気になる楽天の国家意識
Vol.2-4.7-449 気になる楽天の国家意識
2021.4.7
楽天という企業は本当にわからない会社だ。
日本企業かと思いきや、2012年には社内では英語を公用語とし、昇進にはTOEIC基準点のクリアを条件にするなど、人事評価の面でも英語を重要視する体制を築いてきた。
今はやりのグローバル企業であることをアピールしたいのであろうが、今や70以上の国・地域からの外国籍社員が働いており、その割合は全社員の2割にまでなっている。
人数ベースでは、英語化前の2010年の20倍。新規に採用しているエンジニアに限っていえば、7~8割が外国籍社員だという。まさに、多国籍企業である。
三木谷社長曰く、
『逆説的だが、僕はもともと、日本の企業カルチャーを全世界的に浸透させるために楽天の英語化を推進した。組織を国際化するのではなくて、日本の仕事のやり方とか文化をメインにして、世界中のサービス会社に浸透させていけば、きっと成功する』と考えたと、英語化の目的を語った。
英語を公用語にしたが、日本文化をベースにした。
その理由である。
1、チームワークが得意であること
2、個人主義ではなく、全体を考えて動く
3、企業倫理的、社会貢献的な考え方が非常に強いこと
上記以上に、日本文化というのは、最もほかの文化を吸収し、受け入れやすい文化ではないかということ。実は日本こそが、ユニバーサルで、多様化し得る社会の下地を持っている。そういう日本で生まれた企業自身が、国をまたいでリーダーシップをとっていければいいと思う。と三木谷社長は考えている。
すべて「欧米化」かと思いきや日本文化を基本ベースに置いたのには意外な気がした。ただ、日本文化はあくまでも企業利益を考えたツールの一つであり、日本愛が根底にあるわけでない。
そこで、成果はというと、良く分からないが、少なくとも今後のデジタル化を展望した時にはかなり有利になると確信しているようだ。
ジイのような人間には言葉がとても重要であると認識する。ある外国人が長く日本に住むようになって、日本語で夢を見るようになったという。考え方も自然に日本流になってきた話を聞くと、英語の日常から手法だけ日本流にするというメカニックが果たして強靭な企業体質につながるのであろうか。
気になっていたジイの心配は現実になった。
つい最近外為法違反ではないかとする、中国IT大手「テンセント」の子会社からの657億円の出資を受けた件だ。出資比率が1%を超え3.65%の株主となった。
中国は国家情報法に基づき、あらゆる組織や個人に政府の諜報活動への協力を義務付けている。そういう中で、楽天の個人情報や技術が中国政府に流失したり、経営に影響力を行使される懸念もある。
実は2019年11月に外為法が改正され、安全保障上重要な業種について事前届け出の義務を、これまでの株式総数を10%から1%にまで引き下げている。3.65%はオーバーしていて事前届け出の対象になる。
ところがだ、問題は、「国有企業でない「民間企業」は事前届け出を免除される」とある。テンセントは1%を超えているにもかかわらず免除されてしまったのだ。
この抜け道を知って、三木谷氏がやったとすれば、日本文化はツールとして重宝するが理念は日本流ではなく、あくまでも会社が儲かればいいと言う「中国流」にほかならない。
細川昌彦・明星大学教授が指摘するように、中国の場合は国有企業か民間企業か分けることは無意味である。安全保障上の懸念は消えない。
特に米国では今回の問題は5Gの開発関連で対米外国投資委員会による規制対象になる。もちろん楽天モバイルも5Gの情報システム開発に取り組む事業者である。インテリジェンスの情報で問題が判明すれば、遡って取引を停止・禁止される可能性がある。
今後の状況次第だが、米国が問題視しているテンセントと提携している楽天をクリーンな企業とみなされるか?、細川教授は心配する。
英語を公用語とした楽天。国家意識なき企業運営が気になる。