彗星の如く現れた “ テスラ ”
Vol.3-10.15-1005 彗星の如く現れた “ テスラ ”
2022.10.15
かつて自動車といえば、アメリカBIG-3、GM、フォード、クライスラーにドイツ車が世界を席巻していた。世の中変われば変わるものだ。
2006年アメリカの不動産バブルが崩壊、翌年のリーマンショックあたりから自動車産業も逆風にさらされた。世は、石油価格の高騰も重なりリーズナブルで燃費の良い小型車に人気が集まっていった。燃費のいいコンパクトカーを得意とする日本車、それに対応した欧州勢、アメリカの自動車産業は苦境に陥った。
特に拍車がかかったのが、環境問題。自動車の排気ガスには、地球温暖化の原因であるCO2が含まれており、その削減が自動車業界を直撃、クリーンカーへの対応を迫られた。メーカーはハイブリッド車や電気自動車に舵を切らざるを得なくなり技術開発に多大な投資を余儀なくされた。いわゆるハイブリッド車、電気自動車、水素自動車などエコカーへの転換である。
しかし、そうとはいえガソリン車がどのようなペースで切り替わっていくのか既存メーカーは切り替えのタイミングが難しい。設備投資への膨大な資金シフトは一つ間違えば命取りになる。ところがテスラや中国など新参者は迷いなくEVに特化。そこに全力投入できる強みがテスラ躍進の一因となったのは間違いない。
中国は2035年までに新車販売をすべて電気自動車等の環境対応車に切り替え、2060年までにカーボンニュートラルを実現すると発表した。
テスラは “ 彗星の如く ” 現れたとのジイの思いは認識不足、2003年からすでにその方向で走っていたのだ。地球温暖化など環境問題がクローズアップされるようになり、一段とEVへの注目度が高まった。テスラは加速度的に存在感を増し、一気に売り上げを伸ばし時代の寵児に躍り出た。
テスラのイーロン・マスクCEOはアマゾンのCEO・ジェフ・ベゾスを抜いて世界長者番付のトップとなった。
テスラはまだまだベンチャー企業の域との認識が甘かった。ここ数年の伸びは想像をはるかに超えている。CEOであるイーロン・マスク氏の顔をテレビで見ない日はないほど話題も豊富である。
マスク氏は宇宙開発企業スペースXの創設者およびCEO、電気自動車企業テスラの共同創設者でもあり、保有資産は2021年で34兆円を超えている。アメリカビッグ3の「凋落」を一人でカバーしているような活躍である。
テスラは、テキサス州に本社を置くアメリカの電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業である。
現在は、電気自動車、家庭用からグリッドスケールまでのバッテリー電動輸送機器、ソーラーパネルおよびその他の関連製品とサービスを事業としている。
そのテスラが「テスラ・モーターズ」を設立したのが2003年。
その後、僅か20年足らずで、世界で最も売れている電気自動車のトップメーカーになったのである。
2008年よりCEOを務めるイーロン・マスク氏は、創業期に資金の大半を提供しているが、機を見るに敏、天才的な先見性に鋭い嗅覚、さらに、度胸と楽観性を持ち合わせている幸運な男だ。
その20年の歴史である。
・2003年 デラウェア州にて「テスラ・モーターズ」を設立
・2004年4月 750万米ドルを調達した第一回シリーズA投資ラウンドは、起業家でスペースX社CEOのイーロン・マスクによって主導
・2007年5月 4500万米ドルを追加し、民間金融で1億500万米ドル以上の総投資
・2008年5月 4000万米ドルを追加。イーロン・マスクは個人資金の7000万ドルを提供
・2009年1月 までに、テスラモーターズは1億8700万米ドルを集め、147台の車両を納入
・2010年1月7日 テスラ・モーターズとパナソニックは共同で電気自動車用の次世代バッテリーを開発すると発表
・2010年4月21日 ロードスターの日本導入を発表し、ロサンゼルス郊外の港で日本向け車両12台を報道関係者に公開。ロードスターの予約が開始された。価格は1,810万円
・2019年1月8日 テスラ上海工場の建設を開始。これは前年に中国政府がEV市場における外資の出資制限を撤廃したことに呼応したもので、中国企業との合弁を行わない外資単独の自動車工場の第1号となった。新工場の最大生産能力は50万台で「モデル3」と「モデルY」を生産する
・2019年4月22日 NVIDIAから供給されていた自動運転用の半導体を、自社設計の製品に切り替えたと発表
・2020年に入ってから同年9月1日までにテスラの株価は約500%上昇。2010年に17ドルで上場したテスラ株は2020年8月28日現在2318.49ドルに達した。7月1日には時価総額がトヨタ自動車を抜き、自動車業界のトップとなった。9月2日の時点で時価総額は約4570億ドルである。
このテスラに触発されたのか、ソニーとホンダが新会社「ソニー・ホンダモビリティ」の発表をした。
2026年には北米で出荷を開始、日本は2026年後半を計画している。
水野泰秀CEOは「既存の完成車メーカーと違う全く新しい姿にしたい」という。
すでに自動運転を視野に、車内で映画や音楽、ゲームなどのエンターテイメントを楽しめる空間を想定している。
自動車業界は大変革期を迎えた。
中国が後10年少々ですべて電気自動車に切り替えるとすれば、世界は傍観者となるるわけにはいかない。
<2022年1月~6月までのEV車販売台数>
1ーテスラ(米)・・・67.7万台
2-BYD(中)・・・32.4万台
3-GM(米)・・・25.9万台
4-フォルクスワーゲン(独)・・・20.8万台
5-現代自動車G(韓国)・・・17.4万台
6-ルノー・日産・三菱連合・・・13.4万台
7-浙江吉利控股集団(中)・・・12.5万台
8-ステランティス(欧州)・・・11.6万台
9-奇瑞汽車(中)・・・11.1万台
10-広州汽車集団(中)・・・10.0万台
トップ10に中国が4社も入っている。その内中国(BYD)はテスラについで2位である。韓国5位、日本のメーカーは「ルノー・日産・三菱連合」がやっと6位に食い込んでいる。アメリカビッグ3しかり、老舗メーカーが盤石ではない激動の変革期を迎えた。
10年後の車社会、想像を超える全く違う景色になっているのではないか。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません