ミャンマー・クーデター
Vol.2-2.6 389 ミャンマー・クーデター
2021.2.6
ミャンマー・クーデターは2.1日夜、国軍によって実行された。
国軍はアウン・サン・スー・チー国家顧問のほか、多数の与党国民民主連盟(NLD)幹部を拘束した。
昨年11月の総選挙で圧勝したNLDを壊滅に追い込み、第二次スー・チー政権発足の阻止を狙ったことは明らかだ。
国軍は1日夜、スー・チー氏ら閣僚を24人を解任、新閣僚11人を任命。スー・チー氏の後任の外相には国軍出身者の起用を発表した。
この手回しの速さには驚くが、昨年の選挙結果からすでに国軍は周到な準備をしていたことが伺える。
早速、バイデン大統領は「米国は地域と世界のパートナー諸国らと一緒にミャンマーの民主体制と法の支配の回復に向け取り組んでいく」と表明し、対ミャンマーへの制裁の復活を検討する考えを明らかにした。
国連安全保障理事会は2日緊急会合をオンライン形式で開催。欧米諸国はクーデターを非難したが、案の定と言おうか、常任理事国である中国は沈黙だ。
さらに協議を続け、アウン・サン・スー・チー氏らの解放を求める英国作成の報道声明案について協議したが、いつものパターンで中国とロシアが反対、合意に至らなかった。
この、国連安全保障理事会とは、5か国の常任理事国(中国,フランス,ロシア,英国,米国)と,各地域に配分され,選挙により選出される10か国の非常任理事国から構成されている。
常任理事国に中国とロシアが入っている限り、自由主義陣営の論理が通じるはずがない。困ったもんだ。第二次世界大戦の戦勝国の戦利品のような組織。今となってはいざと言う時、何も機能しない。大戦後の構図も今では意味をなさない。理念を含め、抜本的に組織改革すべき時ではないか。
中国の拒否理由は明らかである。
インド洋に出るルートを確保するため、ミャンマーとは軍事政権時代から密接な関係を築いてきた。アウン・サン・スー・チー氏が台頭し、民主化が進んできたことに常に警戒していた。
今回の事件を、中国の環球時報は社説で、昨年の選挙で一気に民主化が進んだことがクーデターに繋がったと言わんばかりに「西洋式の選挙制度を受け入れた中小国家の失敗は『民主主義の代価』だと論じた。
産経新聞は5日になってやっと「背後に中国」と書くに至った。クーデターに至った背後に中国の支援があったことは間違いない。
新聞記事によれば「今年1月にミャンマーを訪問した王毅外相はスー・チー氏のほか今回のクーデターで実権を握ったミン・アウン・フライン総司令官とも会談。総司令官はその場で昨年11月の総選挙への不満を述べた」と記事にある。
中国はこの時を待っていたのである。
当然別々に会談をしているはずである。ここですでにクーデターが合意されたか、あるいは中国から提案したのではないかとジイは推測する。
スー・チー氏のミスである。何のためにわざわざ王毅外相が来たのか。特別の緊急案件があったならともかく、中国に懸念の民主化による脅威しかないではないか。そのことを察知できなかったのが致命傷になった。
ベトナム戦争しかり、共産国の背後には中国とロシアがいることを強く意識しなくてはならない。
ロシアが今、民主化の波を阻止するために強硬な手段に出ているが、世界の国民は自由民主主義に目覚めているのである。ロシアと中国は数少ない共産国家を食い止めることに必死なのだ。
ましてや中国はインド洋に出るルートをミャンマーに託している。決して手放したくない相手である。どんな手を使っても軍事政権を支援するであろう。元の民主化に戻るためにはかなりの時間とアメリカの本気介入でなければ解決は難しいと思われる。
日本はここで、中国に気を使って矛先が鈍るようだと「自由で開かれたインド太平洋構想」を提案し、アジアで高まったプレゼンスも水泡に帰す。世界から一目置かれる存在になったものが地に落ちることになる。
ただの紙風船としないためにも、アジアの雄として覚悟を決めなくてはならない。