移民・難民・治安
Vol.2-11.17-673 移民・難民・治安
2021.11.17
大統領選が目白押しである。
2021.9月・・・ドイツ大領選挙
2021.10月・・・日本・総裁選挙・衆議院選挙
2022.3月・・・韓国大統領選挙
2022.4月・・・フランス大統領選挙
来年4月大統領選挙を控えるフランス。扇動的な評論家が、出馬もしていないのに選挙戦を激変させているとニュースにあった。
エリック・ゼムール(63才)、ユダヤ系で、旧植民地アルジェリア出身の移民2世。この出自をみれば、親イスラムと思うがどうもそうではないらしい。
イスラム敵視の主張を遠慮なく語る過激人。
彼の登場で、政治論戦は「移民と治安」一色になったというのだ。
移民問題は、かのアメリカでトランプ大統領が、メキシコ国境に壁をつくって不法入国を阻止しようとしたのが記憶に新しい。対照的にドイツではメルケル首相が率先して寛大な移民政策で喝采を浴びた。
今回のフランス現象は、新型コロナで苦しめられたことがきっかけである。フランスでは11万人がコロナで死亡、長い都市封鎖を余儀なくされた。日本の10倍以上の死亡率である。
この長くつらい経験が、“ 外敵 ” から国を守れという意識に繋がったというのだ。アメリカトランプ大統領ではないが、「国を守れ」「自国第一主義」「反移民」、ゼムール現象は、これに似ているという。
「移民はテロと関係する」「移民の受け入れ一時停止を」と叫ぶ。ジイが考えるにコロナで苦しめられたうっぷんを移民にぶつけているような気がするが。
現在進行中のイスラム過激派の裁判で、被告がフランスへの憎悪を証言台で発したのも移民排斥に拍車をかけたとみられている。
大統領選では「治安対策が大事」と答えた人が80%を超えたというのは、かなりの激変である。
欧州の移民・難民の受け入れ状況である(2019)
1、アメリカ 移民:5,066万人 難民:31万人
2、ドイツ 移民:1,313万人 難民:106万人
3、イギリス 移民:955万人 難民:12万人
4、フランス 移民:833万人 難民:36万人
5、カナダ 移民:796万人 難民:11万人
※ 日本 移民:250万人 難民:1900人
日本は主要先進国と比べて難民の受け入れ数が非常に少なく、他国と比べて難民認定の基準が厳しいと国連難民高等弁務官からも指摘されているが、難民自身もまったく言語や生活習慣の違う日本より、欧州が良いはずである。そんな中、まあまあ頑張っていると思うが。
島国である日本は、紛争の多い、中東やアフリカとは遠く離れていることも幸いし、不法侵入の危険も少ない。
ゼムール氏は日本を『移民を拒んできた日本こそ、モデルにすべきだ。失業率は低く、貿易は黒字。治安もよい。フランスにないものがある』とほめてくれる。
しかし、遠い昔、フランスやイギリスは中東や東南アジア、アフリカを植民地にしてきた。その長い歴史の中で、圧倒的に植民地支配した先進国が利益を搾取してきたことは間違いない。
その後、先進国は労働不足の補完として積極的に受け入れた時期もあった。たしかに一挙に押し寄せる難民は受け入れ難いということもあるだろうが、発生の遠因は先進国にもある。
アフリカにしろ中東にしても支配国の都合で、民族の歴史を考えず一方的に国境線を引き、国を分断したケースもあったのだ。紛争は分断の中から民族の争いが始まった。そのことに思いを馳せれば、難民対策にも違った対応ができるのではないか。
幸い日本は韓国にしても台湾にしても国際社会の了解の下での併合であり、植民地支配ではなく、日本本土と同等の扱いをしてきた。ただ、朝鮮半島は、連合国の都合で北緯38度線で南北分断された。この民族の分断は必ず紛争の火種となる。本来なら、アメリカ、ロシア、中国に恨みを抱けど、強烈な反日になるとは理解できない。
中国のある天才少年が、飛行機に乗った時、地球を見下ろして、『小さな地球で何故人間は戦争をするのだろう』と言ったそうだが、高度に発達した人間も、動物の一種と考えれば、生を求めて動く宿命にあるのだろう。貧困と格差、宗教と人種、消えようのない火種があるかぎり、移民・難民・治安は消えることのない課題ではないか。
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