安倍評価の海外ギャップ
Vol.3-7.12-910 安倍評価の海外ギャップ
2022.07.12
安倍元首相が凶弾に倒れたのが8日である。
奈良市の近鉄大和西大寺駅前の事件現場に設置された献花台に当日は長い列ができ、翌日も何百人の人が雨の中列をなした。昨日で3日が経過したが献花の列が途切れることはなかった。
タイ、インドネシアを訪問中の米ブリンケン国務長官は急遽 予定を変更して安倍元総理追悼のため訪日した。
アメリカ政府を代表して哀悼の意を伝え、その上で「安倍元総理大臣は揺るぎない日米同盟の擁護者であり、また『自由で開かれたインド太平洋』という先見性のあるビジョンを掲げ、アメリカをはじめ、同志国との連携の強化に多大な功績を残された」と述べた。
さらに、「我々は非常に悲しんでいる。安倍元総理大臣は在任中、日米関係を新たなレベルへと引き上げた。彼は希有なビジョンを持ち、それを実践する力を持った方だった。私がここにいるのは同盟国である以上に日本の友人であるからだ。友人が負ったダメージを支援するため、何でもさせていただきたい」とし、安倍元首相の遺族に宛てたバイデン大統領の手紙を持参したことを明らかにした。
アメリカの閣僚が首相に直接面会し、弔意を表明するのは初めてのことである。
安倍氏の死は衝撃的だった。しかし、アメリカを始めとして、世界が “ 安倍晋三氏の死 ” に対して、これほどまでに最大級の弔意を表すとは、日本人の誰が想像したであろうか。
海外の弔意の大きさに内心驚き、政府やマスコミが後追いでその存在を再評価する、逆ギャップが起きている。日本の政治が見つめる視点が海外と違うのである。
世界を俯瞰し日本を見ることができない日本の政治。戦後77年経過してなお、不毛な憲法改正議論が延々と続き、自衛隊は本質軍隊であるにもかかわらず憲法に明記せず、未だ違憲と騒ぐ野党。隣国では戦争が起きている。あるいはわが思いを成就するため戦争をも辞さないと軍備拡張に余念がない国も同じ隣国である。
与野党を含めその現実を脅威とみない日本の政治。外国メディアは未だに続く “ モリ・カケ・桜の会問題 ” に懐疑の目を向ける。それを疑問に思わない国民。その感覚の違いが今回の安倍評価ギャップとして表出した。
●オーストラリアでは、世界遺産のシドニー・オペラハウスで白い屋根に赤い日の丸が浮かび上がった。「私たちのサポートの気持ちを表す必要がある」とライトアップは第二の都市メルボルンで上がった。
●米国際政治学者のイアン・ブレマー氏
「JFKモーメント。いやそれ以上かもしれない」
日本のリーダーとしては珍しくカリスマ性があった。オープンで、フレンドリーで、話をするときは相手の肩や背中にそっと手を差し伸べるような(気さくな)人だった
●米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員
安倍氏は、日米同盟のとても強力な擁護者でした。彼は、日米同盟のために必要なことをしただけでなく、日本の利益がなんであるかを米国に伝えました。日本の利益が、ワシントンでも話されるようにしたのです
●欧州委員会のフォンデアライエン委員長
素晴らしい人物、偉大な民主主義者、そして多国間秩序を守ろうとしたリーダー
●フランスのマクロン大統領
国に生涯をささげ、世界の均衡に努めた偉大な首相
●ドイツのメルケル前首相
彼の決定は信頼できるものだった
●インドのモディ首相
安倍元総理の死去により、日本と世界は偉大な先見者を失いました。そして、私は親愛なる友人を失った
●シンガポールのザ・ストレーツ・タイムズ
安倍元首相は経済面でも安全保障面でもアジア太平洋地域において主導的な役割を果たした。「自由で開かれたインド太平洋」構想を提唱し、日米豪印の枠組み「Quad」の創設を主導した。中国がアジア太平洋地域における存在感を高めていた一方、中国とのバランスを模索する各国が頼れる数少ないキーマンが安倍元首相だった
●オーストラリアのターンブル元首相
安倍元首相のリーダーシップがなければ、TPPは実現しなかった
●バイデン大統領
日本国民の誇り高き奉仕者で、米国の忠実な友人だった
●トランプ前大統領
誰より日本という国を愛し、大切にしていた
●ジョン・ボルトン元米大統領補佐官
米国と同盟国にとって安倍晋三氏の死は大きな損失。彼は日本だけでなく世界的に見ても類いまれなリーダーシップがあった。国のために献身的に尽くす姿勢が本当に好きだった
●欧州では
安倍元首相が米トランプ前大統領と友好な関係を築いていた点だ。欧州各国の首脳がトランプ前大統領との関係構築に苦戦する中、一緒にコースを回る安倍元首相の “ ゴルフ外交 ” に羨望の目があった。
こんな海外の声に押されたわけでもあるまいが、政府は安倍元首相に「日本の最高位の勲章である「大勲位菊花章頸飾」授与を決定 した。
国内評価と海外とのあまりにも大きなギャップ、心の中で「なんで?」と戸惑っているように見える。
いかに狭い視野でものごとを見ている証左であろう。自分の国の国旗、国歌、さらには愛国心の言葉さえ忌避する国である。戦後76年一度も憲法改正していない世界でも例のない “ 珍種 ” といえる。安倍氏がよく口にする「戦後レジーム」という考えを国民レベルで考える土壌すらない。
安倍氏は遂にぞ、生きて憲法改正ができなかった。まさに非業の死をもって自ら憲法改正への道を開いたといえる。
時は参議院選挙の開票結果の日。憲法改正の発議が行える2/3の議席を確保した。まさに命を賭した結果に草葉の陰からほっと一息ついておられるのではないか。後は発議し改正まで、残された者の使命である。
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