もう2度と中国には戻らない
Vol.4-12.12-1143 もう2度と中国には戻らない
2023-12-12
『もう2度と中国には戻らない』
日本でも有名になった香港・周庭氏(アグネス・チョウ)のつい最近の言葉である。
2020年に抗議デモを扇動したなどの罪で逮捕され禁錮10月の実刑判決を受け収監された。消息を絶って3年弱、どうしているのだろうと心配していたが、今はカナダにいると知り安堵した。
今回、産経新聞のインタビューに応じその空白の3年が少しわかった。
インタビューの一部である。
◇香港に戻らないと決めた理由は
『香港に戻ると、カナダに帰れなくなるのではないかという恐怖があった。出境するための新たな条件を警察が出してくるかもしれない。もう二度と中国大陸には行きたくない。また外国からから香港に戻って空港で逮捕された香港人も多い
◇一生戻らないつもりなのか
『そう思っているが、可能ならば、いつの日か香港に帰って自由に生きたい。香港は私の家だから・・・』
◇カナダに留学するために誓約書のようなものも書かされた
『警察署の中で4、5人の警官に囲まれ、恐怖しか感じなかった。断ったら逮捕されるか、パスポートを返してもらえないと思った。警察署内で反抗するのは難しい』
◇将来の夢は
『自由に生きたい。多くの人にとって当たり前のことだろうが、私にはとても難しく、貴重なことだ。これまでの3年間、何もできずにとても苦しんだ』
◇香港の現状は
『香港国家安全維持法の下、政府に対し批判的なことは何も言えない。選挙でも、親北京派しか立候補できない。完全にコントロールされ、言論の自由や人権が確保されないような状況だ』
インタビューの中で「日本への留学は考えなかったか?」という質問があったが、少々頓珍漢な質問だ。
20年前、拉致被害者が一時帰国を果たした時、約束通り「一旦北朝鮮に返すべきだ」とい意見があった。とんでもないことだ。一旦帰せば2度と日本の土は踏めなかったであろう。日本のように親中派がワンサといる日本に留学でもすれば、中国の圧力に屈する可能性がある。周庭氏は口には出さねどその懸念を抱いていたのではないか。カナダに決めたのは賢明な選択であった。
『一生中国に戻らない』この発言は中国への “ 反抗 ” である。この言葉を発することの意味は事実上の亡命が確定したとみていいのだろう。でなければ産経新聞のインタビューに応じられるはずがない。
上久保誠人・立命館大学教授によれば
「カナダの大学は周氏から願書が出され、政府、警察、公安当局と打ち合わせをしたはずだ。・・・周氏は、一定の安全確保が保障されたのでメッセージを出したと思われる。香港国家安全維持法の要求に従わないということを一人で決断したということはなく、まったく安全とは言い切れないまでも、何らかの保護が確実になったのだろう。カナダ、もしくは英米の支援に何らかの確証を得たのだと思う」
と語っているがその通りだと思う。さらに
「中国政府は厳しい対応を示唆しているが、周氏が突然いなくなったりすれば国際問題になる。カナダは身柄の引き渡しなどは当然しない。カナダ政府は国家の威信をかけて査証(ビザ)を得ている周氏を守ることに自然となる。もし何者かに拉致されるようなことがあれば、日本人が北朝鮮に拉致されるのと同じで、国家主権の侵害だ」と述べている。
全世界に中国の警察組織を忍ばせ、中国人の監視を続ける中国である。現実に昨日までいた現役の閣僚が突然いなくなる中国である。どんな手を使うかもしれない。日本では守りきれないかもしれない。
アステラス製薬の社員が証拠もなくスパイ容疑で逮捕・起訴されたように、中国では今現在17名の邦人が収監されている。
2019年介護関連の仕事をしていた50代の男性もスパイ容疑で逮捕され、先日上訴が棄却され実刑判決が確定した。12年の実刑判決である。裁判の内容も、証拠も示されないまま日本は “ 指をくわえて見守るだけ ” 為す術もなく事実を受け入れるだけである。そんな国に “ 金のため ” ならなりふり構わず進出する企業家、中国の一挙手一投足にビビりながらも金には勝てない。中国の機嫌を損ねてはと、企業人も政治家も要人と会う時の満面の笑みと商人の手もみの様な姿勢には何とも悲しい日本の姿が現実だ。
ところで、周庭(アグネス・チョウ)氏が中国に戻らないと言う理由には、今年の3月、日本に留学していた香港人女性は(23)が身分証の更新のために一時帰国した際に逮捕されたことも中国の手口を世界に知らしめることになった。
彼女は2018年から日本に留学、その間フェイスブックなどに投稿した内容が “ 反政府的 ” だとし、2020年に制定された「国家安全維持法」の違反容疑であった。
中国の裁判所の判決理由は「被告は投稿を削除できたのに削除しなかった」「他人がまねをしないよう予防しなければならない」というものだった。
この逮捕で、うかつに海外での発言も処罰対象になることが世界に発信された。周庭氏が中国に2度と戻らないというのもうなずける。今度逮捕されれば逆に2度と渡航は許されないだろうし、前回の数ヶ月の収監ではすまない。何十年に及ぶ可能性がある。
全世界に巡らされた中国の警察網、中国人は海外にいても自由を謳歌することはできない。
時あたかも、12月10日香港区議会選挙が行われた。
投票率は過去最低の27.5%。2019年まだ香港に自由が残っていた時代の選挙は71.2%である。この時は民主派が情熱を抱けた時代だった。しかし、今回の選挙も27.5%もあればいいんじゃないのと日本人は思うかもしれないが、当局は公務員に完全投票を強制、市民には投票当日は香港域外に出ないよう強制があってのこの数字である。
今回、民主派の立候補はゼロ。それも当然、当局の推薦がなければ立候補すらできない。当然中国共産党に忠誠を誓った者しか立候補できない。そんな恐怖政治の出来レースに誰が投票にいくのか、中国共産党党員と親中派しか行くはずもない。したがって親中派が全議席を独占した。
今や中国はわずかにあった香港の自由も消され恐怖と暗黒の大陸の一部となった。
しかし時の流れとは怖いものだ、ミャンマーの内戦、ロシアのウクライナ侵略、テロリスト・ハマスとイスラエル戦争等々が目まぐるしく世界が動く中、数年前のウイグル自治区のジェノサイドすら日本人の記憶から消されているのではないか。
実は10月30、31には「国際ウイグルフォーラム」が国会内で海外からの学者を含め200人規模で行われた。
日本在住の日本ウイグル協会会長のレテプ・アフメット氏は
『習近平政権は、同化が思うように進まないことに焦りを募らせ、ウイグル人を力で滅ぼす方向へ大きく舵(かじ)を切ったのだろう。300万人超と指摘される大規模な強制収容、強制労働、不妊手術の強制、親子の強制的引き離し。AI(人工知能)による監視システム、ウイグル人宅に100万人規模で政府職員を寝泊まりさせるなど想像を絶する監視も常態化した。著名な知識人や経済人らが一斉に収容され、行方不明となる悪夢の事態も起こっている』
『在日ウイグル人は中国か当局から現地に残した家族を人質にとられ、ウイグル協会の活動情報などを求められている』という。徹底した監視である。
レテプ・アフメット会長の父や弟を含む家族12人が強制収容されている。「中国共産党への忠誠心を示し当局に協力すればお父さんを出してあげる」と伝えられたがアフメット氏は断った。それ以降、一切の情報が断ち切られたと言う。
家族の命と引き替えの活動は命がけである。
平穏な日本では考えられないことだ。
今起こっている、イスラエルとテロ組織・ハマスとの戦いが始まったお蔭で、連日イスラエル VS ハマスニュースに切り替わった、ウクライナ戦争が人々の記憶から遠ざけられている。
個人的に感じることは、イスラエルとパレスチナ(ハマス)との戦争はいわば75年に及ぶ宗教内戦である。一方ロシアは理由は勝手につけているが、力による領土拡張である。世界が発した力による現状変更だけはだけはやめようという掟を両国は共に無視したのだ。被害が子供を始め弱者に影響が大きくなると戦争勃発の責任などそっちのけとなる。
不思議なのはハマスの奇襲によって起きたにもかかわらず、ハマスの責任を追及するガザ市民の声は聞こえてこない。さらに民間人や子供の悲惨な姿がクローズアップされる中、世界からハマスの降伏論も出ない。最近ではやり過ぎだというイスラエルの戦争行為に非難が集中している。なんとも不条理なことである。
報道も鵜呑みにできない。報道の自由を隠れ蓑に、己の思想を日々大量の情報を垂れ流すことによって世論を誘導する。いわゆる報道による洗脳である。
この件に限らず、すべての報道に視聴者はバイアスの程度を見極めなくてはならない。
香港問題もウイグル問題もウクライナも終わってはいない。といよりより問題は深刻になりつつあるのに人々の記憶から遠ざかって行っているように見える。
今は他人事だが我が身に降りかかった時、うつろな世間の目の残酷さを知るのだ。
日本の政治は今、派閥の裏金に揺れに揺れている。その揺れを必要以上に揺らそうとしている人間がいる。事の真相とケジメは必要である。しかし、日本国家としての行く末に悪の本性か、政治修正の揺らぎであるのか見極めなくてはならない。
国民は次期衆議院選挙でその見極めを誤っては、巨大な恐怖国家を隣にとんでもない失敗を起しかねない。
ところで今日の新聞は、中国が香港・周庭氏(アグネス・チョウ)に、警告を発した記事があった。
周庭氏は現在保釈中であるとし、定期的に香港警察に出頭する義務があるというのだ。
しかし
「まだ罪を犯していない」
「出頭しなければ逃亡犯になる。そうなれば指名手配する」と脅しをかけてきた。と報じている。
まあ、独裁・恐怖国家が黙っているわけがない。カナダは国家の威信をかけて守ってほしい。
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