経済安全保障

日本,雑記

Vol.3-3.19-795   経済安全保障
2022.03.19

2010年9月7日、尖閣諸島沖で操業していた中国の漁船に対して日本の海上保安庁の巡視船が退去するように要求したところ、漁船が巡視船に体当たりする事件が起きた。海上保安庁は漁船の船長を公務執行妨害の疑いで逮捕し、検察に引き渡した。

当時の中国・温家宝首相は記者に対して「船長を即時・無条件で釈放すべきだ。そうしなければ中国はさらなる措置をとる」と声を荒げた。国際法違反を犯しておいてこの高飛車だ。

さらにその報復として、EV、ハイブリッド車には特に必要なレアアースの輸出停止という嫌がらせを仕掛けてきた。

まさに、経済安全保障が脅かされた最も至近な例だ。

相手が独裁国家となると論理で話が通じない。気に食わないければ経済的圧力を即仕掛けてくる。

ロシアによるウクライナ侵攻でも改めて浮き彫りになったのが、石油や天然ガス、レアメタルである。

この経済を保全するための「経済安全保障法案」がやっと衆議院で審議入りすることになった。しかし、案の定と言おうか立憲民主党が審議に入る前に、前内閣審議官・藤井敏彦氏の不適切な兼業や飲食で辞職した問題を、首相の任命責任として追及する構えを見せている。

まあ、野党として政府の姿勢を正すことは決して悪いとは言わないが、相手はすでに辞職している。この緊急時に審議が滞るとすれば、立憲の見識も問われよう。

ともあれ日本は、経済安全保障対策において欧米先進国と比しかなり遅れている。日本の安全保障全般に言えることは、国家の基本である国防において、事実上アメリカの保護国であるという意識が、限りなく希薄であるという絶望的な現状にあることだ。

平和は自然にどこからともなくやってくるような意識、よく言われる「平和ボケ」の極致にあるということだ。

今回やろうとする『経済安全保障推進法案の4本の柱』である。
1、供給網の確保(半導体、医薬品、蓄電池など)
・特定重要物資の指定 ・国に調査権限 ・生産基盤の整備などの支援

2、基幹インフラ設備の事前審査(電気、ガス、水道、鉄道、電気通信、金融、郵便など)
・国が重要設備の導入・維持管理を事前審査 ・応じない事業者に勧告・命令

3、先端技術開発(宇宙、海洋、量子、AI)
・官民による研究開発の協議会設置 ・協議会構成員に守秘義務 ・国が積極支援

4、特許の非公開(核や先進武器関連の技術)
・非公開化で機微な発明の流出防止

このようなことは欧米先進国ではすでに整備済である。この法案はかなり緊張感を必要とするものだ。企業に対する国の関与が強まる法案であるためリベラル派の強い抵抗がある。

しかし、外国の振る舞いで経済や暮らしが脅かされた時、半導体などの重要物資の供給網を確保したり、サイバー攻撃などに備えるためには、かなり企業内部を知っておく必要がある。そのために、企業内部を事前審査をするなど、官民が一体でやらなければ効果がないのだ。

さらに言えば、国家最高機密を扱うことになる関係上、「特定秘密」として扱われる部分に携わる人物は官民ともに厳格な適性評価が課され、守秘義務違反も厳しく罰せられる。

戦後の知識層は左傾化された日本学術会議のように、軍事との関わりを拒否する傾向が強い。したがって、軍民両用技術において高いレベルで官民連携はかなり高いハードルが予想される。

先進国と情報交換するにも官民とも厳格な機密性が担保されないことには先進諸国との情報交換すら出来ない。

今回のウクライナ問題で、日本と欧米諸国とは安全保障に対する向き合い方において、大人と子供ほどの違いを感じとった方も多いのではないか。

平和ボケで70年、この意識改革は並大抵ではない。何しろ、弁護士会、日本学術会議、大半のマスメディアは左傾である。

一例であるが、例えば、機密情報の取り扱い資格制度「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」だが、先端技術の研究開発で安保の機微に触れる政府情報を扱う場合には、民間人であっても過去の犯罪歴やテロ活動との関わり、薬物使用などを徹底的に調査されクリアしなければならない。

007さながらの人物チェックである。

米国などと円滑に共同研究するためにも導入が必要だが、どこまでも機密性の高い情報を官民で共有し、国家の安全保障を担うという “ 国家意識 ” が必要である。戦時ならともかく、平和に慣れきった官民がその緊張感をどう維持し、欧米に信用されるまでにレベルを上げられるかだ。

TVで果敢な行動をとったマリーナ・オフシャンニコワさんのように正義感に満ちた強い愛国心が持てるかが問われる。

“ 経済安全保障 ” は戦後から脱皮する第一歩になる。

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Posted by 秀木石