「まやかしの平和」を目論んだ黒幕

世界,日本,雑記

つきVol.3-5.29-866   「まやかしの平和」を目論んだ黒幕

2022.05.29

キッシンジャー米元国務長官。この男、個人的にはどうも好きになれない。信用できないのだ。外交官というよりも商人根性があからさまで国家観希薄が透けて見える。

この期に及んで ♯~よせばいいのに~♭ ではないが、
ウクライナ戦争について『(2月24日の)ロシアの侵攻開始前の状況』を両国の国境とすることが望ましいと発言。ウクライナ側にクリミア半島や東部の親露派支配地域の奪還を事実上あきらめるよう提案した。

当然のごとくゼレンスキー大統領は「そこに住む一般市民のことを何も考えていない」と激怒した。

ゼレンスキー大統領のミハイロ・ボドリャク顧問は「(ロシアによる)ポーランド、あるいはリトアニアの奪取も許すのだろう」と厳しく非難した。またロシア国営通信社のRIAノーボスチも「ウクライナが少しでもロシアに領土を割譲するような和平はありえない」との見通しを述べている。

発言当日、アメリカのオースティン国防相は「われわれとしては、ウクライナ国民が自らの目標を確実に達成できるよう、あらゆる支援を行うという方針を貫くつもりだ」「結局のところ、これがどうなるのか、終結状態がどのようなものになるかは、ウクライナ国民によって決められるものであり、われわれが決めることではない」と記者会見で述べた。

ゼレンスキー大統領は翌25日の動画メッセージで、ロシアによる民間人への攻撃・虐殺や都市の破壊、そして避難民を選別キャンプで選別し、殺害や拷問を行っていることをあげたうえで、「キッシンジャー氏のカレンダーは2022年ではなく1938年のままであり、ダボスではなく当時のミュンヘンの聴衆に向け話をしていると考えているようだ」とキッシンジャーがナチスドイツの迫害を受けてアメリカに移住したことにも触れていた。

福井県立大学の島田洋一教授は「キッシンジャー氏の発言は人権や侵略的な体質などモラルを度外視し、邪悪な勢力とも共存して、現状維持的な安定を図る『勢力均衡』の発想に立つものだ。中国を含め、事実上の占拠などで既成事実を積み重ねる侵略者を許すことにつながりかねない」と指摘した。

それにしても99歳にしてダボス会議にオンラインで出席しようというのだから凄い。しかし、国家観なき男の無理解と軸足のズレは混乱を招いただけである。

51年前の米中首脳会談をお膳立てし、米中平和条約にこぎつけたあの日の夢をもう一度とでも考えたのであろうか、老兵・キッシンジャー氏の発言は老害でしかなかった。

昔は、敏腕の外交官というイメージを抱いていたが、ソ連にしても中国にしても何とかまとめようという妥協案を立案し周到に事を進める。そこには商人的感覚であり国家の血を感じない、 “ 取引 ” という外交成果だけである。

日本嫌いでもあった。キッシンジャー氏の大きな功績の一つは、米中平和条約締結である。20年に及び冷え込んでいた中国と平和条約を締結し、ソ連を牽制しながら、米・中・ソを安定した関係にもっていった手腕が高く評価された。

しかし、米国と同盟を結んでいた日本に一切説明なく極秘裏に中国へ降りっ立ったキッシンジャー、日本へ連絡は到着10分前だったという。

日本はその半年後の9月、日中平和条約を結ぶのだが、キッシンジャーがつけた道筋、それは台湾と絶交 “ 一つの中国 ” を認めることだった。

そのお蔭で中国は堂々と台湾を中国の領土と主張するようになった。日本は台湾と親しい関係でありながら国際上の国交はない。台湾はWTOすら加盟できず、コロナでも苦しい対応をせまられた。

キッシンジャー氏は、米国と中国の国交正常化の道を開いた。しかし、米国が「関与政策」を続けた結果、思惑とは逆に、経済、軍事の両面で最大の脅威にまで育てた。

台湾問題も米中共同宣言の中の1つに「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」との中国の主張を米側が認識したことでも世界は苦しんでいる。

損益を通算すればプラス・マイナスの評価はかなり難しい。

日本にもよく似た政治家がいる。

今年1月、EUの委員長宛てに小泉純一郎、細川護熙、鳩山由紀夫、菅直人、村山富市各氏の連名で送付した書簡がある。

その内容の一部に
「私たちはこの10年間、福島での未曽有の悲劇と汚染を目の当たりにしてきました。何十万人という人々が故郷を追われ、広大な農地と牧場が汚染されました。貯蔵不可能な汚染水は今も増え続け、多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ、莫大な国富が消え去りました」とある。

日本に何の恨みがあるのか知らないが、元首相を務めた5人である。不見識も甚だしいこと限りない。国家反逆罪で訴えたいと思ったほどだ。

キッシンジャー氏に至っては99歳。今さら責める気にもならないが、必ずや氏の出席を設定した黒幕がいる。その正体を知りたい。

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