サハリンの報復
Vol.3-8.9-938 サハリンの報復
2022.08.09
資源がないとは何と悲しいことであろうか。
資源がない、軍事力がないために、国土を無法に占領されている相手から、頭を下げてエネルギーをもらう。自分の領土でありながら略奪者から漁業権の許可をいただく。こんな理不尽も甘んじて受けなければならない。なんとも惨めである。
ロシア、サハリンには<サハリン1>と<サハリン2プロジェクト>がある。
<サハリン1>は、ロシア・サハリン州サハリン島周辺の油田、天然ガス田だ。
樺太で進められている開発計画だが、プーチン大統領は、「サハリン1」を非友好国と位置づける国の企業などがロシア企業の株式を売却することなどを禁止する大統領令に署名、欧米や日本への対抗措置をとっている。
エクソンモービルは、ことし3月、早々にサハリン1プロジェクトからの撤退を表明した。
今回は<サハリン2プロジェクト>について報復措置をとってきた。
<サハリン2プロジェクト>
サハリン州北東部沿岸に存在する石油および天然ガス鉱区と関連する陸上施設の開発プロジェクトだ。
シェルはロシアによるウクライナ侵攻に抗議する形でサハリン2を含むロシアでの全事業から撤退することを表明している。
◆権益比率
ガスプロム 50.0%(半国営)
シェル 27.5%
三井物産 12.5%
三菱商事 10.0%
上記4社の合弁による「サハリン・エナジー」社が開発に従事している。
◆推定可採埋蔵量 原 油:約7.5億バレル 天然ガス:17.7兆立方フィート
今回はウクライナ制裁に対するロシアの対抗措置である。
ロシア政府は5日、これまでの運営会社から事業を引き継ぐ新たなロシア企業「サハリンスカヤ・エネルギヤ」を設置したと発表した。ロシアは新しい会社によって、いま出資している外国企業との再契約を果たすかどうか、1ヵ月以内に迫るという。
プーチン大統領は新たに設立するロシア企業に変更することなどを命じる大統領令に署名し、株主は、新会社の設立から1か月以内に、株式の譲渡に同意するかどうかロシア側に通知する必要があるとしたのだ。
日本の大手商社、三井物産と三菱商事もそれぞれ出資していることから日本側は、対応を迫られる。
日本は、国内ガス消費量の9%弱ぐらいなので、致命的な打撃にはならないものの重要なガス権益ではある。再交渉がなされるときの最大の懸念は、ロシアが厳しい条件を科す可能性だ。例えば ①出資比率 ②出資の条件として「ルーブル建て払い」などを求めてくる可能性がある。
日本は過去、エネルギーの中東依存度を下げる意味でもサハリンの権益を重視してきた。もし、撤退となれば、改めて中東などから新たな供給先を探すことになる。ヨーロッパも同じような状況にあり、もしそうなれば競合よる価格上昇も懸念される。
こんな時、原発があればと思うが日本は何を考えているのか、一向にその動きすらない。
さらに、プーチン大統領は5日、ロシアがアメリカや日本を含めて非友好国と位置づける国の企業などが、ロシア企業の株式を売却することなどを今年12月31日まで禁止することを決定した。
サハリン1、2を巡る一連の動きは、ロシアに対して制裁を科す欧米や日本などへの対抗措置であるが、自らも無傷で済むと思ったら大間違いだ。ロシアの対抗措置は相手へ打撃を与えるばかりではなかった。
撤退を表明したエクソンモービルがすでに活動を停止し始めており、サハリン1の生産活動は5月15日以降、事実上止まっているという。
「サハリン1」の生産活動の再開に向けてロシア政府などの関係者と努力しているようだが、見通しは立っていない。
ロシア極東の大統領全権代表を務めるトルトネフ副首相は先月、サハリン州の来年の歳入は、ことしに比べて最大で26%減少するだろうとして、外国企業の撤退や制裁の影響を受けて、エネルギー開発に支えられてきたサハリン州や、極東地域全体の経済に大きな影響が出るおそれがあると危機感を示した。
しかし双方に狂いはある。プーチンが簡単にケリがつくと考えたウクライナ侵攻が狂ったように、欧米の制裁も思ったほど効いていない。
互いに、制裁、報復とまさに世界を巻き込んだチキンレースの様相を呈してきた。ただ、その間にも多くのウクライナ市民が犠牲になっている。そのことが最大の悩みだ。
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