力なき外交の無力さ

世界,日本,雑記

Vol.3-12.7-1058   力なき外交の無力さ

2022.12.07

歴史はいろんなことを教えてくれる。

どんなに机上で論理立てても、現実に起きた歴史に勝る教訓はない。

麗澤大学特別教授・織田邦男氏は国際社会において「力なき外交」がいかに無力であることを過去の歴史から解き明かし、抑止に耐えうる防衛力の強化を訴えている。

その思いを「『抑止』への投資を躊躇するな」として寄稿している(産経新聞12/6)

その要点を抜粋すると、

中国に亡命した科学者によると、中国は2人のカールを愛する国だという。
2人のカールとは、

● 資本論の、カール・マルクス
● 戦争論の、カール・フォン・クラウゼウイッツ・・・である。
両者に共通するのは「力の信奉者」であることだ。

彼らはこんな箴言を残している。

◆ 戦争が止まるときは両者の武力が均衡したときだけである
◆ 流血を厭うものはこれを厭わないものに必ず征服される
◆ 戦争は血を流す外交、外交は血を流さない戦争

中国の習近平国家主席や北朝鮮の金正恩総書記、ロシアのプーチン大統領など独裁者に共通しているのは「力の信奉者」であることだ。

戦争は国益争奪の政治の延長にすぎないのであって結局は「力」が決める。

「力」は経済、科学技術、外交、軍事などの諸力の結集であるが、やはり決定的な「力」は軍事力である。

彼らの行動パターンは
① 相手が弱ければ強く出る
② 強い相手には時を待つ
③ 中途半端な譲歩にはさらなる譲歩を求める

1992年、米海軍がフィリピンから撤退するや、中国はフィリピン領有のミスチーフ環礁を占拠した。同時に領海法を制定し、南沙、西沙群島、そして尖閣諸島を自国領として明記した。

2013年、オバマ大統領は「米国はもはや世界の警察官ではない」と宣言した。半年後、ロシアはクリミア半島を併合し、中国は南シナ海埋め立てを始めた。

ソ連崩壊後、ウクライナに残された核弾頭の撤去、核拡散防止条約加入を条件に米国、英国、ロシアがウクライナの「主権と領土の統一性を保障」する「ブダペスト覚書」が結ばれた。だが、クリミア半島併合により「覚書」は一夜にして反故にされた。

人民日報は「西側世界は国際条約や人権、人道といった美しい言葉を口にしているが、ロシアとの戦争のリスクを冒すつもりない。」「約束に意味はなく、クリミア半島とウクライナの運命を決めたのはロシアの軍艦、戦闘機、ミサイルだった。これが国際社会の冷徹な現実だ」・・・ウクライナのゼレンスキー大統領は今でこそ「戦う指導者」として英雄である。だがロシアの侵攻直前まで「全ての外交問題は交渉で解決する」と公言していた。・・・プーチン氏が聞く耳をもつわけがない。「力のない外交」がいかに無力であるか。皮肉にもゼレンスキー大統領はウクライナ戦争で学んだ。

◆米国は10月に公表した国家安全保障戦略で、中国を「国際秩序を変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競合国」と位置付けた。・・・日本を含む同盟国や友好国との連携強化により、「我々の集団的な力をさらに強化する」とし、日本を含む同盟国に対し、強い口調で防衛力強化を促した。

◆「台湾有事は日本有事」である。日米同盟を基軸とし価値観を同じくする友好国と共に、「力に裏付けられた外交力」で「台湾有事を」を抑止しなければならない。

戦争がおこれば犠牲は計り知れない。「抑止」のための投資は、いくら高価でも戦争よりはるかに安価で安全である。・・・戦えなければ抑止力たりえない。たとえ50兆円でも、戦争になるよりははるかに安価なのである。今求められているのは早急に「力」を回復させて抑止体制を構築し、平和を維持することだ。

このように書き、「力」なき抑止力など「屁のツッパリ」にもならないと言っている。その理由は歴史が証明しているのである。美辞麗句はもういい。中国・人民日報が伝えたように「ウクライナの運命を決めたのはロシアの軍艦、戦闘機、ミサイルだった。これが国際社会の冷徹な現実」なのである。

洗脳された国民は “ 平和 ” “ 対話 ” の連呼に正義の光を見ようとする。連呼だけなら子供にもできる。冷徹な現実を直視し、国民を説得できる政治家の出現を望むが、改憲すら主導できない緩慢政治日本。“ 日本沈没 ”が現実となりどこかの国の支配下に置かれないことを望むばかりだ。

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