明日の無いロシア交渉
Vol.3-6.11-879 明日の無いロシア交渉
2022.06.11
ロシア交渉は今日あって明日はない。今日まであった約束が明日はなくなる。それがロシアとの約束事である。
ロシア政府が、北方領土周辺水域での日本漁船の安全操業を担保する日露間協定の履行を中断すると一方的に通告してきた。
ウクライナ侵攻に対して日本の制裁への復讐であることは明らかである。
北方領土を不法に占拠された上に、自国の島の周辺で操業するのに、泥棒に協力金を払って操業する。誠に滑稽な話ではあるが、相手は法や協定など無きに等しい国家である。
終戦間際に一方的平和条約を破棄して、白旗を上げた無防備の日本を侵略し、残虐の限りを尽くした国である。自国領だとして勝手に操業すれば、躊躇なく攻撃され、不法侵入を理由に撃沈されるのは目に見えている。
日本のように法に照らしてなどと優しいことを言う相手ではない。何度も北海道操業中に拿捕、銃撃被害に遭ったことか。そのたびに多額の賠償を求められ応じてきた。世界の笑い者にされても何も言えない。ただひたすらひれ伏すだけ、軍備を持たない国の悲哀である。
フィンランドやスウエーデンが中立を維持しロシアの怒りを買わないように気を遣いながら生きてきたのがよく理解できる。
しかし、この海での漁業を生業にしている漁業関係者もいる。その人たちの生活をロシアのせいにして無視するわけにはいかない。国が支援をしながらもロシアに対しては毅然とした態度での姿勢を崩してはならない。
今、安全操業協定は日露間に4つある。
◆サケ・マス漁業交渉・・・日本側・ロシア側水域での操業条件の交渉
◆貝殻島コンブ交渉・・・採取量とロシア側に支払う採取権料交渉
◆地先沖合漁業交渉・・・両国水域での操業条件交渉(サンマ・スルメイカ・マダラ)
◆北方4島周辺水域での安全操業協議
これらの交渉は、ロシア制裁で金融に支障をきたしているロシアが、交渉条件に金融制裁解除を出してくる可能性がある。
相手は白を黒だと平気で言う国家である。
思えば北方領土交渉も、70年に及び悪魔の手の上で、いいように利用されてきた。日露交渉の歴史の無駄使いが思い浮かぶ。ロシア国民もロシアの指導部も北方領土は100%ロシアの領土であるという意識は70年前から1ミリ足りとも動いていない。そのことに気付かず、時の為政者の言葉に一喜一憂してきた日本人のナイーブさには言葉もない。
その代償?ではないが、「世界一正直で安全な国」との称号をもらった。
私たち、日本人はウクライナで起きている戦争の実相を一つ一つ頭に刻みこまなくてはならない。3ヶ月も経つと現実の戦争も「悲惨なドラマ」を見ているような錯覚に陥り、一種のマヒ状態になり痛みも感じなくなりつつある。
しかし、ロシアの発する言葉の一つ一つに注意を払い、実際に行っている行動をつぶさに観察する必要がある。それは70年に及ぶ日露交渉、日露の北海道漁業トラブルの反省とも重なる。
~ウクライナ戦争~
1、侵略を始めた理由を、親ロシア人を救うための“ 特別軍事作戦 ”だと言い張るロシア
2、爆撃は軍事施設のみと言いながら、病院、学校、マーケット等、実際は無差別だ
3、人道回路をつくったといい、事実は戦争状態で使えず
4、黒海封鎖でアフリカ諸国への穀物輸送が滞り、飢餓懸念が発生すれば、ウクライナの機雷のせいだとし、「ウクライナが黒海の周辺に敷設した機雷を除去すれば問題は解決する」とウクライナに機雷の除去を要求。実際はロシアが軍事作戦を優位に進める口実である。
5、ロシアの戦闘員は大半が少数民族や地方出身者、ロシア系を温存し反戦気運を押さえる非ロシア人差別。
6、常任理事国であるロシアは北朝鮮の安保理違反制裁にも反対をする
すべての発想が「ロシアのため」の原点が動くことはない。「世界の平和のため」「人類を救う」等の発想はもちろん皆無、法も条約も必要であれば無視、または一方的に破棄。
ロシア国債の利払いも、ドル建てが条件だが金融制裁で金が自由に動かせないとなれば、「ルーブルで払う」と突如変更する。その臨機応変の対応には驚くばかりだが、法も条約もプーチンの前では用をなさない。それがロシアであるということをここで改めて認識をしなければならない。
日露漁業交渉が一方的に中断したのも、誰に配慮することもなく、ロシアの都合がすべてなのである。
日本は、日本人は、対ロシア発想を根本から考えを改める必要がある。条約も約束もその場限りのまぼろしにすぎない。ロシアとの事業も「明日破棄されるかもしれない」という心構えが必要で、他の国との違いを改めて心に刻みたい。
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