英国移住香港人の恐怖

世界,日本,雑記

Vol.4-3-1085   英国移住香港人の恐怖

2023.01.03

あの日の恐怖は続いていた。
2020
6月に「香港国家安全維持法」が施行された。

その第2章に

『国家安全保障を維持する為のタスク』として15条に
・国家は反逆罪を警戒し、抑圧し、罰する。
・国を分裂させ、反乱、転覆、または扇動、扇動して人々を転覆させる振る舞い。
・人民民主主義専制政権を、転覆または、扇動するいかなる行為も防止、阻止し法に基づいて処罰する。
・国家安全保障を脅かす盗難、国家機密の開示などの防止、停止、処罰する
・外国勢力の侵入や破壊、転覆を狙った行為、分離主義活動を、防止し停止、罰する。

国家とすれば当然のようなことが書かれているように思うが。中国共産党への反対意見を一切封じるというものだ。

当時の香港は正当なデモはできた。しかしあの日から国家転覆を企てていると見られ、逮捕される可能性ではなく逮捕されたのだ。

事実、多くの民主化活動家は、いろんな理由をつけられ国家転覆を企てたとして、ことごとく逮捕され、そして収監された。

先月1210日には、中国共産党に批判的な論調で廃刊に追い込まれた香港紙・リンゴ日報の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏に対し、詐欺罪で禁錮59カ月の実刑判決が言い渡された。

今回は詐欺罪だが、中国共産党に厳しい論調を貫いた黎氏は、外国勢力と結託したなどとして香港国家安全維持法違反の罪でも起訴されており、政府が指定した裁判官のもとで審理が続けられる。

結局は収監し続け、いくつもの罪を着せ、最終的には何十年もの実刑判決を受けることが想定される。終身刑同様の刑を受け、二度と社会復帰をさせないというのが中国共産党のやり方だ。

香港国家安全維持法が施行された20206月、英国は、対抗措置として、香港市民の英国永住権取得に道を開く特別ビザの申請受付を開始した。それから1月末で2年になる。

これまでに15万人以上の香港人がビザを申請した。しかし今、移住した香港人は、物価高や就労の壁と、中国共産党の監視の脅威に怯える。

英国に移住したある男性。
英国でのロックダウンにウクライナ侵攻の影響を受けた物価高に苦しむ。

英メディアによると、移住者の大半は高い教育を受け、英語も話せるが、英国での就労経験がないために断られるケースがある。教育や医療など雇用主が厳しい身元確認を求める職種では、香港警察が発行する証明書の提出を求められる。その際、過去に香港の民主化デモに加わり、香港警察に逮捕された経験のある香港人は「無犯罪記録証明書」が雇用主に提出できない。その結果英国では採用を断られる結果となる。

香港警察と接触すればその場で拘束される可能性があるから申請すらできないということだ。

移住した香港人を苦しめるのはそれだけではない。
英国内に潜む中国側の “ 監視 ” である。その中の一つが最近特に世界中で問題視されている中国警察が国外に展開する「海外派出所」の存在だ。

スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は、中国の「海外派出所」が反体制派を標的に「脅しや嫌がらせ」を行っていると指摘した。

香港の人権状況を監視する英国の人権団体「香港ウオッチ」の最高責任者は「ウイグル人、チベット人、香港人、中国の反体制派や海外で中国共産党を批判する者などにとって、重大な脅威だ」と懸念を示す。

その脅威は、たとえばロンドンに住む民主化活動家の香港人男性は「『海外派出所』の前を知らずに通っただけで連れ込まれるリスクを考えてしまう」と語る。

あるいは、同じく香港人の民主化活動家のサイモン・チェン氏は、英国移住後、「中国の諜報員がお前を連れ戻す」と英語で書かれた脅迫メールを受信したり、中国人らしき男性に尾行をされた経験を持つ。

多くの人が香港に家族を残している。帰国すれば拘束される可能性もある。
香港問題を研究する栄専門家は「英政府が、帰国するかどうか悩んでいる香港人を安全面や精神面でどのようにサポートするかが課題となる」と指摘した。

香港事件から2年。
アフガン問題、北朝鮮のミサイル問題、台湾有事に関する問題、そして今最も関心が高いウクライナ戦争の成り行き、世界は多くの問題を抱える中、つい2年前に起きた大事件を忘れかけている。

メディアによる香港レポートでもなければなかなか知る術がない。

あの時から香港の自由は消え、今なお香港人は中国の弾圧に苦しめられている。特別ビザをもらって英国へ逃避し、それで終わりではなかった。就労の壁、中国監視の恐怖。中国の弾圧はウイグル、チベット、モンゴル、に新たに英国へ移住した香港人が加えられた。

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