脱炭素の危険

世界,日本,雑記

Vol.2-6.26-529   脱炭素の危険
2021.6.26

今年4月、菅総理は
「我が国は2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します」と宣言した。

米国も50%、欧州もおおむね半減するとしている。
ところが、世界の30%の二酸化炭素を排出する中国やインドは目標を明示していない。

これでは地球規模で考えた場合、全く解決しないではないか。

ところが昨年9月、中国は、世界193ヶ国の首脳が参加する国連総会で「2060年に二酸化炭素排出を実質ゼロ」とすることを宣言したのだ。

笑ってしまう。日本を始め、欧米諸国は2030年までに半減するというのに、その後30年後にゼロにするというのである。それまでいくら出そうが何も言われない。それどころか、2030年までは今よりもCO2を10%増やすというのだ。都合のいい話だ。

欧米諸国が、脱炭素のために莫大な費用をかけて二酸化炭素を削減している間に、自国の製造業をできる限り大きく育て、脱炭素に必要なる、蓄電池の製造技術やEV社会の実現に必要な製造技術の確立しようというのだ。

各国が石炭などの火力発電を抑え自然エネルギーにコストを払う中、中国は事実上CO2に束縛されず原発エネルギーを使いながら、電気自動車に力を集中、サプライチェーンを含めた市場独占を目論む。

中国の原発は現在48基あり、米国、フランスに次いで世界第三位にある。それをこれから10年で倍に増やそうという計画である。

日本では最もコストが安くCO2を出さない原発はいらないとする国民の声?に押され、現在ある原発36基の内、動いているのは9基、11基が審査中。その他も仮処分を受けたりいろんな事情で動いていない。将来は廃炉の方向である。

中国とは真逆の原発事情がある。そのお蔭で自然を破壊しながら高い自然エネルギーにシフト、現存の火力に頼る構造である。したがって、国民はその高いエネルギーのために費用を電気料金に上乗せして支払わされている。

菅総理が約束した2030年の脱炭素目標は原発を利用しなければ誰の目から見ても達成不可能である。しかし、その目標はオリンピックで金メダルをとる目標と同じで、万が一目標が達せられなくても、ペナルティがあるわけではない。

脱炭素は中国を利するだけと「正論7月号」でキャノングローバル戦略研究所主幹・杉山大志や産業遺産情報センター所長・加藤康子氏は訴えている。

中国は欧米社会が脱炭素にエネルギーを費やしている間。電気自動車に特化する。EVの流れは中国とって好都合、宝の山なのである。すでに安い中国EV車に目をつけた佐川急便などはEV車7200台を採用するような話が進んでいる。

中国は脱炭素社会を見込んでEV市場の独占をはかる戦略である。蓄電池技術をあわせて特化しEV市場のサプライチェーンも独占する勢いである。

日本は高いコストで脱炭素に励みながら、結果として中国の産業を支援している構図になっている。野党を中心とした原発の廃止、自然エネルギー賛歌の大合唱で、日本の田畑や山、新しく立つ家はみんな屋根に太陽光発電をつけるという、バカな構想を語る政治家がいる。

原発を危険とあおり、コストを国民に払わせ、やっていることはすべて中国を利する方向に進んでいる。いずれ、中国の属国として歩むつもりか。

日本の内燃機関の技術、エンジンやトランスミッションは世界一の技術を持っているが、急速なEV推進で、その産業はすたれ、いずれ中国のEVに呑み込まれていくことになる。

EVに必要なバッテリーの材料のコバルトやレアアースは中国に抑えられている。日本の自動車産業は中国に心臓部を牛耳られる可能性がある。

大メディアは、脱炭素を実行した場合のコストや経済に与える影響について、一言も触れない。

脱炭素政策が雇用を奪い国力を減じることには触れず、あたかもこれが世界の潮流であることのように脱炭素礼讃ばかりである。

東日本大震災で受けた原発被害のショックは大きく、大東亜戦争敗戦時と同じように原発忌避精神を生んでしまった。

野党を含めた政治の責任はもちろんだが、洗脳されやすい日本人。メディアの罪も大きいと言わざるを得ない。

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