国際協調と積極外交の継承
Vol.2-9.18-613 国際協調と積極外交の継承
2021.9.18
神谷万丈・防衛大学教授が産経新聞・正論に「国際協調重視の積極外交継承を」と題したコラムがあった。
次期首相が取り組むべき課題としての提言でもある。
振り返ってみると約8年に及ぶ、安倍首相と菅コンビで進めた外交政策は実にすばらしかった。その成果は米国が抜けた後、国際協調主義を主導しTPPを成立させたことにも見られた。
神谷氏は新首相の課題として、安倍・菅が主導した積極外交の継続の必要性を説いた。
その要約である。
『コロナ対応は大胆な政策変更もあろうが、安倍・菅が主導した積極外交の継続が大事である。今日の世界で日本の存在感は極めて大きい。米中対立の中、米国は日本の力をかつてなく頼りにしている。英空母・クイーン・エリザベスの寄港、ドイツ海軍のバイエルンも寄港予定などは国際協調を主導した象徴的事象である』
『これらはここ10年の日本外交を安全保障上の頼れるパートナーとみた結果であり、この結果を当然視してはならい』と断言。
『わずか10年前は経済大国にもかかわらず政治的リーダーシップがとれない日本は批判を受けてきたのだ。ところがこの10年の日本外交の積極性が欧米が頼りにしだした』のだと。
『もし、日本外交がこの10年見せてきた積極性を失えば、日本の国際的地位は再び地に落ちる。新首相はこの認識が必要だ』と説く。
しかし、ただ積極外交をすればいいというものではないとクギをさす。
『他国から好ましいと受け入れられてこそ積極外交が国の地位向上につながる。安倍・菅外交の柱は、自らを米国中心とする「リベラルな、ルールを基盤とする国際秩序」の維持勢力と位置付け、中国による秩序改変への反対を貫くことにあった』とその姿勢を評価。
『この、日本が掲げた積極的平和主義は、軍事力中心主義を引き続き排除しつつも、世界の平和と繁栄により大きな責任を担っていく意思を明らかにしたものと理解された。
また、自由で開かれたインド太平洋構想は、太平洋とインド洋を結ぶ広大な地域にリベラルなルール基盤を築く決意表明として受け止められた』
『このように、日本の積極的平和主義には「国際協調主義に基づく」という枕詞が付されており、日本はこの10年、それが単なる修辞ではないことを示してきた』と一貫して国際協調主義を貫いてきたことを高く評価した。
『日米同盟を強化し日米豪印のクアッドを推進し、欧州諸国との安全保障協力にも熱心な姿勢は、リベラル国際秩序への中国の挑戦に国際協調で立ち向かう決意の表れと理解されている』
『中国の修正主義を前に、既存の国際秩序の維持を主導̪し世界での日本の存在感を高めたい。そうした願望の達成が日本単独では不可能であることを認識し、過去を振り返りつつ未来志向であろうとする歴史観を一貫して示したころが、日本の積極外交の国際的受容を促す上で重要な意味を持った。』、、、と総括した。
たしかに、安倍前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋構想」がこれほど世界で共有されるとは思ってもみなかった。日本の首相がこれほど世界でリーダーシップを発揮したのは初めてではないか。
神谷氏は、この10年で作り上げた積極外交を、新首相の下でも継続されることに望みを託したが、全くその通りである。
経済は世界第三位にはなったが、この10年日本は世界のリーダーになりつつあった。これからの10年は対中国、対ロシア関係においてかなり厳しい緊張関係が続くと見て間違いない。
立憲民主党の掲げた政権構想では役に立たない。かと言って、総裁選序盤を見る限り、日本国家が世界でどうあるべきかという視点をもって語った総裁候補はいない。
日本がようやく世界のリーダーたちに信用される位置を確保した。この築き上げた立ち位置をしっかりと意識した政策や行動が伴うかどうか。現時点では不安しかない。
神谷氏の希望はかなり厳しいと言わざるをえない。
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