“ 安倍国葬 ”  仏になりてなお影響力

日本,雑記

Vol.3-10.3-993   “ 安倍国葬 ”  仏になりてなお影響力

2022.10.03

安倍元総理の国葬が終わって明日で一週間になる。

昨日、NHK日曜討論でもその是非を問う声が野党を中心に収まる気配がない。そんな中、弁護士であり元東京地検特捜部検事・髙井康行氏の「安倍氏『国葬』真の意味」と題した寄稿文が掲載されていた。実に分かりやすい論説記事であった。

その要旨を紹介する。

「・・・日本が有事に見舞われるようなことがあればその指導力は欠くことができないとする声があった。また、安倍首相が主唱した『自由で開かれたインド太平洋』という概念は、今や欧米も採用する概念となった。かつてこのようなことはなかった。」

「非業の死は世界にも大きな衝撃を与え、各国首脳からもその死を悼む痛切な声が寄せられたが、安倍氏亡き後の日本の行方に対する深い憂慮である。その安倍元首相の葬送の形はどうあるべきだったか。私は国葬以外になかったと思う。」と述べ、

政治家と民主主義、国葬への反対論、報道のありかた、宗教法人の取り扱い、ひいては死者に対する向き合い方まで広く論じているが実に分かりやすい。

「民主主義社会の選挙において、演説する者は誰であっても、どんな政策であっても、身の危険を感じることなく自由に有権者に訴えかけることができなければならない」

「その意味で、たとえ、その動機が非政治的なものであったとしても、遊説中の政治家の命を狙うものは民主主義の敵である。そのような者から、政治家の命を守るのは国の義務である。」

◆「古来、葬送の儀式は死者の魂を鎮めるという側面を持つ。・・・日本の安全を盤石なものにしようと尽力しながら志半ばで国の不手際により非業に斃れた安倍元首相の無念を思うと、その荒ぶる魂を鎮めるためには国が国葬をもって弔う以外になかったと考える。各国の首脳あるいは要人から弔問を受ける場としても国葬が相応しかった」と、国葬の意義をまず述べた。

◆国葬反対論に対して
①内実において内閣葬に過ぎないと言う指摘に
「格式において国葬であることが意味がある」
②国葬を定めた法令がない
「国葬にするしないは行政権に属する。行政権には幅広い裁量が認められており、すべての具体的な行政行為に具体的根拠法令があるわけでない。」
「新たに義務を課したりする場合には法律の根拠が必要だが、国葬は権利を制限したり新たな義務を課したりするものではない。したがって、閣議決定によって国葬を執り行ったことは、何ら、憲法その他の法令に反するものではない」
③強制について
「政府から通知を受けた著名人(宮本亞門)が案内状をネットに載せて欠席を公言したこともあったが、その一事を見ても、弔意が強制されていなかったことが明らか」
「仮に、国民に対し、当日、一定の時刻に、一定の時間一斉に黙祷を要請したとしても、それが任意を前提にする限り、弔意を強制したことにはならない。そのような要請もなかった」として、いずれの反対論も説得力に欠けていた。と断じた。

◆旧統一教会について
「容疑者は旧統一教会に恨みを抱き、安倍元首相が関連組織にビデオメッセージを知り銃撃したと供述した。これを機にマスコミ、論者は非難の矛先を一斉に旧統一教会、僅かでも接点をもった政治家に向けるようになった。容疑者の目的は達成されたことになる。」

「旧統一教会の霊感商法、心理的に追い込まれた結果の多額の献金、それによる困窮者には救いの手を差し伸べる必要がある。」

「ただ、合法的に認められた宗教法人をあたかも反社会的な組織であるかのような扱い、これを排除しようとすることは、裁判を経ないで人を罰するに等しい。」

「一部マスコミの論調は、信徒に対する差別を生み、テロリストに報酬を与えるも同然、このようなことが起きれば第二、第三の同種のテロが起きる」と警告した。

「日本では古来、敵であっても死者となった時は、その魂を崇めその安らかならんことを祈るのが風習あるいは礼儀である。」とし、立憲民主が欠席する中、野田佳彦元首相の出席に敬意を表した。

「国葬に対しての一部の批判は今も絶えない。しかし、政治家の評価は最終的には歴史が決めることであり、同時代人である我々の評価で定まるものではない」と論考を閉じている。

外国では首相、大統領経験者を慣習として国葬にする国がある。日本は日本のやり方があっていい。ただ、死者への向き合い方など、日本の精神文化は独自のものである。古来から大事にしてきた死者への向き合い方は大事にしたい。

たとえ極悪非道な人間の死であっても、気持ちとは別、仏になった遺体は大切に扱うのが日本流。決して「死者に鞭打つ」ことを是としない風習がある。

今回の説得力に欠ける国葬反対論、一部の人間にとっては、仏となって仏になく、死してなお生身の人間であるかのごとく影響力を与え続けているということか。

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Posted by 秀木石