建国100年に照準・中国の世界戦略
Vol.4-7.9.1129 建国100年に照準・中国の世界戦略
2023-07-09
自由主義陣営に対抗するロシアに中国。ウクライナ侵略で国力を消耗するロシアを尻目に着々と勢力圏を拡大しつつある中国。
ロシアにとって、中国は対等の共産国家との認識があろうが、すでに経済では遠く及ばず、残すは軍事力での優位性しかない。今は中国の力なくして生きられない。
今配備されている世界の核弾頭の数は、アメリカが1744、ロシアが1588(国際平和拠点・ひろしま)である。中国は350にすぎないが、2030年代には1500を超すと予想する。
米国防総省の報告書によれば、バイデン米政権は中国に核軍縮の協議を働きかけた。しかし中国は米国やロシアに核戦力が劣ることを理由に拒否。国防総省高官は記者団に「中国がこれまでの立場を主張すれば疑問が生じる」と語り、戦力差は確実に無くなると予想。
中国は軍事力において米国を凌げば、何も怖いのもはない。聞く耳を持たない中国は独裁国家である。経済+軍事力、米本土を射程に入れる核戦力を拡充し、軍事力共に世界一を目指すことに一切の躊躇がない。
戦略的盟友?であるロシアはもはや世界制覇の一つの駒でしかない。
SSDP安全保障・外交政策研究会/川島 真氏によれば、
「中国は新興国や開発途上国の支持を獲得し、その代表として先進国に対峙することを想定している。
ウクライナ戦争が長期化する中で、『中露という専制国家vs民主主義陣営という構図』を前提とした議論が多く見られる。しかし、中国としてはそのような構図ではなく、『(中国が主導する)開発途上国+新興国vs(アメリカの主導する)先進国』というものだ。これはウクライナ戦争を通じて形成された考え方ではなく、習近平政権の既定方針と言ってもいい。
先進国を時代遅れの存在と見做して、先進国の主導する秩序では現在の一連の問題を解決できないと批判し、アメリカを中心とする安全保障ネットワークにも、アメリカなど先進国が主導する自由や民主主義などの価値にも反対するが、ただ国際連合や(中国の解釈の下での)国際法は受け入れる、というものである 。
中国は、途上国、そして新興国の代表として振る舞い、先進国に対峙していくという自画像、そして将来を描いている。ロシアは、中国にとり最も重要なパートナーシップ関係であるが、あくまで新興国の一つである。
ロシアは、新興国の一つであるとともに最高位のパートナーシップ国でもある。だが、中国にとっての大きな構図としてはロシア、あるいは中露が中心というわけではない。まして、中国には1980年代初頭以来、独立自主の(外交)原則を採用しており、同盟国は持たないことにしている。ロシアは中国の同盟国ではないのである。
中国はどのような自画像、将来像を描いているのだろうか。それを最も端的に示しているのが2017年の第19回党大会における習近平の3時間半に及ぶ演説だ。ここで習は、以後、アメリカに挑戦していき、中華人民共和国成立100周年にあたる2049年に「中華民族の偉大なる復興の夢」を実現するなど、長期目標を設定した。
ここで重要なことは、アメリカとの「冷戦的な」全面衝突を想定しているというわけではないことだ。アメリカの安保ネットワークや西側の価値観に反発するものの、それは全面対決ではない。だからこそ、国連を重視し、その国連憲章を実現するものとしての新型国際関係、そしてその新型国際関係を体現するものとして一帯一路を推進する、としているのである 。
国連重視、あるいはたとえ中国の理解に即するものであっても国際法重視などと言っているのは、アメリカなど先進国との「のりしろ」を残しているということである。そして、長期的な競争を、経済面、軍事面などで行なっていき、最終的に2049年にはその競争に勝ち抜くというのが中国の世界観だ」
以上要点を抜粋したが、面白いのは、自らを新興国といい、ロシアもグローバルサウスと同じように新興国とみなし、その代表として自覚しているところが面白い。新興国とするこで得られる利益は頂こうという魂胆である。
あるいは「アメリカとの『冷戦的な』全面衝突を想定していない」とし、その証拠に「国連を重視し、その国連憲章を実現するものとしての新型国際関係、そしてその新型国際関係を体現するものとして一帯一路を推進する」とは実に身勝手な言い分である。国連の機能マヒは常任理事国である中国とロシアの妨害である。国際司法裁判の判決無視など国連憲章を踏みにじるのは屁のカッパ、よくもシャーシャーと言えたものだ。さらに、中国建国100年になる2049年には経済・軍事面で世界一を目指す。それは、あくまでも “ 正当な競争の結果 ” と言わんばかりの世界観だ。
2022年世界のGDP
順位 | 国名 | 単位(百万US$) |
1位 | アメリカ合衆国 | 25,346,805 |
2位 | 中国 | 19,911,593 |
3位 | 日本 | 4,912,147 |
11位 | ロシア連邦 | 1,829,050 |
ロシアは何と中国の1/10以下だ。
このように世界のGDPを見れば、ここ数年の中国経済の停滞はあるものの、世界一は決して夢物語ではない。
グローバルサウスとして支援する親密国の経済成長率は中国を凌ぐ国がいくつもある。多いのはアフリカ諸国で、ザンビア、タンザニア、エジプト、エチオピア、マリ、ケニア、ナミビア、ジンバブエだ。
最近ではニュージーランド(NZ)のヒプキンス首相が経済の低迷、洪水被害、物価高等を抱え、経済的苦境を脱する突破口として中国傾斜を強めている。
“ 背に腹は代えられぬ ” ということだろう。
「中国がどのような政治体制をとるかは中国国民の問題だ」とし、バイデン大統領が習近平氏を「独裁者」と呼んだことに同意しない意向を示した。習氏は即座にヒプキンス首相を「非常に称賛する」と持ち上げ絶賛。
さらに、フランス国防省の軍事学校戦略研究所は2021年の報告書で、中国の狙いが「潜在的な敵」の弱体化にありと分析、独立の動きがある仏領ニューカレドニアと沖縄を代表例にあげ、中国が接近しているという。
えっ、沖縄?と驚くが、つい最近も琉球として、もともと中国領だったようなニュアンスで報じていたが、中国の狙いは尖閣諸島だけでなく沖縄本島が視野に入っている。
沖縄住民には米軍基地への反発も強く、政府への反感もある。さらに「玉城デニー知事の当選はその表れ」と認識しており、中国が<独立派?>住民を招いて中国人研究者と交流させたりしているという。
なかなかの分析である。
そんな中つい先日も、日本国際貿易促進協会・河野洋平会長と訪中した玉城知事。この時期何の用事があって中国を訪問したのか理由が不明である。中国の李強首相をこの二人が見つめる目、顔は、遠距離恋愛中の恋人が久しぶりに会えたかと思うほど完全無警戒、“ あなたの思うままよ ” との表情は新聞に掲載された3人の写真が如実にもの語っている。
尖閣諸島への度重なる領海侵入に抗議の一言も言えず、ただひれ伏すとは、朝貢外交そのもの、果たして日本の政治家であろうか。まさか玉城知事、沖縄を中国領になることを願ってはいまいかと心配である。
太平洋の島国を経済力にものを言わせ着々と籠絡、南米から北上、本丸米国に近づきつつある。
7月4日のニュース(産経新聞)によれば、キューバに情報収集施設(スパイ施設)を設置したとある。
1962年、ソ連がキューバへの核配備を察知した米国が海上封鎖し、米ソが対峙した『キューバ危機』ではないが米国に緊張感が走った。米国の裏庭だけに中国の脅威を見過ごすわけにはいかない。
大胆かつ着実に世界制覇の布石は独裁国家らしく “ 決定は即実行 不徹底は我々の敵 ” とばかりにあらゆる可能性に食指をのばしアメーバのごとく張り巡らしつつある。
評論家・石平氏によれば、2020年7月に習主席は『国内大循環』という新戦略を講和の中で打ち出したという。つまり、中国が戦争に突入して諸外国から経済制裁などで世界経済と遮断された場合、国民経済は「国内大循環」つまり、国内で生産・消費の循環システムを作り上げ「正常な運営」を保つというのだ。
5月30日に、中国共産党は「国家安全保障会議」を開き、国家安全情勢について「現在、われわれが直面する国家安全問題は複雑で重大である。これから、波高く風雲急な局面、もしくは驚濤駭浪の局面を迎えなければならない。と演説をぶったようだが、すでに戦争を視野に入れていると見られる。
(驚濤駭浪 ①逆巻く大波 ②危険で恐ろしい状態)
14億を人間の盾として何とも思わない人間である。着々と世界制覇の道に一直線である。
◇ 香港国家安全維持法により、香港も完全に中国化した。今や議会は完全に親中派、デモの “ デ ” でも発するものならすぐに逮捕である。うるさい民主派主導者はすべて牢屋に入れた。娑婆の空気を吸うには、習総書記の前にひれ伏し、親中派の烙印を額に受けなければならない。
◇ 7月1日には対象行為が極めてあいまいな『改正スパイ法』も施行した。気に食わないものは内外を問わず誰でも逮捕できる。
◇ 世界中に隠れた警察を配備、中国人を管理し、世界中に散らばる華僑は北京直通のアンテナである。
◇ 東シナ海、南シナ海には徹底して軍事力を誇示。残るは太平洋だ。
恐いものはもう何もない。あるとすればただ一つ、ワグネルではないが、国内の反乱だけである。
果たして民主主義陣営は勝てるのか。ウクライナの国民のごとく、「勝つ事しかない」の一つに団結できるのか。欧州も一枚岩ではない。インドの全方位戦略、トルコの動き、フランスのマクロン大統領は「NATO日本事務所開設に反対」を表明した。
日本の役割はアジアの牽引だけにはとどまらない。日本が世界平和にかける独自戦略と覚悟が問われる時代である。
そんな中、昨日は安倍元総理の一周忌が東京・増上寺で営まれた。
改めて日本を見れば、中枢、地方を含めて人材不足、政治家の堕落には憂いしかない。
安倍総理が唱えた “ 日本をとり戻す ” その意味を何人の政治家が理解し、そのために命を懸ける人間がいるのか、実に心もとない。
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