道標無き後の日本

世界,日本,雑記

Vol.3-7.10-908  道標無き後の日本

2022.07.10

今、世界はあらゆる意味で混沌の中にある。その中で日本の生きる道を明確に語れる政治家がいたであろうか。改めて、安倍晋三という道標を無くした大きさを感じる。

日本が、どこか不安で、明確には言い表せない漠然とした、浮遊する日本が感じられるのだ。

ウクライナがロシアに侵略をされた。未だ、その行方すら定まらない。自由主義陣営はEUとNATO、アメリカで結束しなければならない。不気味な中国はロシアと防衛で共闘する。さらには北朝鮮をはじめ、インドネシア、パキスタン、ミャンマー、イラン、アフガニスタンやシリアなど中東、東南アジアの不安定な国を巻き込み世界が2分する可能性すら無きにしも非ずだ。

トルコがフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を承認したことは朗報であるが、インドの動きは微妙である。

中国はソロモン諸島に、南米にも食指を伸ばしている。ウクライナ戦争の長期化で米国、EU、日本が疲弊するのを横目に、ロシアから安くエネルギーを蓄え、世界制覇に向け着々と勢力圏を拡大している。

安倍氏はこの中国の動きを予見し、ロシアが中国と抜き差しならぬほど親密にならぬよう、北方4島の交渉を足掛かりに、ロシア・プーチンとの関係を重視した。シベリア開発、サハリンのエネルギーも北方4島と同様、ロシアと中国との間に楔を打ち込むことにあったのである。

北方4島の長い交渉が無駄であったと言う見方がある。しかし、ロシアとの関係を絶てば、ロシアは必然的に中国との関係重視に動かざるを得ない。

中国との同盟まで発展すれば、対米国・EU・日本・NATOとの対抗軸が明確になり、世界は中国・ロシア・共産同盟 VS 米国・EU・日本とハッキリ色分けされ、いつ第三次世界大戦につながってもおかしくない状況が生まれる。

地球を俯瞰した安倍外交は、総理を辞した後も積極的に政治に関与し続けた。その理由は上記のような危険を想定し、この時期に憲法改正、防衛強化をしなければとんでもないことになるという危機感があったからである。

世界が、安倍死去に関し、「世界の損失である」との表現はあながち日本へのお世辞だけではない。安倍外交の諸施策が中露を中心とした動きの危険性を的確に指摘し、世界を展望したものであったことを世界が評価したからである。

安倍氏が凶弾に倒れて1日が経過した。

改めて、安倍氏の存在の大きさが色々な面で検証されつつある。首相を退陣した後に、安倍氏のように積極的に政治に参加した元首相がいるだろうか。小泉元首相を始め鳩山、菅、村山、細川などはあろうことか、福島問題で日本外交の足を引っ張った。鳩山由紀夫などは韓国・反日の象徴、ソウルの西大門刑務所の跡地で土下座し、元首相でありながら反日の片棒を担ぐと言う前代未聞の恥を世界に晒した。何という悲しい “ 元首相 ” という面々であろうか。

今、検証されているのが、安倍氏の重要な資質を見過ごした日本の中枢である。失った後にその存在の大きさに気づいたのだ。

世界一安全な日本で、警備の杜撰がクローズアップされている。誰が見てもおかしいと思う警備、「平和ボケ」という一言では片づけられない問題である。

奈良県警本部長が会見し、「痛恨の極み」「警護・警備に問題があったことは否定できない」と警備に不備があったことを認めた。
「状況の深刻さ、私自身も27年間の警察官人生での最大の悔恨、痛恨の極みであります。今回の責任の重さを痛感しています」と語った。言わずもがな、安倍氏の存在の大きさを見過ごしたことへの悔恨であろう。

安倍氏が退陣して2年、首相は菅氏、岸田首相と2人目の政権に委ねられ、ある意味過去の人である。しかし、世界がとった安倍氏への追悼は現役首相とまったく変わらない最大級のものである。

バイデン氏は「世界の損失」と表現、ホワイトハウスを始め、連邦政府庁舎、在外公館すべてに半旗を掲げ追悼の弔意を表した。国連安保理事会は公開会合の冒頭、全理事国15ヵ国の代表が全員起立し1分間の黙とうをささげた。

台湾・蔡英文総統は当局機関や公立学校で半旗の掲揚を指示した。台湾最大のビル「台北101」には「安倍首相に感謝」「台湾の永遠の友人」などのメッセージがともされた。

インド・モディ首相は「最も親しい友人の一人の悲劇的な死に、私は言葉にできないほどの衝撃と悲しみを受けている。世界的な政治家であり、卓越したリーダーだった」と「全国で喪に服す」と発表した。

米「タイム誌」は次号の表紙を安倍氏に決定している。

この世界の動きこそ、政治家・安倍晋三が信頼に値する政治家であったことを証明している。

ああ、返す返すも残念、世界で最も大切な政治家の一人を失くした。それも日本の政治家であったことに果てしない悲しみと、道標を失くした日本の未来への不安を覚えずにはいられない。

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