矢野論文の何が問題?
Vol.2-11.12-668 矢野論文の何が問題?
2021.11.12
文藝春秋11月号に掲載された「矢野論文」とは何ぞや。
雑誌、テレビのワイドショーなんかでも取り上げらているようだが、あまりよく分からず関心もなかった。
そうしたら、経済学者・田中秀臣氏がWiLL12月号に
「文藝春秋『矢野論文』は岸田倒閣の一矢」」とあるではないか。えっ、それってどういうこと、と興味を持った。
文藝春秋11月号は10月10日発売である。ということはこれから総裁選行われる前の発行になる。田中氏はそのタイミングでの論文との関係性にも言及した。
「コロナ禍の中での総裁選」→「日本経済が危機的状況に置かれている」→「大規模な経済対策が争点になる」そのシナリオを予想した「矢野論文」ということになる。
何故、そこまで問題視されたかということだ。総裁選で岸田氏は成長と分配を掲げた。「新しい資本主義」は経済のパイを拡大することで経済格差の解消をうながすものである。
緊縮財政を信奉する財務省と岸田氏の主張とは相反するもので、端的に言えば、この流れを断ち切りたい。そこで出たのが「矢野論文」ということになる。
財務省は緊縮財政主義である。標榜するところは、日本のエコノミスト、経済学者などが信奉する構造改革主義である。
構造改革主義とは「不景気は規制に守られた既得権益のせいだ」という考えで、既得権益を破壊するために規制緩和や民営化を進めれば、日本は長期停滞を脱却できるとうもの。
田中秀臣氏に言わせると、
『彼らは、コロナ禍において国民生活がひっ迫する原因を、「国民の努力不足」に求める。「おカネ不足」が原因という発想には決して至らない。彼らは「努力不足」のことを「生産性が低下している」と表現する。コロナ禍で売り上げが減少しても「生産性が低い」民間に責任があるという認識なのだ。』というのだ。
岸田氏と違い、今回の総裁選に出馬した河野太郎氏を始めとする「小石河連合(石破・小泉)」は構造改革主義者である。
むかし、小泉純一郎氏が「自民党をぶっ壊す」と叫んだように河野旋風が起きることを期待していたようだ。矢野論文は小石河連合の応援団になる予定だったが河野氏の敗北は大きな誤算となった。
矢野論文は「バラマキ批判」をし、「このままでは国家財政は破綻する。コロナ対策は大事だが人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む」と訴え、岸田総理がコロナ対策として数十兆円規模の補正予算を訴えを “ バラマキ ” だ。と批判した。
田中氏は総選挙を目前にしたタイミングでの矢野論文は、一種の「倒閣運動」といっても過言ではない。という。
この大変な時期である。財政出動することが財務省にとってそれほど大変なことなのか、論文を寄稿してまで反政府的行動を起す事なのかジイにはイマイチ理解できない。
しかし、田中氏は、
①緊縮すればするほど、財務省は予算の配分権を強めることができる
②それによって、政治家は予算の元締めである財務省の顔色を窺うようになる。
③財務省幹部たちは天下りの甘い果実を貪ることができる
ということらしいが、公務員の最高職を司る霞ヶ関の職員がそこまでゲスな意図を持って動いているのであろうか、
そこでネットにあった中野剛志・評論家の論文関連記事だ
矢野氏が月刊誌で訴えた主張内容である。
①「経済対策を打つ際に財源をどうするかという議論がなさすぎる」
②「財源のあてもなく公助を膨らませようとしているのは日本だけ」
③「超低金利で金利が事実上ゼロでも、財政出動を増やせば単年度収支の赤字幅が増え、財政は際限なく悪化してしまう」
④「消費税引き下げは問題だらけで甚だ疑問」といったものだった。と要点を整理した上で、
中野氏の指摘である。
◆ 第一の問題は、矢野次官が、自ら言うように「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」にいながら、そういう立場にはあるまじき行為に及んだということにある。
◆ 問題は、日本国債の格付けが下がり、日本経済全体に悪影響を及ぼしかねないメッセージを送っているのは、ほかならぬ矢野次官自身だというのである。
「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」にいる者が、日本は、氷山に向かって突進しているタイタニック号のように、財政破綻に向かって突進していると告白したのだ。それも、「どんなに叱られても、どんなに搾られても、言うべきことを言わねばならない」という確信に満ちた強い口調なのだ。
◆ 「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」として、財政破綻を恐れるからこそ、自ら財政破綻の引き金を引くような発言は慎むべきで、ところが、矢野次官は、あろうことか、異例の強さで「このままでは、日本の財政は破綻する」というメッセージを発してしまった。
これは、官僚が政治家に対して異論を唱えたなどということよりも、はるかに重大な問題である。
この指摘はジイにも理解できる。
田中氏の指摘は財務省の闇に深く切り込んだもの。中野氏の説明は広く俯瞰して素人にも分かりやすい問題点を指摘したということだろう。
ある意味、矢野論文は財務省自らの問題点をさらけだしたことと、借金大国・日本の財政に2つの考え方があることを示したことの意義はあったのではないか。
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