G7サミット ~平和とは~
Vol.4-5.24.1122 G7広島サミット ~平和とは~
2023-05-24
強烈な台風が竜巻を伴って日本を縦断したようなサミットの3日間であった。
議長国日本としては成功であったのではないか。
今回、被爆地・広島で開催された意義を日本は “ 核 ” に拘り過ぎないか心配したが、メディアを中心に原爆関連報道が目立った程度で済んでよかった。
今何が大事なのか、過去の広島・長崎の惨状を世界の首脳に目で肌で、直に触れてもらうことも大切だが、今現実に起きている戦争を終結させるために世界が団結することである。
しかし、残念ながら国連ですら世界の安全保障に無力となった。であれば、『G7』となるところだが、ここ10年で中国の力は驚くほど強大化した。米国一強は今は昔、今日の混乱は発展途上国の台頭もからみ複雑化した。
グローバルサウスと呼ばれる南半球を中心とした発展途上国の台頭。とはいえ、まだ彼らの要求は平和以前に生きるための “食” “エネルギー” が優先される国情にある。そこに資源大国、中国・ロシアが勢力圏を拡大する材料がある。
平和とは、ロシア・中国も共に歩調を揃えるのが世界平和への道だが、彼らには『法の支配』という考えが希薄、独善的である。独裁者による独裁政治の法は自身にあり民主主義と言う概念がない。自国内のみの独裁であればいいが、国際法を無視されてはたまったものではない。
今回のウクライナ侵略のごとく、自国都合で『特別軍事作戦』と称し、無法に相手国へ侵略して自己を正当化する。これはもう “ 無法者 ” “ ならずもの国家 ” である。その国が、国連の常任理事国とは恐れ入る。世界の法は無きに等しい。
今回の広島サミットの最大の目的は、国際秩序の回復である。
◆『力による一方的な現状変更に反対し、法の支配に基づく国際秩序の維持』
◆『ロシアがウクライナからの撤退し、戦争の終結』である。
戦争が起らなければ “ 核 ” も必要ない。
核の廃絶への道はその後の重要課題となる。
カナダ在住の被爆者で来日された「サーロー節子さん」は、今回の広島サミットについて
『(核軍縮への)リーダーたちの思いが感じられなかった』
『核軍縮を全進させる気運が生まれたのか。サミットは失敗だった』と語った。
多くの人がサーロー氏のような思いを抱いた方が多いかもしれない。しかし、3日間で最も大事なことは “ 無法者を許さず、戦争を終結させること ” に凝縮させることがやはり第一目標である。
核軍縮を目的にするなら改めて広島で “ 核軍縮 ” だけに限って議論すべきであろう。
唯一の被爆国・日本の悲惨は世界が認めるところだ。その意味において日本が “ 核軍縮 ” へのリーダーシップを発揮することは異論がない。しかし現実世界を見据えた視点を誤っては元も子もない。ロシア、中国、北朝鮮を始めすべての核保有国を集めた命懸けの議論に立ち向かう覚悟と決意がいる。
日大教授の小谷賢氏が5/21産経のコラムにこんなことを書いておられる。(一部抜粋)
「・・・永世中立国であるスイスは、平和国家だから中立というわけではなく、自らをハリネズミのように武装化することで、外国からの侵略を抑止している。よく知られているようにスイスは国民皆兵制であり、各家庭にはいつでも戦闘が行えるよう小銃が備えられている。また国民全員分の核シェルターを完備しており、常に侵略に備えている。
ここまで実力をそろえることで、ようやく国際社会はスイスを中立国と認めてくれるのだ。しかしそのスイスですら、近年は国連に加盟し、ウクライナ戦争においては対露経済制裁にに加わったり、現在はウクライナへの武器輸出すらも検討されているので、純粋な中立国とはいえなくなっている。そこには中立という理念と現実の間で揺れ動くスイスの苦悩が垣間見える。
片や日本では平和主義の理念が先行しており、具体的にどう国民の生命や財産を守っていくのか、という議論が希薄な印象を受ける。
・・・中途半端な和平は将来の戦争の芽となる。もし本気でロシアを撤退させたいのであれば、日本もウクライナに対して軍事支援を行う必要が生じる。
日本が平和の理念を唱えるのは結構だが、現実の戦争に対し何も対応しないのであれば、それは『ダチョウの平和』と揶揄されるだろう」
この厳しい指摘を何人の日本人が冷静に受け止め、理解することができるであろうか。
被爆地・広島で行われたサミットである。サロー氏の感想のような考えに多くの方が賛同されるのはやむを得ないにしても、現実は小谷氏の指摘が現実の世界であろうと思う。
戦後77年平和な日本で育った人間に『平和とは何か』と問うた時、日本人の多くの考えは、永世中立国・スイス国民とは全く違う回答がされるだろうことは容易に想像できる。
今回のサミットは、多くのことを考えさせられるサミットであった。
急遽G7に参加したゼレンスキー氏の果敢な行動は一瞬の緩みもない。今度はすかさず「7月に平和サミット」開催を提案した。戦争を終わらせるためにやれることはすべてやる。全知全能を駆使し、命をかけた行動は『自由と平和』への飽くなき渇望である。
日本が核軍縮のリーダーシップを発揮するには、首相一人だけではどうにもならない。国民が理想論から現実の実相を理解することから始めなければ日本は窮地に陥る。
戦後77年、洗脳からの脱却。日本が抱える最も厳しい難題である。
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