野田元総理追悼演説

日本,雑記

Vol.3-10.27-1017  野田元総理追悼演説

2022.10.27

衆議院本会議、午後1:00、431号の番号が付された安倍元総理の座席には、白いカーネーションが置かれていた。

野田元総理は、昭恵夫人が胸に抱く遺影に向かって深々と頭を下げ追悼演説は始まった。そのエッセンスだけでも再現したい。

『本院議員、安倍晋三元内閣総理大臣は、去る7月8日、参院選挙候補者の応援に訪れた奈良県内で、演説中に背後から銃撃されました。・・・・・享年67歳。あまりにも突然の悲劇でした』

『先人たちが味わってきた「重圧」と「孤独」をわが身に体したことのある一人として、あなたの非業の死を悼み、哀悼の誠をささげたい』

『安倍晋三さん。あなたは、昭和29年9月、後に外務大臣などを歴任された安倍晋太郎氏、洋子さまご夫妻の次男として、東京都に生まれました』

『父方の祖父は衆議院議員、母方の祖父と大叔父は後の内閣総理大臣という政治家一族です。「幼い頃から身近に政治がある」という環境の下、公のために身を尽くす覚悟と気概を学んでこられたに違いありません』

『父、晋太郎氏の急逝後、平成5年、当時の山口1区から衆議院選挙に出馬し、見事に初陣を飾られました。38歳の青年政治家の誕生であります。私も、同期当選です。初登院の日、国会議事堂の正面玄関には、あなたの周りを取り囲む、ひときわ大きな人垣ができていたのを鮮明に覚えています。そこには、フラッシュの閃光を浴びながら、インタビューに答えるあなたの姿がありました。私には、その輝きがただ、まぶしく見えるばかりでした。』

『安倍さん。あなたは、いつの時も、手ごわい論敵でした。いや、私にとっては、仇のような政敵でした』

『少しでも隙を見せれば、容赦なく切りつけられる。張り詰めた緊張感。激しくぶつかり合う言葉と言葉。それは、一対一の「果たし合い」の場でした。激論を交わした場面の数々が、ただ懐かしく思い起こされます』

『安倍さん。あなたは議場では「闘う政治家」でしたが、国会を離れ、ひとたびかぶとを脱ぐと、心優しい気遣いの人でもありました』

『第1次政権から数え、通算在職日数3188日。延べ196の国や地域を訪れ、こなした首脳会談は1187回。最高責任者としての重圧と孤独に耐えながら、日本一のハードワークを誰よりも長く続けたあなたに、ただただ心からの敬意を表します。

首脳外交の主役として特筆すべきは、あなたが全くタイプの異なる2人の米国大統領と親密な関係を取り結んだことです。理知的なバラク・オバマ大統領を巧みに説得して広島にいざない、被爆者との対話を実現に導く。かたや、強烈な個性を放つドナルド・トランプ大統領の懐に飛び込んで、ファーストネームで呼び合う関係を築いてしまう。

あなたに日米同盟こそ日本外交の基軸であるという確信がなければ、こうした信頼関係は生まれなかったでしょう。ただ、それだけではなかった。あなたには、人と人との距離感を縮める天性の才があったことは間違いありません

『あなたとなら、国を背負った経験を持つ者同士、天下国家のありようを腹蔵なく論じあっていけるのではないか。立場の違いを乗り越え、どこかに一致点を見いだせるのではないか。以来、私は、そうした期待をずっと胸に秘めてきました』

再びこの議場で、あなたと、言葉と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火花散るような真剣勝負を戦いたかった。勝ちっ放しはないでしょう、安倍さん』

2回傍聴席で演説を見守った昭江夫人の目には涙があった。

演説を終え、国会内で昭恵夫人と面会。昭恵夫人は目に涙を浮かべ「先生にお願いしてよかった。主人も喜んでいるでしょう。原稿を仏壇に供えたい」と謝意を示された。

ネットでの反響は好意的なものばかり、

◇ 野田さんただただ立派やなぁ

◇ 原稿だけでない、野田さんから安倍さんへの誠の想いにただただ心が震えました

◇ 追悼演説って初めて聞いたが、こんなに格調高い、こんなに誇り高い演説だとは思わなかった。 聴き入っちゃったよ

◇ 心のこもった追悼の言葉に、途中から涙が出てきました。 素晴らしい演説でした。 野田元総理は安部元総理と初当選が同期だったのですね。 魂と魂のぶつかりあいという言葉が印象に残りました

◇ 総理経験者でしか言えない追悼の言葉ですね。今回は野田さんにとても感動しました

◇ 野田氏の人徳、そして政治家としての伝える力に感動しました。立憲民主党にもこんなに心ある政治家がまだいらっしゃったんですね

◇ 立ち位置が異なるから、議論が激化するのはしょうがない。が、議場外では、あくまで人と人して接することが出来た関係だからこそ、野田氏の素晴らしい演説につながったと思います

◇ 所属していた政党は違えど、安倍さんと共に日本のために議論を重ねてきた野田さんだからこそできる演説でした。そして日本国内の政治や、世界の国々との外交にも全力で取り組まれた安倍さんの偉大さを改めて感じました

◇ 昭恵夫人の後ろにいた女性、娘さんだろうか、野田さんが安倍さんを演説で労った瞬間に感極まったのか、泣き崩れていたのが深く印象に残った。何はともあれ野田さん、素晴らしい演説をありがとうございました

これらのコメントが演説の素晴らしさを伝えている。

政治家一家から出て初当選、フラッシュを浴びる姿を横目で見る野田氏、政治家としての悲哀を感じさせる場面は切ない。

ジイが一番感じ入ったのは、互いに総理を経験した人間でなければ実感でき得ないくだりだ。
「通算在職日数3188日。延べ196の国や地域を訪れ、こなした首脳会談は1187回。最高責任者としての重圧と孤独に耐えながら、日本一のハードワークを誰よりも長く続けた・・・」

「首脳外交の主役として特筆すべきは、あなたが全くタイプの異なる2人の米国大統領と親密な関係を取り結んだことです。理知的なバラク・オバマ大統領を巧みに説得して広島にいざない、被爆者との対話を実現に導く。かたや、強烈な個性を放つドナルド・トランプ大統領の懐に飛び込んで、ファーストネームで呼び合う関係を築いてしまう」この下りこそ、政治家、安倍晋三の本領であったのではないか。

ともあれ、素晴らしい演説だった。

ツイッターのコメントではないが、「立憲民主党にもこんなに心ある政治家がまだいらっしゃったんですね」は神髄をついている。

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Posted by 秀木石