比・マルコス新政権の行方

世界,日本,雑記

Vol.3-5.13-850  比・マルコス新政権の行方

2022.05.13

今年は大統領選挙の当たり年か。

セルビア、フランスに韓国、先日フィリピンの大統領選挙が終わった。秋には中国・習近平主席、恐怖の3期目を目指す中国党大会が待っている。

ところでフィリピン、大統領選でマルコス氏が2位に倍以上の差をつけて圧勝したのには驚いた。

マルコス氏といえば、今から36年前である。独裁政権での強権統治、多額の不正蓄財は国際的にも有名な話だ。

当時、民主化を求める活動家らを抑えるため戒厳令を布告し弾圧。多くの国民が殺害された。

しかし、その後、国民の圧力で退陣に追い込まれ、最後はハワイへ亡命せざるを得なかった。巨額の不正蓄財につき、最高裁判所は「推計50億~100億ドル」と認定。公金で名画を約300点収集など、やりたい放題の不正は世界を驚かせた。

日本でも、テレビのワイドショーだったと思うが、妻のイメルダ夫人が3000足もの靴を所有していた映像を見たような記憶がある。

その長男である、フェルディナンド・マルコス・ジュニア(F・M・ジュニア)氏が圧勝したのである。

当時を知る人は皆、高齢者である。50歳以下の国民はマルコス政治をほとんど知らないのであろう。マルコス政治復活に警鐘をならす声はF・M・ジュニア氏支援の若者の声にかき消された。

F・M・ジュニア氏はSNSで父マルコス一族の不信感払拭を目指し、父の統治時代は経済的に公平で社会の規律が保たれた「黄金期」だったと美化した。あるいは民主派弾圧と膨れ上がった対外債務や不正蓄財などはフェイクニュースと切り捨て、過去を修正する手法で民衆を洗脳していった。

国民の間には、独裁者・マルコス氏を追い出し自由民主主義がやってきたのは良かった。だが、徐々に貧富の差が激しくなり不満が積もり積もったところにF・M・ジュニア氏の巧みなSNSを利用した情報発信が若者の心をつかんだ。

前マルコスの独裁を知らない若者は、人気の現大統領ドゥテルテ氏の長女を副大統領候補とし、かつドゥテルテ政権の路線踏襲を表明したF・M・ジュニアに期待したのだろう。

対抗馬として立候補した副大統領・ロブレド氏はドゥテルテ氏の強権的政治手法に反対を表明、副大統領の実務経験をPRしたが及ばなかった。

F・M・ジュニア氏は今も人気のあるドゥテルテ氏路線を踏襲、ドゥテルテ氏の長女を副大統領を取り込むことで、大きなうねりを演出、大量の票につなげたといえる。

ただ、心配なのは経済的利益を優先するあまり、中国との融和政策をとる可能性があることだ。

フィリピンは2016年、中国の一方的な領有権主張に国連の仲裁裁判所に提訴した過去がある。幸いにしてフィリピンの主張が認められ中国は敗訴した。

しかし、その後フィリピンが裁判所の決定に則して行動を行ったと言う話は聞かない。

裁判でお墨付きをもらったものの、経済的利益を優先し、中国に対し鋒を収めているのがフィリピンの現状である。

「自由で開かれたインド太平洋」の実現は国際社会の共通の課題になりつつある中、中国に対し力による現状変更への断固たる反対意思が示せるのか、最も懸念されるところだ。

中国の一対一路政策で多くの発展途上国が債務地獄に陥ったように、いつの間にか中国の手中に落ち、中国・フィリピン州となるような事態にならないよう祈るばかりだ。それと共に独裁・マルコス王朝の復活もフィリピン国民は望んでいないであろう。

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