WBCは最高のハリウッド映画

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Vol.4-3.23.1118   WBCは最高のハリウッド映画

2023.03.23

2023.3.22日、第5回WBC決勝戦がマイアミで行われた。
サムライJapanはアメリカに3対2で勝利、3度目の優勝を飾り日本中が歓喜に包まれた。久しぶりに野球を堪能した15日間だった。

MVPは吉田選手ではないかと推測した。
地味ではあるが、度重なるチャンスでの適時打。どん底の主砲・村上選手の代わりに4番を務め、WBC史上最多の13打点たたき出した。最も勝利に貢献した選手である。

しかし、豈図らんやMVPは大谷選手、吉田選手はベストナインという名誉に浴した。

考えてみれば、大谷のWBC世界一への執念は桁外れに抜きんでていた。その熱さに刺激され各選手が燃え上がったとすれば、真のMVPは大谷翔平であろう。投手と打撃どちらも立派な成績を残し文句のつけようがなかった。

当初から大谷のWBCへの熱い思いは尋常ではなかった。己の役割はチームメート全員を、頭のてっぺんから足の先まで野球少年になりきらせることと自覚し、自らが野球少年になりきった。

大谷専属の通訳を務める水原氏が「こんなに楽しそうな大谷は見たことない」という言葉が証明している。

誰よりも大きな声で声援を送り、選手を迎え、塁に出た時は精一杯選手を鼓舞し続けた。そんな中でも明るさに礼儀、相手チームに対する敬意等々決しておろそかにしなかったのは立派である。

幼い頃、WBCの試合を見て、自分もいつかこの舞台に立ち優勝したいとずっと心に抱いていた。そのチャンスが来たのである。そして最高のチームメートと一緒に世界一を達成したい。その思いは誰よりも強かったと思われる。

試合は短期決戦でたったの7試合15日間で決着がつく。「絶対に優勝する」という目標の前提には一戦も落とせないというプレッシャーがある。それはファンも承知、常にハラハラドキドキの緊張感を生んだ。

この過酷な試合に召集された “ 30人の侍 ” は日本のプロフェッショナルである。この「サムライJ」は、終われば元のチームに帰って行くたった15日間の仲間である。映画「7人の侍」を彷彿させる。

ダルビッシュと大谷はメジャーリーガーであり互いに強く意識するライバルでもある。
完全試合を達成した佐々木朗希、若き三冠王の村上宗隆、守備の源田壮亮に打撃の職人吉田正尚、近藤健介。変わり種がラーズ・ヌートバーである。

「ラーズ・ヌートバー」母が日本人の日系2世。

それぞれがそれぞれの技術においてプライドを持った選手。まとめるのは大変だが、一流であるが故に言葉は最小限で済む。ただ、世界一を勝ち取るという一点において団結した執念がカギとなる。

そうして3月8日、予測がつかない “ 感動ドラマ ” が始まった。

このドラマに仕組まれた要素である。

※ 先ずは日系二世ラーズ・ヌートバーだ。

チームになじめるか ヌートバー 。彼にはもともと日本に好感を抱いていた。
第一打席に立つ彼の姿にはヒットへの執念がみなぎっていた。
初戦の中国戦1番での打席。いきなり初球を執念で打ち返した。塁上での派手なガッツポーズと喜びようはひとまず責任を果たしという安堵感と “ やったぜ ” という興奮の姿があった。それに加え奇妙な「ペッパーミルパフォーマンス」を披露、ヌートバー は初戦の第一球で日本のサムライとなった。

※ 中堅を担う、吉田、近藤、源田の職人。
近藤、吉田の手堅いバットコントロールには確かに職人を感じる。チャンスに打てる打者、簡単に三振しない選手ほど頼りになるものはない。近藤の通算打率3割7厘、通算出塁率4割1分3厘。吉田の打率は4割9厘、出塁率5割3分1厘、驚異的な数字を残した。打点13はWBC史上最多である。

※ もう一人期待された三冠王・村上宗隆の不振は予想外だった。主砲であるが故に不振が際立つ。かつてのイチローのように。ともするとチームに暗い空気を漂わせた。その村上の復活劇もドラマの大きな要素となった。

その時は準決勝という大事なメキシコ戦にやってきた。それも9回裏という絶体絶命の場面である。スコアは4対5。一点差まで追い上げあと1本が出なければ敗退である。暗い重圧ムードの中、打席に立ったのが村上である。まさにドラマである。こんな “ 劇的 ” な復活劇があるのか、不振にあえいでいた村上の起死回生の2点タイムリー、歓喜の “ 逆転サヨナラ安打 ” が出たのである。

まるでシナリオがあるかのような展開は神がかり的である

一人の天才スラッガーが不振から脱出を果たす劇的な復活ドラマは今回のWBCの見どころの一つである。9回裏ギリギリでの逆転サヨナラ安打、それを放ったのが大不振の村上とは出来過ぎのドラマである。この勢いが最終決勝戦につながった。マンガや映画に例えられる所以である。

そして迎えた最終戦、ドラマのクライマックスである。

本当にこんなことがあるのだろうか。
日本とアメリカが残ったことでも大きなドラマの構成要素である。その中で起きた奇跡が最後のイニングを大谷が担い、最終バッターは世界最強の打者であり同僚のトラウトになるとは誰が予想したであろう。まさにハリウッド映画でないと出来ない設定である。

試合後の各社の報道コメントにその一端を見る。

◆漫画を超えたドラマだった
◆まるで最高の脚本で書かれたハリウッドそのものだ

3月8日に始まり、22日に決勝を迎えた15日間のドラマの最後の打者が同僚でもあり、メジャ―最強の強打者トラウトと対戦するなんて出来過ぎている。
しかし、現実は漫画を超えたのである。

最後の打者トラウトは大谷の渾身の投球に空振り三振で幕切れとなる。
※ そのトラウトは
「全ての野球ファンが見るのを望んでいた対戦。他の終わり方があったと思うかい?」とコメント

米国のマーク・デローサ監督は、
大谷と対戦した主将トラウトについて
「彼が深い深呼吸をして感情をコントロールしているのが分かった」と明かし、
「自分だったら、あのような場面に立つ姿を想像できない。地球上最高の選手であり、チームメートでもある2人が向かい合っているんだ」と語った。

「大谷は野球界のユニコーン。他にも試してみる選手はいるだろうが、彼のレベルでできる人はいないだろう」と称賛を惜しまなかった。

サムライJはこれで終わりにしなかった。

球場に優勝の余韻が残る中、侍ジャパンの面々が三塁線に整列すると、スタンドのファン、対戦相手のアメリカ代表に向かって帽子をとって一礼。アメリカへの敬意とファンへの声援に対しあらためて感謝を示した。

最後までリスペクトを忘れない日本はファンも同じように海外から称賛を受けた。

これら日本の礼節ある振る舞いは日常として大事にしたい。

『サムライジャパン』は最初から、“ 世界一奪還 ” を強く意識していた。

誰が仕組んだわけでもない、決勝の日本対アメリカは神様からのプレゼントかもしれない。願ってもないカードになった。

日本が1点リードの最終回。最後トラウトのバットが空を切り、マウンドの大谷はついに夢を果たした。世界の頂点に立ったのである。ヘルメットとグラブを投げ捨て、走り寄るキャッチャー中村悠平と抱き合った。・・・映画ならここでフィナーレである

15日間のサクセスストーリーとして映画の題材には十分な内容だ。どんな素晴らしい脚本もこの現実の感動ドラマを超えられない。

米国デローサ監督は『今夜の勝者は野球ファンだ』といった。

それは最高の評価だ。日本が野球を心から愛し、日本のすべてを出し切って真剣に楽しんだからこそ両国の選手と世界の野球ファンが勝負を超え、エンターテイメントとして最高のフィナーレに酔いしれたということだろう。

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