国連ウイグル報告に無言の日本

世界,日本,雑記

Vol.3-10.6-996   ウイグル報告書に無言の日本

2022.10.06

持続可能な開発目標(SDGs)が国連で定められたのが2015年である。

つい最近までの動きは鈍かった。しかし2020年のSDGs推進のための具体的対策法を取りまとめた「SDGsアクションプラン2020」を決定してから、ここ1、2年は来る日も来る日もSDGs、何事かと思うほどである。

それに比し、まったく動きがないのが “ ウイグルの人権問題 ” である。国連人権高等弁務官事務所が決死の覚悟で発表した『ウイグルの人権問題に関する報告書』。日本の隣で起きている人権問題。決して無縁ではないはずだが、SDGsに熱狂?するメディアとは対照的にあまりにも静かである。

臨時国会が始まった。旧統一教会の1/10でもこのウイグル弾圧に対する政府の見て見ぬふりを、野党は鋭く追及してほしい。与党も親中派が80%といるというジャーナリストもいる。真の友人であれば、誰からも愛される友人であってほしくないのか。苦言を呈してこそ真の友人であろう。中国近しと言えど精神構造は欧米に近い。忖度は不要と思った方がいい。

日本ウイグル協会副会長・アフメット・レテプ氏は正論11月号で「これでも日本は動かないのか」と、国連ウイグル人権問題報告書の発表に、日本の動きの鈍さに失望を示した。

2022年8月31日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)がウイグルの人権問題に関する包括的な報告書を発表した。このニュースは新聞でも伝えられ、広く知られているが、公表前に中国が必死になって圧力をかけてきた。

高等弁務官であるバチェレ氏は「とてつもなく大きな圧力をかけてきた」というくらいだから、それこそ生死をかけた発表といっても過言ではないであろう。

バチェレ氏は止む得ず、国連を去る数分前まで公表を控えた。国連としては8か月間も公表できなかったことは屈辱的なことである。

報告書は、中国が主張するウクライナで行っている ① テロや過激思想対策 ② 職業技能訓練センターと称するものの検証をしている。

実際は、中国の主張とは無関係、大規模な無差別拘束や強制収容、想像を絶する監視された刑務所であった。

中国が人権侵害を否定するなら、報告書の公表に怯むことなど必要ないはずだ。人権侵害の実情を覆い隠す意図があることは人権侵害が紛れもなく存在していることを意味している。

報告書には、収容者たちが、いかなる法的権利も剥奪され、非人道的扱いを受け、母語や信仰が否定され、性的暴行を含む肉体的・精神的拷問や虐待を受けたことが、詳細な事例をもって書かれている。

「中国は、ウイグルの強制労働の疑いに『完全にでっち上げ』と繰り返し主張してきた。本当にそうなら、堂々と独立調査を許可すべきである。」というレテプ氏の指摘はその通りである。

アメリカの偉いところは、「台湾関係法」などもそうだが、「ウイグル強制労働防止法」や、二次制裁を科す「奴隷労働支援者制裁法案」など、主体的に動き、成立させる行動力は立派というほかない。

ただ、アフメット・レテプ氏はこの報告書の不足部分も指摘している。

その一つに、ウイグル人社会で大きな発信力や経済力のある著名な知識人や経済人がここ数年で一斉に姿を消したことの言及が少ないことだ。

その中に、新疆大学の学長、タシポラット・ティップ教授が行方不明になったことだ。東京理科大学で博士号を取り、国家重点大学の新疆大学の学長を10年以上勤めた。2017年5月、突然収容され、それ以降の消息が不明となった。収容直前まで立正大学や九州大学等の研究者らと長年共同研究を続けてきた著名な学者である。

中国当局は「汚職の罪で調査中」としていたが、今年5月に流出した内部資料「新疆公安ファイル」で、タシポラット教授は政治犯として処分されたことが確認できたというのだ。

このことについて、日本の学術界がウイグル・ジェノサイドに「抗議の声を何故上げない」とアフメット・レテプ氏は疑問を呈し、残念であると嘆くのである。

まさにその通りだ。日本で共に研究してきた仲間ではないか。中国と聞いて尻込みする。何という気概のない日本学術界であることよ。日本学術会議が中国べったりはわかっていたが、ここまで堕落しているとは思いもしなかった。

この報告書を受けて、米国は「中国がウイグル人に続けているジェノサイドや人道に反する罪への米国の懸念をさらに深め、再確認するものだ」と報告書を評価し、そして、国際社会と連携して責任を追及していくと強調した。

カナダ、イギリス、フランス、ドイツの各政府も報告書を支持する声明を発表した。そして日本は、報告書を評価したものの、それから一歩も前に出ない。この政府の軟弱な動きこそ、野党が声を大にして政府を追求すべき問題ではないのか。

統一教会、国葬の経費の問題を遥かに超える人道、人権に関する大きな問題である。この時こそ、野党の皆さんの大きな声で政府を追求してこそ、政権を担える第二政党として世界に認識されるのではないか。

国内の些末?な問題だけに固執していれば永遠に政権は取れない。
パフォーマンスではない。安倍元首相が “ 自由で開かれたインド太平洋構想 ” で世界をリードした如く、人権問題で世界をリードするぐらいの気概を見せたらどうか。

それはさておき、日本は国連人権高等弁務官事務所が発表した「ウイグル人権問題報告書」をどこまで、無視し続けるもりであろうか。

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