2022年7月8日 11時31分の記憶
Vol.3-11.13-1034 2022年7月8日 11時31分の記憶
2022.11.13
「2022年7月8日11時31分、奈良県奈良市の近鉄大和西大寺駅北口付近」安倍元総理大臣は選挙演説中にテロリストの銃弾に倒れた。
2022年度の最も衝撃的な事件だった。
本事件について警護計画の不十分な対応や現場の警護員間の意思疎通の不徹底など複合的要因があったとする検証の結果を受け、「中村格・警察庁長官が引責辞任 櫻澤健一警備局長辞任 奈良県警・鬼塚友章本部長辞職」。
警察庁長官が個別の事件で引責辞任することは極めて異例、過去に例がなく、銃撃によって首相経験者が死亡するという重大な結果を重く見たものである。
すでに安倍氏は現役の首相ではなかったが、多くの人が弔問に現場に花を手向けた。海外からも異例と言われるほど数多くの弔意が寄せられ、その死を悼んだ。
国家は安倍氏の功績に報いるべく国葬義にて弔うことを決定した。
そんな経緯のある元首相の暗殺は歴史に残る衝撃事件であり、国としても決して忘れる事の出来ない事件となった。
その現場に「慰霊碑」設置などの話が持ち上がった。
しかし、国葬義にさえ異論を唱えた野党。さらに、旧統一教会と安倍氏の関係などを疑問視する声が拡散、世間の声に中川市長の心は揺れた。
事件後間もない日の
◆ 7月19日 市長は「歴史的な事件で、何らかの形で人々の記憶にとどめておく必要がある」と述べている
◆ 7月31日 までに市に寄せられた意見は、賛成18件、反対17件と拮抗
その後、旧統一教会と政治家の関係、及び国葬をめぐる批判の声が上がり始め
◆ 9月30日までには、賛成51件、反対91件と反対が大きく上回った
これらの市民の動きから仲川市長は「記録を残すと、世論の分断を生んでしまう」とし
◆ 10月4日 慰霊碑などの記録を一切残さない方針を示すに至る
この、流れを見てみると市長の意思は事件後の談話に示されただけである。仲川市長はこの事件を、「8年8カ月の長期政権を支えた日本の元首相」という視点を離れ、市民の意見の動向をより重視したと読み取れる。
市民の意見には
「事件を思い出したくない」「税金をつかうべきではない」などの意見があった。
しかし、そのような理由だけで事故現場に何も残さないと判断したとしたら奈良市の市政を任された市長の意思など無いに等しい。ポピュリズムの最たるものだ。
「民主主義の根幹を揺るがす重大な事件であった」との認識と、奈良市民だけに止まらず、世界が示した弔意、国葬までに至った国の思い、全国民の思い、さらには8年以上に及ぶ長期政権を担った元首相であった功績等にも考えが至れば、奈良市民だけの声だけを重視した決断経緯にいささか疑問を抱く。
銃撃された現場が奈良市が今年度中に広場や道路を整備しようと作業を進めていたエリアであったことを考えると、有識者や近隣住民など意見を十分に聞きくことは当然だろう。
仲川市長は「1人の政治家の評価には賛成も反対もある。この場所は多くの市民が利用する場所で、毎日通る人の思いを考えたときに事件から目を背けたい人の気持ちに配慮する必要があると思った」と述べた。
そのうえで、「事件が起きたのは事実だが、憩いの場として活性化させ事件をのりこえたい」と今後の希望を語った。市民の憩いのためにあえて事件を忘れようとすることが真の愛情だろうか。
<現場近くでのさまざまな意見だ>
○「安倍さんだから騒ぐけれど、モニュメントはなくてもいい。街として発展するために道路として整備するほうがいい」
○「気の毒だがあえて作らなくていいのではないか。買い物に来るたびに思い出してしまう。凄惨な事件だったので、きれいにしたほうがいいと思う」
○「車道にしてもいいが大きな事件だったので何か残してもいいと思う」
○「道の真ん中で邪魔になってはいけないので別の場所に慰霊碑などをつくればよかったんじゃないかと思う」
事件現場は、奈良市が平成24年度からおよそ62億円かけて、広場や道路を整備しようと作業を進めていたエリアの一角にあたり、工事は今年度中に終えることになっていた。
そのさなかの事件で悩むのは当然ではある。
しかし、「政治家・仲川元庸」の意見が一切出ていない。それでいいのか。
「この事件が社会にどう影響を与えるのかや歴史的にどう位置づけられるのかまだ定まっていない。何が正解か100点満点の答えがない中での判断を求められているという意味で私自身もこの問題については正直悩んでいるところがある」という。
であれば、悩み抜いた末の市長としての意見を素直に市民に伝えるべきである。
まずは自分の意見として
「選挙演説中に元総理が銃撃に倒れるということは、民主主義への挑戦であり決して許すことのできない前代未聞の事件であります。これは奈良市としても国家的視点でもってその責任を果たす必要あると考えます。従いまして、いろいろなご意見を聞かせていただきましたが、現場には『印』だけでも歴史に残す義務がると考えます」とまず、市政を任された責任者の意見を奈良市民に問いかけなければならない。その上で市民の意見を聞くべきではなかったかと思う。
市民の声を聞く限り、深く考えるチャンスを言葉として伝えなかった市長の責任は重いと感ずる。
そうでなければタダの御用聞き、ポピュリズム政治の最たるものではないか。
仲川市長が「慰霊碑などの記録を一切残さない」と発表した10月4日以降、慰霊碑賛成の意見が増え
◆ 10月31日までで、賛成が510件、反対が176件となった。
仲川市長はまた市民の意見を尊重し、方針を変えるのであろうか。
ここから、見えてくるのは『日本国のため』や『奈良市民のため』ではなく、『次回の選挙の自らの票のため』という思惑である。
まだ、湯気が立ち昇っている葉梨元法務大臣、「外務省と法務省は票とお金に縁がない・・・」の姿とダブッてしまう情けない政治屋の姿である。
政治家として「背に一本通る棒のようなもの」はないのか。改めて問いたい。
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