橋本徹という逸材
Vol.1-4.27-104 橋本徹という逸材
2020.04.27
橋本徹という人間は間違いなく逸材であろう。
最近、新型コロナウイルスの報道において、コメンテーターとして非常に切れのいい発言と共に説明が論理的で実にわかりやすい。聞いていてもフラストレーションがたまらない。
言葉が淀みなく出てくる、当然のことだが、相当勉強もしているのであろうが、求められている主旨に対してピンポイントで自信のある発言をする。頭の回転の良さもあるが、弁護士として勉強してきた自信、プラス橋本氏に備わった特異な能力にあるのではないかと思う。
ここ何日か橋本氏がコメンテーターとしての発言を見るにつけ、明確な根拠と論理構成は弁護士時代に培われたものと、大阪府知事時代の経験もあるとは思う。かつてなかった人材で時代の寵児のように思う。
発信力の高さと、ちょっと残念だが国家感の希薄さも含めて、元小泉純一郎元首相に似ているかもしれない。
ただ、今までの政治家との違いは、論理構成の高さ、実行力、わかりやすさだ。
今の人間でいうデジタル人間のような気がする。
0と1の組み合わせで回答を引き出すように、YES・NOが実に明確である。
判断基準に余分な忖度が入らない。したがって回答が早く的確ということだろう。
今回のコロナウイルスについて、神奈川県知事の黒岩氏とのやりとりである。
(黒岩知事)
湘南海岸に休日にいっぱい車で来る。これはお願いしか今の法律では対応できないんです。
(橋本氏)
法律上そうでしょう。だけど本当に車を少なくしたいなら、道路工事を急遽あちこちでやればいいんです。
金がないなら、県が返済を進めている返済を少なくすればあっという間に1兆円程度はできるはずだ。
と実に奇想天外ではなく財政仕組みを知った上での、あっと驚くような案を即座に出してくる。その発想力には舌を巻くしかない。
一事が万事、独創的な発想力はまず、何が必要か、そのために何をやらなければならないか、その障害は何か?という展開の中で既成概念にとらわれない直線的とも言える実行力の凄さだ。
アメリカにディベートという議論の方法があるが、どちらかというと相手を言い負かすという意味があるが、橋本氏の場合、問題点が出てきたら、まず最強・最速の方法を探し出す。その目的達成のために情緒を排した方法を打ち出していく。もし問題が発生したらそこで対応していくということで、問題を即座に決定していくことでは気持ちいいほど結論が早い。
<その才能は中学時代から>
・3年生時の担任教諭は、「クラスがもめた時、互いの主張を取り入れて解決するのは必ず橋下だった。論理立ててものを述べる交渉術は当時から卓越しており、教師から見てもこちらが見透かされているような怖さがあった」と語っている。
・あるいはラグビーを始めた理由は「一番ワルそうな部に入ったほうが安全だと思ったから」というから、学生時代からすでに生き抜く才能は卓越していたといえるのではないか。
<高校時代>
・「当たり前だと思ってることに疑問を持ったり、伝統を変えようとしたり、何で?と思った時に立ち止まって考えることで、パワーが生まれる」と語っている。実行力・洞察力の片りんが見てとれる。
<知事時代>
・大阪府知事時代、思ったことを衣着せぬ言葉で、ハッキリいう物言いはどうしても軋轢を生む。しかし、筋を通すと言うことを徹底していた。日教組とも徹底的に戦った。
・消費税率の10%への引き上げの時も「今の段階では反対だ」とし「ここまで(議員の歳費の削減など)をやって増税をお願いするのが政治の筋道だ」と筋を通した発言には共感すべきところが多い。
・東日本大震災による震災瓦礫について日本各地で受け入れ拒否の動きが発生している中、橋下は「安全性を確認した上で、原則受け入れる」「嫌だと言えば東北地方はどうなるのか」との発言は例え困難が予想されても立ち向かう強い優しさも支持される一面であろう。
ジイはちょっとおかしいなと思ったのは大阪府知事時代に、
『公金を入れないと成り立たないのは文化ではない』と言い、文楽の補助金を削除すると表明したことだった。
後に、特定の文化活動に前例踏襲で漫然と多額の税金を投入し、他の文化活動との間で非常に不公平な状態を生じさせてしまっていると感じていたので、それを是正しようと文化行政の補助金の仕組みを改革したかった。と釈明したが、この時初めて、日本への思いの希薄さと今風デジタル人間を認識した。
今、アンケートをとると総理にしたい人間の中に小泉 進次郎氏がいるが、お父さんと同じで、国家感の希薄さが気になるが、デジタル人間として橋本氏と似ているのではないか。
そこで、橋本氏の国家感だが、
※慰安婦問題
暴行・脅迫・拉致を用いて、強制的にそのような仕事に就かせたかどうかだ。しかしここは今のところはっきりしていない。軍が施設を管理し、意に反して慰安婦になった方が悲惨な境遇であったことは確かだが、これは他国の軍でもある話だ。
戦時下では世界各国もいわゆる性奴隷を活用していたのに、なぜ日本「だけ」が性奴隷を活用していたと世界から非難を受けているのか。日本が不当に侮辱を受けることについては反論すべきだ。
※竹島問題
韓国が警備隊を常駐させているという積み重ねられた事実がある以上共同管理を目指すべきである。
※大東亜戦争・東京裁判
・敗戦の結果として、侵略だったことを受け止めなければならない。戦争で負けるとはそう言うもの。これは中国、韓国との間の問題だけではなく、戦勝国全体との間の問題。もし日本の侵略を否定するなら、再度世界戦争を起こして日本が勝つしかない。
・僕は、日本の侵略の事実、植民地政策の事実を敗戦国として認め、反省とお詫びをしなければならないことは大原則としている。
・歴史認識について「サンフランシスコ講和条約で、平和に対する罪を認めたわけであり講和条約を結んで、それを前提にして今の国家がある以上、世界から侵略戦争であったと評価を受けていることについては、受け入れざるを得ないし、国家の為政者、国家運営の責任者として、講和条約をひっくり返すわけにはいかない」と侵略戦争であったとの世界の評価を受け入れる考えを述べた。
※靖国神社
・靖国神社参拝より大事なことは誰でも参拝できる施設をつくればいい。
・いわゆるA級戦犯が合祀されている。その解決策は誰でも追悼できる国立墓地にすればすむ。
などの発言をみると、国家・文化・伝統という意識は希薄である。
確かに国家という表現と橋本氏とは結びつかない感じがする。伝統や文化には興味がないのだろう。
文楽のどこが面白いの?という発言に如実に表れている。
今ある問題解決に抜群の処理能力を発揮するが、過去の歴史は変えられないという割り切り。内省まで踏み込んで何になるの?という精神性までも解決への障害となれば排除する。超能力の機械をイメージする。一瞬であるがブレードランナーに出てくるレプリカントを思い出した。
慰安婦問題はほぼ納得できるが、性奴隷という表現を平気で使うところに、頭の中は「慰安婦=性奴隷」というアメリカナイズが見られる。過ぎ去った問題を今さら変えられない。事実誤認がなければ、今さらどうすることもできないではないか。という事実認識で決着をつけられる人間である。
そこには敗戦国は戦勝国の裁判で有罪となったのだ、従うのは当たり前。という考えである。
しかしジイは、事後法で決めた法律で裁いた裁判は国際法上認められていない。という渡部昇一氏の意見に賛同する。
しかしながら、戦勝国が下した判断には従わなければならなかった。故に、判決は受諾するが、東京裁判そのものを受諾したわけではない。裁判を受諾したという文書もないことから判決文の内容を混同してはならないという渡部氏の発言に国家としての矜持を見る
靖国問題にしても、もちろん国を守るために命を落とした方々へ、感謝と尊崇の念を表することは当然だとしながらも、何とか解決策を出そうし、靖国とは別の参拝場所をつくればいいという考えだ。
英霊たちが、「靖国で会おう」誓ったことへの思いはない。
橋本氏に言わせれば、「死んだら物理的に靖国であうことはできないんだから」外国が納得しないなら「千鳥ケ淵戦没者墓苑に移せばいい」という現実主義だ。そこに歴史や先人に思いを馳せることはない。死んだ者は生き返らないという発想だろう。
いろんな難問を前に「ルールをかいくぐるアイディアを絞り出す。明確なルールによる規制がない限りは何をやっても構わない。ルールの隙を突いた者が賞賛されるような日本にならないと、これからの国際社会は乗り切れない」などとの発言にみられように、独創的な方法をあみだしたり、人が考えないような案で解決に結びつけたり。というような一つのゲーム感覚的な¨のり¨で何事にも挑戦していく。そこに生きる醍醐味をみているように思う。
それがビジネスであれ政治であれ、橋本氏には関係ないような気がする。
実に特異な人物である。
「大阪都構想」をぶち上げ、住民投票まで持ち込み、極差で敗れた。
破れたことを一つの結果として(私の)「都構想がまちがっていたんでしょう」と敗戦を認めあっさり引退してしまう。
日本が敗戦したんです。負けたものは勝ったものに従う。世界から侵略戦争であったと評価を受ければそれを受けい入れる。というプロセスに通じる。橋本氏に組み込まれた01で割り切れる回路素子を組み込まれた基盤かもしれない。
歴史認識について石原代表は侵略を認めない。僕は侵略を認める。僕の爺さんは海軍兵だった。死ぬまで日本の正当性を主張していた。戦争当時に生きていた人と、戦争を知らない僕たちで歴史認識が違うのは当たり前。と当時戦った英霊への思いを馳せると言う回路はない。
橋本徹氏は逸材に違いないが「異才か鬼才」か。
過去、このような人材に巡り合わなかった。爆発的集中力は目にみはるものがある。
橋本氏の内心にメガトン級の爆発が起こり得なければ異才のでの活躍で終わるだろう。
この異才の爆発後に目を吹く「新生橋本徹」を見てみたい気がする。
残念ながらそれほど時間はない。見果てぬ夢かもしれない。