貴景勝 優勝の価値

スポーツ,日本,雑記

Vol.4-1.23-1101  貴景勝 優勝の価値

2023.01.23

令和5年大相撲初場所で大関・貴景勝が3度目の優勝を果たした。

この大関優勝の意味は実に大きい。

御嶽海、高安、正代という、将来を期待された大関陣がつぎつぎと脱落し、ついに一人大関になった貴景勝、挙句の果て、初場所と言う華やかな舞台に横綱が休場という大相撲は最悪の新年を迎えた。貴景勝に課せられた期待はとてつもなく大きいものだったに違いない。

2日目、翔猿に敗れた時は、波乱の場所どころか大相撲の危機である。ところが、3日目から人が変わったように8連勝。このまま14勝1敗でいけば、相撲内容によっては、横綱に推挙というまでに期待は膨らんだ。

ところが、十一日目、十二日目と連敗。これで横綱昇進の夢は消えた。ただ、その後の頑張りが凄かった。気迫のこもった相撲で3連勝。ここ3場所、平幕にさらわれていた優勝を一人大関の責任として奪い返した功績は計り知れなく大きい。

その最後の相撲が凄かった。これまた今まで見たこともない鮮やかなすくい投げである。大関の優勝にふさわしい立派な相撲を千秋楽でやってのけたのだ。

昨年7月場所から3場所続いた平幕優勝をついに3で止めた。

125年ぶりの1横綱1大関の異例の場所を一人大関の貴景勝が大相撲の危機を救った意義は大きい。13日目の阿武咲戦あたりから懸賞金を受け取る仕草に誠実な姿が見て取れた。まさに感謝を込めゆっくりと手刀を切る、勝たせていただいたという謙虚さがにじみ出ていた。

そして、優勝インタビューである。

「悔しい思いをたくさんしたので、今回の優勝で少し報われた」
「誰もが大関になれるわけではない。重圧を感謝に変えて取り組んできた」
「もっと謙虚になって頑張っていきたい」

自分の置かれた環境に、愚痴ひとつ言わずどこまでもポジティブである。さらに “ 謙虚になって頑張りたい ” という発言に見られる相撲への姿勢である。

場所中の、しかめっ面の表情からは想像もできない言葉がつぎつぎと出る。ジイには信じられないような言葉の数々に、正直、貴景勝を見直さざるを得なかった。

過去の相撲を見る限り、突き押しだけで横綱になるのは難しいであろうと思っていた。ところが千秋楽の鮮やかな “ 下手投げ ” の妙技を見せられたからには考えを改めなくてはならない。

昔、第46代朝汐太郎という横綱がいた。朝汐の突っ張りは芸術品だった。張った切ったのがむしゃらのツッパリではなく、ツボに入った時の朝汐のツッパリは、まさに「電車道」そのままあっという間に押し出されてしまうという凄いものだった。

残念ながら、貴景勝がの突き押しは、体重を生かし、体全体の圧力で押し出すというもので、たまに横に振られた時の弱さがある。その弱点を知ってか、それを補う稽古をつんでいるが故の千秋楽の投げにつながったのであろう。しかし、その相撲が今後も取れるかどうかが、横綱を引き寄せるカギになるのではないか。

今場所は、落ちぶれた3大関に代わって、新しい力が育ってきた場所でもある。いわゆる群雄割拠の時代に入った。その中でも豊昇龍、琴ノ若、若元春、阿炎、若隆景、琴勝峰あたりが次世代を担う力士になることは間違いない。さらに来場所から、十両優勝の元大関・朝乃山が幕内復帰となれば、大相撲は本来の活気を取り戻すのではないかと期待が膨らむ。

3月場所は大阪である。貴景勝の地元でもある。

話題は事欠かない。

横綱・照ノ富士の復帰、貴景勝の綱とり、若き獅子たちの奮闘、ほぼ1年振りの朝乃山の幕内復帰。大阪場所は大いに盛り上がるであろう。

令和五年、異例の幕開けであったが、今年は必ずや新横綱、新大関が生まれる。白鵬以後の混沌とした時代を乗り切り、大相撲新時代の初年度となるのではないだろうか。

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