原発再稼働への挑戦
Vol.3-10.7-997 原発再稼働への挑戦
2022.10.07
“ 原発 ” ついにというか、やっとというか、石油、天然ガスを主にエネルギー価格の上昇、脱炭素に向けた取り組み等々を考えるに、原発を抜きに将来像が描けなくなってきた。
原子力規制委員会は5日、最長60年と規定されている原発の運転期間の延長に関する政府方針を受け、法整備を含めた規制委員側の対応方針を検討することを決めた。
福島第一原発の事故を受け、2012年9月19日に、推進側のエネルギー庁とは別に独立性を重視した「原子力規制委員会」が設立された。しかし、その高い独立性が足かせとなり、健全な議論すらできない状態が生じている。
すべてに完全なる安全が要求され、それが当たり前のように世間が肯定する。さらに日本の場合、原発は13ヶ月に1度の割合で定期点検を受けており、原子炉格納容器を除く主要な部品は段階的・予防的に交換されている。したがって、10年単位で主要部品がほぼ変わり、「サイボーグ」と称されているという。アメリカをはじめ他国ではありえない厳しさである。
今年の8月、そのあまりにも厳しい規制員のあり方を指摘した櫻井よしこ氏(国基研理事長)のコラムがある。(産経新聞8/1 美しき勁き国へ)
少々長くなるがその一部を紹介したい。
「国際情勢の変化に合わせて日本の安全保障政策を変えなければ生き残れないように、エネルギー政策を転換しなければ日本は貧しくなる一方だ。今、安全は確認済みだが、停止に追い込まれる原発が各地で続出している。一例が今年1月に停止した九州電力玄海原発3号機だ。4号機も9月には停止になる。
3、4号機は安全性の確認が済んでいるのに、計236万キロワットの電力が酷暑の盛りに供給を許されない。ひとえに原子力規制委員会の更田豊志委員長の非科学的かつ非理性的な対応ゆえである。それを是とする一部野党、選挙前の論争を避けるあまり、原発問題に触れようとしない首相官邸の責任は重い。
運転停止の理由は、特定重大事故に対処する『特定重大事故等対処施設』問題だ。規制委の新規制基準によるもので、大型航空機をハイジャックして原発に突撃を図るテロを想定した対策だ。特重施設は地下につくれと指示されている。巨大なトンネルを掘り、分厚い鉄筋コンクリートで補強した要塞で、内部には水源として巨大プール、複数の非常用発電機、緊急炉心注入ポンプ、計測制御盤、耐火機能付き長期滞在用の居住空間、食料保管庫などが設置される。費用は1千億円規模といわれる。
米中枢同時多発テロを受けた米国でも、原発大国のフランスでもこんな施設は要求されていない。青天井のコストと長い建設期間を必要とする地下建造物を強要する日本の規制委が暴走しているのだ。
世界に類例のない特重施設の地下建設を九電は規制委の要求する5年以内には完成できないと、平成31年に判断し、規制委に期限再延期を求めた。だが更田氏は工事期間の延長を認めず、『運転停止を命ずる』と宣言した。九電の工事は令和5年1月に完了する予定だが、今年9月の期限に間に合わないために、9月12日、運転停止となる。
・・・この件で更田氏は『運転停止によって安全性が増すものではない』と語り、運転停止の大決断を安全性と無関係に行ったことを認めている。・・・ならばなぜ止めるのか。
・・・原発停止で電力需給がひっ迫し、大停電の危険も生じている。国民、産業界、国、すべてにとって不幸である。・・・」
このように櫻井氏は更田豊志委員長の荒唐無稽ともいえる厳しい対応を批判した。
エネルギー事情の変化は、現状、ウクライナ戦争の影響が最も大きいが、我が日本は、福島原発事故で原発が忌避され急激な自然エネルギーへの転換が図られてきた。電力自由化と脱炭素で安定的な電源投資もされず、原発も点検で停止し、安全基準の厳しさから再稼働が進まず、今年の夏も電力不足から節電を要請する事態に陥った。
冬にかけてはさらに需要が増えれば “ ブラックアウト ” になる可能性さえある。
原発の再稼働が順調になされていればこのような事態にはならなかったと思われるが、規制委員会の安全基準に合格しても、地元の同意が得られないというケースもある。
アメリカや欧州では原発に舵をきり、増設や80年までの運転延長を認めた国さえある。日本はその何段階も前の状態で止まっている。
この度の原発に関わる政府方針を受け、経済産業省資源エネルギーの担当者と原子力規制委員会が同じテーブルで向き合い、異例の意見交換を行った。水と油のような両者が意見交換を行うのは画期的なことである。そこに至るには厳しい現状、電力需給のひっ迫、CO2削減問題、気候変動対策等々ある中で、特に原子力政策の遅滞は許されないという強い危機感があった。
エネルギー庁が意見交換する中で、「安全が優先」という言葉を繰り返し使ったというが、原発推進に力を入れるあまり、安全軽視と見られないよう細心の注意を払ったと思われる。万一、規制委員会と対立するようなことになれば、現エネルギー危機を乗り越えられない。2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする政府目標達成には、原発との共存がほぼ不可欠である。どちらか一方ではなくお互いが注意を払いながら一つの目標に向かう姿こそ、今の日本に最も必要なことではないか。
確かに、福島の事故は未曽有の事故ではあった。しかし、ただ立ち止まって必要以上に身構えるだけでは何も変わらない。慎重の中にも安全を優先しつつ、果敢に乗り越える勇気も必要なのではないか。
人類はいつの世も進歩してきた。
三菱重工は、関西電力など大手電力会社と協力して、安全性の高いとされる新型原子炉の開発を進めると発表した。自然災害やテロ対策を強化し、炉心溶融など深刻な事故への対策も講じるという。
今、世の中は何千という種類の物価が上昇している。エネルギーも基準価格の1.5倍を超える状態が続いている。
原発における世界の潮流、物価高、技術の進歩等々を見れば原発をうまく利用することへの理解は得られのではないか。決して無謀な計画ではない。今も原発は稼働しているのである。慎重かつ安全重視は今以上である。政府は国民への情報開示、安全性など誠実に説明責任を果たすことによって、国家として今やるべきことの理解は得られと信じる。
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