瀬戸内寂聴さんの死
Vol.2-11.23-679 瀬戸内寂聴さんの死
2021.11.23
瀬戸内寂聴さんが99歳で亡くなられた。
新聞の書きだしに、、、
『結婚、出産、不倫、出奔、文壇デビュー、得度・・・。9日、99歳で亡くなった作家の瀬戸内寂聴さんの起伏ある人生は、自らの作品世界と重なるような波乱に満ち、熱情にあふれていた。そうした人生を背景に語られる法話は、人々の心をすくい続けた』とある。
どういうわけか、瀬戸内さんの死を聞いて、人はいつか死ぬんだという感慨を持った。若い頃にその存在を知り、90才を過ぎて尚、意気軒昂で情熱的だったからかもしれない。
まだ若い頃、営業で外回りをしていた頃、あるお客様のところで、何の話だったか記憶にないが、瀬戸内さんの話になり、その年配女性は「凄い女だよね~」と語った一言が今も記憶にある。
夫の教え子との不倫や夫と子供を棄て出奔した、“ とんでもない女 ” という思いが、夫人の根底にあったのではないか。
そのことが妙に引っかかり、瀬戸内氏への関心が薄れたのかもしれない。
それから大分時間が経ち、出家されというニュースを目にした。久しぶりの聞く瀬戸内氏の名前。その姿はもうジイが知る瀬戸内氏とは別人だった。
僧侶になられてから、よくテレビ出演が多くなって何度か見るようになった。僧侶になれば当然だが、袈裟を着て、頭は丸坊主、笑顔に温和で軽妙な語りで、境内に立って人々に語りかける姿を映像で何度も見るようになった。
まさに “ 人々の心をすくう法話 ” に多くの人が癒され、生きる勇気をもらったことだろうと、容易に想像できる雰囲気を醸し出されていた。
自分が生きた波乱の人生だからこそ、説得力をもった言葉の数々、お坊さんらしくない言葉づかいに、法話といえど、笑わせながら、最後は納得して涙する。まるで藤山直美の「人情劇」を「人生法話」で聴かせるような感じだろうか。
今から、二十数年前、「源氏物語」が大きな話題になったことがあった。豪華な製本で順次一巻ごとに10巻発売されたと記憶する。発売の都度話題になり一巻2700円?の高額にもかかわらず、発売日を待つほどの人気だったように記憶する。
その後、無性に「源氏物語」が読みたくなり、すでに文庫本になっていた瀬戸内さんの「源氏物語」を読んだ。10巻の大作だ、途中で投げ出してはいけないと他の作家の何ページかを読み比べてみて一番読みやすかった瀬戸内氏の源氏物語にした。
瀬戸内さんの本は後にも先にもこの一冊限り。今、亡くなられて、改めて彼女の波乱の人生を背景に書かれた小説を読んでみようという気になっている。
彼女の情熱的な体質だろう、僧侶になってからも、思想・信条に発揮された。命を脅かすものへの忌避感情は僧侶が持たなければならない宿命なのであろうかと思うこともある。
◆死刑制度に反対。
「人間が人間の罪を決めることは難しい。日本が(死刑制度を)まだ続けていることは恥ずかしい」と指摘。「人間が人間を殺すことは一番野蛮なこと。みなさん頑張って『殺さない』ってことを大きな声で唱えてください。そして、殺したがるばかどもと戦ってください」
◆原発に反対し「反原発運動に残りの生涯は携わりたい」と脱原発を求める市民団体が脱原発を求めて決行したハンガーストライキにも参加。
◆憲法9条改正にも反対、宗教者による集会で「今後も日本は戦争をしない国として生きるべきです」というメッセージを。
ジイは10年近く前に上野周辺を営業でまわったことがあったが、かなりの寺の掲示板に掲げられた「9条を守ろう、戦争反対」の掲示を見たことがある。
僧侶というのは瀬戸内氏に限らず、人間 “ 命あっての物種 ” 的発想から抜け出してはならぬものなのかもしれない。人を殺めた人間も生きていれば更生もし、立派な人間になる可能性がある。“ 生 ” に光をあて、“ 死 ” は我が僧が弔う。という発想であろうか。
命への究極の賛美である。死は大地に還るのみということか。しかし、殺された家族は運命としてあきらめきれないのも真実であろう。
宗教者として戦争も殺人であるという発想であれば、当然、同意できないことだ。
ある小国が多くの命の代償に独立を勝ち取った戦士が語った
「命より大事なものがあるんだ」という言葉が忘れられない。
真理はどこにあるのかジイはいまだにわからない。しかし、命より大事なものへの出会いが人間として最高の幸せのような気がするのだが。
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