フランス41%の恐怖
Vol.3-4.27-834 フランス41%の恐怖
2022.04.27
フランス大統領選、マクロン氏(保守・中道)の勝利は、フランスよりもEUにNATO、バイデン大統領に大きな安心感を与えた。
極右政党・ルペン氏の追い上げは世界の自由主義陣営の肝を冷やした。まさかとは思っていたが、国民の熱気はウクライナの悲惨などどこ吹く風、停滞する経済の不満をルペン氏に託した。
得票率、マクロン氏59%、ルペン氏41%(国民連合)。前回の34%から着実に支持を増やした。
極右候補が史上最も大統領の座に近づいた今回のフランス大統領選、ルペン氏が「今夜の結果はそれ自体が歴史的な勝利だ」というほど画期的なことなのだ。
今回のルペン氏の戦いは、極右政党の過激思想を抑え、ウクライナ戦争で経済的に苦しむ国民を意識し、ガソリンや食品の高騰への批判、生活支援を訴え、生活弱者に寄り添って票を伸ばした。
アメリカ、EC、NATO及び日本が警戒したのはルペン氏の政治姿勢である。
1、ロシア制裁に反対を示したプーチンへのあからさまな好意
2、NATOからの脱退の表明
3、フランス憲法はEU法より優位にあるとの発言
その他、物議を醸した発言は種々あるが、いずれにしても将来極右政権が誕生するかもしれないという不安を抱かせたのは間違いない。
すでにルペン氏は「6月の下院選に向けて戦いを始める。今回、歴史的結果を収めた」と発言。
今回の選挙でも5ポイントまで迫った時にはさすが欧州も危機感をつのらせ、選挙期間中にもかかわらず、ドイツやスペイン首脳が「マクロン支持」を表明する異例な対応をとったほどだ。
勝利の瞬間、間髪を入れず、バイデン大統領、EU委員長、ドイツ・シュルツ首相、ゼレンスキー大統領などが早速祝福のメッセージを贈ったのも危機感の表れである。
勝利のマクロン大統領は早々に、ウクライナへの武器・自走砲「カエサル」、対戦車ミサイル「ミラン」の供与を表明。さらにウクライナ兵をフランスで訓練する計画も示した。
ロシアとの対話路線も周辺国には「プーチンと話しても時間の無駄」という懐疑的見方がある中で、「止めてしまうとプーチン氏とのやりとりをトルコや中国、インドの首脳に委ねることになる」といい、ウクライナ・ゼレンスキー大統領の同意を得ながら進める方針を強調した。
5年前、ルペン氏が頭角を現した時、ヨーロッパに存在する極右の存在というものを認識した程度だったが、まさか政権を脅かすまでになるとは予想もしなかった。
万が一、ルペン候補が勝利していれば、EU、NATOの枠組みに大きな亀裂を生み出しかねなかった。同時に独裁者・プーチンを活気づかせることにもつなったことは容易に想像できる。
ここまで極右に票が集まった理由だ。どうもフランス国民の経済悪化への不満だけではなそうである。
1958年旧植民地アルジェリアの独立戦争にからみフランス国会が混乱に陥ったことがあった。この混乱封じに大統領の権限が強化された経緯がある。
その結果、大統領は「民主主義の独裁者」といわれるほど強権者となり、民意が反映されないという不満を生んだ。マクロン氏の「王様然」とした態度も反発を買ったと思われる。
民意とは移ろいやすいものだ。6月に下院議員選挙が行われる。フランス政界の再編につながるかもしれない。
世界は今、自由民主主義 VS 共産・独裁に2分される中にある。フランスが逆ベクトルに動くとすれば欧州域内に止まらず、動揺は世界に波及する可能性もある。
41%には恐怖が宿っている。相手は勢いづいている。マクロン大統領は6月に向け大きく路線変更を余儀なくされることになるだろう。
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