)という本を書いていますが、北朝鮮や中国のさまざまな人権弾圧には沈黙しています。・・・
序章でさまざまな日本の姿を見せられると、何かと言えば平和を口にしながら心は全く違う人間が浮かび上がる。GHQの洗脳によって生み出された日教組、自虐史観、国家観の喪失、正に根無し草になった日本人像は、今の与野党議員そのものである。
本章は7人の証言者の実話にそってすすむ。
<第一章> ◆その國の名を誰もいわない
神を信じた罪で、ある日突然逮捕される
収容施設は180カ所を超え100万人上のウイグル人が収容されている
一週間拷問を受けて 傷だらけの女性の胸を 麻酔なしの手術で切り開いていました
最初が心臓で 次が腎臓 メスを入れると大量の血が噴き出して・・
手術ばさみで 切り取られた時 痛みで身体が 痙攣しました
私は監視役で むごかった・・ 今でも鮮明に もうこれ以上は話せません
2017年頃から当局は「全民検診」と称する無償の健康診断をおこない、12才から65歳までの血液・DNA生体データが収集された。カシュガルの空港には臓器専用の運搬通路が存在している。
妹は妊娠6か月の状態で釈放され 首を吊って死にました まだ18歳だった
<第三章> ◆私の身に起きたこと
2017年5月 友人の娘から
緊急事態だから すぐウルムチに来てほしいと 呼び出されました
急いで 深夜バスと タクシーを乗り継ぎ
やっとの思いで ホテルに到着したとたん
公安がやってきて 連行されました
(外国へ送金した罪だということだが、朝8時から23時まで、水も飲ませてもらえず、自白を強要される。結局彼女はセンケンという刑務所に送られる。)
頭はシラミが 湧いたので 丸坊主にされ 全員が皮膚病になっていました
私たちは 朝から15時間 座りっぱなしの 罰を受けます
時々 全裸でおかしな格好を させられ
屈辱的な 検査を受けました
取り調べに 連れて行かれる時は 必ず目隠しを させられ
多くの女の子は 二度と戻って きませんでした
そのような刑務所でも、対外疑惑払しょくのため外国人記者の取材を受け入れていた。
その時はいつもと違って様変わり、きれいな民族衣装を着て、歌や踊りを命令に従って一生懸命やりましたと証言した。
彼女の場合、拷問を受けたことによる病気で釈放され、トルコに亡命した。何とか命を繋いだ幸運な女性だ。
この本には7人の証言がマンガで描かれている。
簡単に読める本だ。多くの日本人に読んでもらいたい。政府ができないのであれば、TVでラジオでネットでも紹介して拡散しなければならない。
冒頭の話ではないが、日本人にはどういう訳かこの期に及んでなお、親中や、ジェノサイドすら告発をしない名ばかりの “ 平和団体 ” の多いことか。
英国BBC放送の特派員・サドワース氏の勇気ある取材が、中国当局の逆鱗にふれ台湾へ家族ともども脱出したが。背骨が腐った日本とは雲泥の差だ。
政府や経済界には失望だが、カモメ㈱のように「ウイグル産のトマト輸入を中止する」と発表した骨のある企業があることが、わずかな救いだ。