食料安全保障・自給率38%の恐怖
Vol.3-8.18-947 食料安全保障・自給率38%の恐怖
2022.08.18
小さな国、日本の食料自給率は38%(カロリーベース)。
世界は、カナダ 233%、オーストラリア 169%、アメリカ 121%、フランス 131%、ドイツ 84%、イギリス 70%。先進国は軒並み70%を超えている。
<世界の小麦生産量ベスト4>
① 中国 ② インド ③ ロシア ④ アメリカ
<米生産ベスト3>
① 中国 ② インド ③ インドネシア
<原油生産量ベスト4>
① サウジアラビア ② ロシア ③ アメリカ ④ 中国
以上のように、食料にエネルギーを中国、ロシア、インドが上位を占める。
今回のウクライナ侵略で見えてきたのは命をつなぐ食料安全保障という視点である。
ロシアにどんなに制裁を加えようが、エネルギーと食料を自給するロシアに効き目はない。兵糧攻めどころか、逆にエネルギーを止められ、EUはエネルギー危機に直面した。
ウクライナの穀物も、黒海の港を封鎖されたことで中東、アフリカの食料危機を生んだ。
日本の輸入は
◎原油 ⇒ サウジアラビア(40%)、アラブ首長国連邦(34.8%)、ロシア(3.7%)
◎LNG ⇒ オーストラリア(36.0%)、マレーシア、アメリカ、ロシア(8.7%)
◎半導体 ⇒ 台湾(47.9%)、中国(16.5%)、アメリカ
◎通信機 ⇒ 中国(73.1%)、ベトナム、台湾
◎衣料品 ⇒ 中国(55.9%)、ベトナム
◎小麦 ⇒ アメリカ(45.1%)、カナダ35.5%)、オーストラリア
◎大豆 ⇒ アメリカ(74.8%)、ブラジル、カナダ
これを見ても、今のところ食料危機は何とか回避できそうである。
しかし今、世界は半導体不足に右往左往している。自動車を購入しても納入は1年先ともいわれる。万が一台湾有事などが起きれば、半導体不足で電化製品は危機的状況、それだけに止まらず、あらゆる輸入物資は危機に陥る。
問題は食料である。
日本の食料自給率は38%だ。“ 兵糧攻め ” にあったらひとたまりもない。しかし、今のところ主な輸入先は民主国家である。
ただ、戦争や紛争危機だけでなくあらゆる危機に備えなければならない。
①コロナのようなパンデミックの発生
②意図的な輸出抑制への対応(自国優先or報復的規制)
③異常気象や災害による農作物への打撃
④戦争の影響(例えばウクライナ戦争)
輸入に頼る日本は、台湾有事が起きればシーレーンが使えなくなり食料輸入が止まる。米の生産量は国民の半数の量である。米を食べなくなってパン食で賄えるとはいえ小麦の輸入も途絶える。とすれば、自国生産できる米の生産を増やす以外にない。平時は輸出、危機には自国生産で賄う体制を早期に整えることだ。
現在の日本は減反政策のお蔭で、多くの放置された農地がある。この農地を備蓄米用として活用するのである。備蓄米は国民が生活できる何年分にするかは検討の余地があろうが、古くなれば新しいものに入れ替えるという「回転備蓄」という考えを、キャノングローバル研究所主管の山下一仁氏が提案している。
現状の日本は、先人たちが苦労して耕した田んぼを見るも無残に放置している。
自給率が好転しない理由は、減反政策だけではない。高齢化による農業生産者の減少がある。またそれに伴う耕作放棄地の増加といった、農業そのものの衰退が挙げられる。また、TPPやEPAなどにより、関税の撤廃が輸入増につながったこともある。
しかし現状に甘える訳にはいかない。自給自足によって強靭な日本に作り上げるにはどうするか、ということだ。
①耕作放棄地を少人数で利用 ⇒ ドローンやロボット導入による省力化、収量と収入を上げる
②新規就農者の経験不足を補うAI技術などの導入
③食品廃棄量の軽減に向けた取り組み
④食材管理の徹底、賞味期限と消費期限の正しい理解で廃棄食料を減らす
⑤余分なものを買わない、消費できる適正量購入の推進
⑥余った食材を有効活用するための工夫
⑦農業の担い手を増やし、農家自身も新たな雇用やビジネスの機会を増やす取り組み
⑧日本の農村風景を観光の目的として海外からの観光客を受け入れる方法
⑨農家が農業体験や農家への宿泊などを世話する「農泊」で農家の魅力をPR
あらゆる施策によって、農業再生を本気で取り組む必要がある。
しかし現実的な問題は、台湾有事である。遅きに失した感はあるがやらなければさらに深手を負う。
今こそ、政治家の手腕が問われる。国民にどのように危機を伝え、理解させどう行動に移すか。過度に言えば、戦争の恐怖を煽るのか?と平和ボケが騒ぎたてる。いかに冷静に世界情勢を分析、国民に納得させるか、その意味で “ ウクライナ危機 ” は教材になる。
今、国家に何が必要か、日本国家の弱点を明らかにし、その弱点を補うべく施策を勇気を持って憶せず、堂々と国民に訴え実行することこそ国防である。
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