アサリはどこへ行った?
Vol.3-3.21-797 アサリはどこへ行った?
2022.03.21
ふた昔前「花はどこへいった」という歌があったが、アサリは本当にどこへいってしまったのか。
一昨日の新聞によれば、「産地偽装」を断ち切るため、『アサリの原産地表示ルールの厳格化を決定した』とある。
数ヶ月前だったか、TVで「アサリ偽装の実態?」なるものを放映していた記憶がある。うる覚えだが、薄暗い浜に中国産を撒いて、それを回収することによって日本産とするような内容だったと記憶するが、それだけ日本産が深刻な状況にあるということだ。
国産アサリの主要産地は北海道、愛知、熊本である。年間漁獲量は急減しており、直近の5年で半減したという。
現状はほとんどが輸入に頼る。それも中国が7割以上を占めている。輸入アサリでもいいように思うが、どうも中国産は人気がない。仕方なく偽装するというわけだ。
何故、中国産だと売れないのか?ということだが、記憶にある方も多かろうと思うが、2007年末から2008年にかけて中国産の冷凍餃子による中毒事件が起こった。連日テレビで報道されたので、“ 中国産は危ない ” が日本人の脳裏に焼き付いてしまった。
この事件から中国産は敬遠されるようになり、2008年頃からは中国産を国産に偽装するのが当たり前のようになって行くのだ。
しかし、アサリは海の幸だ、餃子と違って、簡単に悪さなどできないと思うが。そこは中国、段ボールをハンバーグに入れる国である。なかなか日本人に信用してもらえない。
案の定、2018年に中国産あさりから除草剤「プロメトリン」が検出される例が複数発生。その理由には驚かされる。「中国の養殖場では藻が繁殖するのを防ぐため、海に除草剤を撒くらしいんです。日本では考えられないことです」(豊洲市場関係者)<女性セブン2019年2月7日号>
なんということだ、中国は「危険食品生産国」のレッテルをみずからに貼ってしまった。
この最悪の事態に陥ってもなお、国内産の不足を中国に頼る以外なく、あの手この手で偽装が続けられてきたのだ。あるとき、農水省がDNA検査をしたところ熊本産のアサリの97%が中国・北朝鮮の系群だったことが明らかになった。罰則も効き目なく繰り返し偽装されてきたのだ。
そこで、今度こそと、ルールの厳格化に踏み切った。というわけである。
ルールの内容だが、
◆輸入アサリは輸出国を産地とし、国産表示できるのは1年半以上日本で育てた場合に限るとした。
まあ、守られることを祈るばかりだが、ところでなぜ、日本産は減ったのか?という疑問が残る。
勝川俊雄・東京海洋大学 准教授、によれば、
1、近年の急激なアサリ資源の減少には移入種による悪影響がある。本来は、外国産のアサリは日本の沿岸にばら撒くべきではない。移入されたアサリが回収すべき。畜養する場合には、自然界に流出しないように細心の注意を払う必要がある。
2、日本は、国産資源を大切にしてこなかった。場当たり的に獲れるだけ獲って、獲れなくなれば海外から代替品を引っ張ってくる。ウナギ、サバ、ホッケなど、多くの魚種で同じ事を繰り返してきた。
3、我々の食卓はすでに外国産の食材に依存しているが、消費者はその現実を知らない。そのままでは売れないので、産地を偽装する。
<何も知らない消費者>
水産の現場を少しでも知っていれば、国産のアサリが希少であり、スーパーで日常的に安く買えるはずが無いことはわかります。
アサリの産地偽装がこれまで繰り返されてきたことからわかるように、水産業界に自浄能力は期待できません。
まず、理解して欲しいのは、アサリに限らず、日本の漁業生産は減少の一途をたどっており、国産の良質な水産物をお手頃価格で安定供給していくのは難しいということです。
1990年代から直線的に減少をしてピーク時の3%を割るような状況であり、ほぼ消滅と言っても良いでしょう。当たり前のようにスーパーに国産あさりが並んでいるなどあり得ないことなのです。
日本全国で、アサリが消えてしまった理由は、良くわかっていません。
考えられる理由は
①干潟の埋め立ての影響
②漁獲、水質の悪化、エイによる捕食などの影響
③一般人の無許可採捕(密漁)も場所によっては無視できない。というわけだ。
う~ん、そういわれてもこの激減はピンとこないのが正直なところではないか。
勝川さんによれば、
「アサリの産地偽装の問題を突き詰めると、消費者は次のどちらかを選択することになります。」
①これまで通り、消費者の希望に合わせて産地偽装された虚構の世界に安住し、お値打ち価格の国産と表示された輸入アサリを食べ続ける
②不正表示を無くして、外国産のアサリしか選択肢がないという現実を理解した上で、アサリを食べるかどうかを考える
どうもスッキリしないが、私たち消費者は、中国産以外の選択肢が無くなっているという現実を理解する。その上でどうするか、ということのようだ。
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