皇位継承・有識者会議
Vol.2-4.23-465 皇位継承・有識者会議
2021.4.23
平成17年、小泉政権時代に皇室典範に関する有識者会議というのが開催されたことがある。何度か開かれたのであろうが、悠仁さまの誕生で自然消滅的に消えた記憶がある。
今年の3月、加藤官房長官は16日の記者会見で、安定的な皇位継承策などを検討する有識者会議を新たに設置し、来週中に初会合を開催すると発表した。皇位継承権の範囲や皇族の対象などが主な論点となる見通しだとしメンバーを発表した。
会議のメンバーである。
▽大橋真由美・上智大教授
▽清家篤日本私立学校振興・共済事業団理事長
▽冨田哲郎・JR東日本会長
▽女優・作家の中江有里さん
▽細谷雄一・慶大教授
▽宮崎緑・千葉商科大教授
の6人が指名された。
加藤氏は「皇室制度や歴史の専門家などの考えをお聞きしながら、予断を持つことなく議論を行っていただく」と議論を託した。
しかし、会議の進め方が非常に分かりづらいと考えている人が多いのではないか。
最初に聞いた時、選任された6人のメンバーが色々な議論を重ねながら、進めて行くのかと思いきや、6人以外の有識者から意見を聴取し、最終的に6人のメンバーがその取りまとめを行うということのようだ。
これは非常に難しい作業になる。
ことの発端は、現皇室典範に、「男系の男子が」皇位継承するとあり、現状その資格があるのは、高齢の方を除けば、秋篠宮様と悠仁さま2人になる。
万が一のことを考えると皇位継承に重大な問題が起きかねない。そんな不安定な状況を早い段階で解消しておく必要があるとして皇位継承問題が持ち上がったのである。
遠い昔から危機は何度もあった。一時しのぎでの女性天皇は10代8人いる。しかし、全て父方が天皇の血筋につながる男系。母方で天皇につながる女系天皇はいない。
現在の議論では皇室典範には「男系の男子」が皇位を継承するとあり、保守派は男系男子による皇位継承が原則と強調。女性・女系天皇につながるとして女性宮家に反対し、とりわけ女系天皇については「日本の伝統を破壊する」と強く異論を唱えている。
しかし、昨今は女性天皇や女系までをも容認する意見が拮抗するまでになってきた。
2020年の共同通信世論調査では女性天皇賛成が85%、女系天皇賛成は79%に上ったとし世の中は女性天皇容認が勢いを増している。
そんな中、安定的な皇位継承を議論する有識者会議が4月8日第一回目が開催された。
第一回 有識者会議4月8日
◆櫻井よしこ・ジャーナリスト
皇位の継承資格について、「文化、文明にはそれぞれの特徴があり、大事にすべきだという観点から、男系男子であるべきだ」と述べ、今の継承資格を維持すべきだという考えを示した。また、旧宮家の皇籍の復帰について、「旧宮家の方々は、皇室の皆様方と深く交流されており、皇籍復帰が養子縁組によって可能になるのがよいのではないか」と述べた。
◆笠原英彦・慶應義塾大学教授
「男系女子まで継承資格を拡大すべきだが、財政的な負担が重すぎてもいけないので、内親王まで認めるのが適当ではないか」と述べた。また、「女系天皇については今回は踏み込むべきではなく、今後の検討対象とすべきではないか」と述べた。
<第3回目の有識者会議・4/21>
◆今谷明・国際日本文化研究センターの名誉教授
「女性宮家は早く何とかしなければいけない。とりあえず男系で続いていくしかないが、準備はしておく必要がある。女系天皇の場合、欧州のどの国をモデルにするか研究を始めなくてはいけない。皇族に戻ってもいいとおっしゃる旧宮家の方がどのぐらいおられるか調査が必要ではないか」
◆所功・京都産業大名誉教授
「安定的な皇位継承の対策として男系男子を優先し、男系女子まで容認しておく。皇族女子は男子不在の内廷(天皇ご一家)と宮家の相続も可能として公務分担を続ける。婚姻後の皇族女子は天皇、皇族の公務を内廷職員として補佐できるようにする。元宮家の男系男子の養子縁組は検討すればいいが難しいと思う」
◆古川隆久・日大教授
「女系、女性天皇は憲法上問題ない。全面的に賛成だ。男系男子の維持を主張する方々の議論は、憲法を形骸化させかねないような論理が含まれている。旧宮家の皇籍復帰は好ましくない。今の天皇ご一家とは非常に離れた血筋だし、皇族だった経験のない方になるからだ」
◆本郷恵子・東大史料編纂所所長
「皇室は危機的な状況なので皇位継承資格を女性皇族にまで広げるのであれば、女性皇族は男性皇族と同じように処遇すべきであろう。男女問わず直系長子優先で継承していただければよろしいのではないか。女系は先例がないが、決断できて合意が取れるということであればよい機会になる」
それぞれの意見を聞く限り、ほぼ3つの意見に集約できるのではないか。
1、①男系男子で継承 ②旧宮家の皇籍の復帰
2、男系男子を優先し、男系女子まで容認
3、①皇位継承資格を女性皇族にまで広げる ②男女問わず直系長子優先で継承
今後も有識者の意見を聴くことになろうと思うが、上記範囲内であろう。
いずれにしても、意見が多様化する時代に突入したことは間違いない。あらゆる垣根が取り払われたことは良い事かもしれないが、「国安らかにあれ」という公の精神希薄化が読み取れる。いわゆる個人主義の台頭により、公と私の区別がなくなった。
現天皇は初代の神武天皇が即位した皇紀元年から126代目。実に2600年男系で紡いできた歴史は世界でただ一つ、日本の天皇だけである。
その一事において世界は驚嘆と尊敬と羨望を抱いている。
地球上のすべての超能力とすべての科学者の知恵を集めてなおこの姿を超えることはできない。それをいとも簡単に捨て去る人種は日本人ではないとジイは確信する。
失くして復活する性質のものではない。高き崇高な歴史を放棄するなど言葉にすらできない。
“ 世の中は変わった ” とか、“ 安定的皇位継承の為 ” など軽薄な考えで2600年「万世一系」の歴史に立ち向かうなどは歴史への冒瀆である。
最終的に判断する有識者6人はどのような判断を下すのか、引き受けた勇気には敬服するが、とても畏れ多くて結論を出すことすら憚れる。
日本国はどんな結論を導き出そうとするのか、身が震える思いである。