北方領土にみる悲しき日本の姿

世界,日本,雑記

Vol.5-2.10-1146     北方領土にみる悲しき日本の姿

2024-02-10

2月7日は北方領土の日だった。

その日のニュースは

◇ ロシア当局は、北方領土の早期返還を求める日本の団体を「望ましくない外国の組織」に認定した。
◇ ロシア法務省は5日、北方領土の早期返還を求めて活動する「北方領土復帰期成同盟」を、ロシア国内での活動が望ましくない外国の組織に加えたことを明らかにした。

これにより、この団体は北方領土への訪問が禁止される。 2023年4月には、「千島歯舞諸島居住者連盟」も同様に認定されている。

と伝えた。

今に始まったことではないが、北方領土を自国領土のように振る舞うロシア。この過激さはウクライナ侵略への日本の対応への嫌がらせもあるのだろうが、不法に占拠していることへの後ろめたさと、絶対に返すものかという意思表示であることは間違いない。

それに対し日本の静けさは何であろう。自分の領土を奪われているのだ。それだけではない。すべてが不法かつ語るも恐ろしき残虐性であった北方領土の略奪。戦争体験がないジイでも怒りがこみあげてくる。映画『樺太1945年夏 氷雪の門』はその一部を伝えている。

しかし、ハマス・ガザのニュースや政治家のパーティー会費の未記載問題を『裏金問題』と称し、メディアは連日流し続けるが、奪われた日本の国土の大切な記憶?というより未だ取り戻せていない島の大切なニュースがほんのさわりで終わる。新聞を見ない人、TVニュースを見ない人には認識すらされないごく普通の一日として過ぎ去った。

7日のメディアは実に静かであった。例年8月は数週間前から平和を連呼する戦争月間?が始まる。それに比し北方領土の日はあまりにも静かすぎるのだ。

大東亜戦争(太平洋戦争)は ❝ 日本の始めた戦争 ❞ との見方がある一方、北方領土はロシアの不法であって日本は被害者である。日本の責任は強く追及するが、他国の不法に日本のメディアは実に寛大である。少なくともソ連の不法なシベリア抑留の悲惨を伝えたらどうなのか。

第二次世界大戦で日本を占領した米国は『GHQ占領政策』で日本弱体化計画を実行した。 ❝ 日本罪悪論 ❞ をでっちあげ、徹底し贖罪意識を刷り込んだ。日本の強みであった素晴らしい歴史と武士道を中心とした道徳と精神性の破壊政策を手始めに二度と立ち上がれないように軍隊をも排除した。

しかしアメリカ占領期間中に朝鮮戦争が始まったことで、マッカーサーは治安の不安を感じ、占領5年目にして ❝ 警察予備隊 ❞ をつくった。そして7年に及ぶアメリカの占領政策が終わりアメリカは撤収。その後さらに2年が経過し、1954年(昭和27年)に警察予備隊は軍隊の体裁を整え自衛隊と名を変え現在に至るのである。

先進国で軍隊がないのは日本だけである。日本の有事には命をかける覚悟で日々訓練しているにもかかわらず、戦後79年経ってなお自衛隊は日本軍として憲法にも明記されていない悲しい存在のままである。日本人は自衛隊は災害時の応援部隊程度にしか思っていないのではないか。

ところで北方領土、日本人の関心があまりにもうすい。
内閣府の直近の世論調査で、ロシアが不法占拠している現状について「知らない」と答えた若者(18~29歳)が47%もいる。ほぼ若者の半分が北方領土の現状を知らないのだ。

北方領土だけではない。
なんと今から9年前の2015年の東海大学のアンケートで約4割もの学
生が、戦後70年の節目を迎えることを「知らない」という結果が出た。

さらに驚くことは、
作家の曽野綾子さんが2010年5月28日、産経新聞の 「小さな親切 大きなお世話」 というコラムにおいて、「『学業優先』の責務」 という題でのエッセイの中に『「WILL」7月号の連載の中で、堤堯氏があるテレビ局の公開討論に出演した時のことを書いておられる。

質問の時間に、ある男性が、自分は聖心女子大学で教鞭を執っている者だが、41人の学生に新聞を取っているかどうか聞いたところ、取っている人はたった4人。アメリカと戦ったことを知っている人は約半分の21人しかいなかった、と話した』

嘘のような本当の話だ。以上のことを察すれば、ロシアの不法占拠など知る由もないだろう。竹島もしかり、悲しき日本の姿である。

今、ウクライナはウクライナの領土を守るために命をかけて戦っている。
ウクライナは自国の領土を守るのはもちろんだが、ウクライナ戦争は民主主義を守り抜くという西側の代理戦争の顔も持つ。その意味を忘れたのか、アメリカはウクライナ支援の予算がいまだ通らないという。信じられないことが起きている。

第二次世界大戦後79年が経つ。
今更いうまでもないが、国後・択捉・歯舞・色丹の北方4島は、 昭和20年8月9日(1945)、ソ連が「日ソ中立条約」を無視して対日参戦した。その6日後の8月15日には天皇陛下の玉音放送で知られているように日本は世界に向け敗戦を宣告した日だ。

その終戦宣言3日後の8月18日にソ連軍は千島列島の占領を開始し、9月5日までに4島を占領したのだ。ソ連は日ソ平和条約を一方的に破り、さらに終戦宣言の後もソ連は残虐な行為とともに占領を続けたのである。

ソ連の悪行は
① 国際条約である『日ソ平和条約』を一方的に破棄したこと
② 敗戦を宣言した8月15日以降8月18日~9月3日の戦争行為の不法
③ 終戦で丸腰になった日本人に残虐の限りをつくした悪行

さらに許しがたいことは、戦後日本へ引き上げるべき兵隊をこれまた一方的に極寒のシベリアに約60万人近い日本人を強制連行し強制的に働かせ約34万人を死亡させた。この残虐行為にもかかわらず日本人は恨みを抱くどころか忘れ去ろうとしている。

日本の戦後教育はGHQの洗脳教育に素直に洗脳され、日本人自らが、自らを洗脳する教育によって、語り継がれるべき日本の歴史を抹殺してしまったのである。その一役を買ったのが日教組教育であることは間違いない。しかし日教組だけに罪をかぶせるのは公平ではない。

戦後、GHQの占領から解放された昭和27年以降、アメリカ主導で作られた憲法の改正、大東亜戦争を太平洋戦争と強制的に改名されたものを速やかに戻し、自衛隊を軍隊に改名し憲法に明記するという戦後レジームの正常化を果たさなかった政治家の責任は大きい。

その後、経済成長と平和を享受する日本の歩みは確かに豊かな日本の現在をつくったのは間違いない。しかし、真の独立国家の歩みではない。国家としての生き方に防衛政策を抜きにしたツケはとてつもなく大きいと言わざるをえない。

防衛をアメリカにすべておんぶに抱っこの状態で今日を迎えた。特に若い人の中には国家としての防衛の大変さなど考えたこともないのではないか。防衛は今の自衛隊で十分と錯覚していると思われる。沖縄に米軍基地が集中している問題。日本が防衛政策を日本人自身が担っていれば現沖縄問題は起きなかった。

日本国憲法の未改正も靖国神社問題も米軍の沖縄駐留も自衛隊問題も防衛を日本の問題として真剣に捉えなかったツケである。

北方領土問題もその延長線上にある。

北方領土の返還交渉も遅々として進まず、挙句の果てにプーチン大統領は昨年 ❝ 国土の譲渡を禁じる ❞ と他国への土地譲渡を憲法で禁じた。さらに念を押すように「北方領土4島」はロシア領と確定済とし、日ロに領土問題は存在しないと言い放った。

プーチンに輪をかけたように日本敵視するメドベージェフ元大統領も
「北方領土は協議の対象ではなくロシア領」
「われわれにとって日本国民の感情などどうでもよい。それを悲しむサムライは日本の伝統的な方法で自決すればよい。そう、切腹だ」と傲慢そのものである。

ここまで言い放たれても、日本人は至って静かである。穏やかである。それもそうだろう。誰も関心のない ❝ 北方領土 ❞ になってしまっているのだ。

命をかけて守ろうとしているゼレンスキー大統領が、日本の ❝ 北方領土 ❞ 交渉が遅々として進まない現状に ❝ 共闘しよう!! ❞ とエールを送ってくれるが一向に盛り上がらない。そんな日本にゼレンスキー大統領は何を思うだろう。

この日本の現状は何によってもたらせられたのか。

戦後79年、平和、平和、平和、平和、平和が何よりも大事にされてきた。300万人の日本人の尊い命を奪った戦争は2度と起こさない。その思いは痛いほどわかる。しかし、守ることさえ放棄した日本人は経済の発展にすべてを注いだ。現在の平和は経済を優先し防衛を犠牲にしたのだ。そして平和を叫べば平和が永遠に続くものと錯覚するに至った。

日本有事には命を懸けて守る自衛隊を ❝ 人殺し集団 ❞ と罵った共産党は別物だが、戦後のアメリカの洗脳政策・歴史の抹殺も寄与したものと思われるが時の政治家の怠慢から日本は防衛を語ることのない、いわば片肺の先進国に成り下がった。

その結果が、冒頭の大学生の日本の歴史への無関心、防衛への無関心は尖閣諸島周辺で365日領海侵犯されても何も言わない沖縄、中国脅威には無言の沖縄が示している。

有事には命を懸けて国家を守ろうとする自衛隊を今こそ憲法に明記しなければ間に合わないにもかかわらず野党は ❝ 裏金問題 ❞ に嬉々としている。

平時にはいるのかいないのかわからない野党がスキャンダル国会になると一気に活気ずく。まさに国家政策を基本に据えていないということだ。国家の防衛はこうあるべきという骨太政策で自民党を脅かさない限り、政権を奪取することは無理だろう。来る日も来る日も裏金追及では誰が日本を任せようとするだろうか。いくら日本人が平和ボケとはいえ国家災害は戦争だけではない、1月の能登半島地震などの災害時にも緊急事態対応に憲法は十分ではない。

憲法改正によって自衛隊を軍隊に明記、緊急事態対応の法整備は喫緊の課題である。なぜ立憲民主党は憲法改正に及び腰なのであろうか。❝ 立憲共産党 ❞ と揶揄されるようでは、政党立ち上げ時の立脚が日本の歴史を基盤にしていないのかもしれない。その証拠に、皇室の男系、靖国神社、憲法改正すべてに反対している。日本国家の成り立ちへの愛情、世界のどこにもある国家愛が大いに欠けている。

国家に命を捧げた英霊をまつる神社に国家の最高司令官が参拝すらできない国があれば聞きたい。そのことにさえ気づかない日本人は、軍隊を持たず国家防衛をアメリカ任せにし、国家防衛を語らず議論せず、愛国心に邪心を抱き、国家・国旗にさえ愛情を持てない日本は、世界でいう普通の国からずれてしまった。

つい先日、ネットで櫻井よしこ氏が『あなたは祖国のために戦えますか』を曲解し、著名人までが真面目に考えようとせず、ちゃかすようではすでに国家として成り立たない現実を示している。

平和には何が必要なのかという厳しい現実を語る政治家がいないのもそうだが、その前に、それを理解しようとする日本人の精神が平和という言葉に埋没し平和の本質をみる柔軟性をなくしている。平和に慣れ切った日本と世界とのギャップは並大抵では変えられないほど開いてしまった。

悲しいかな今国会議論も来る日も来る日も裏金問題で終わるのだろうか。何年たっても未だに憲法改正議論さえ進展しない国。自民党も同じ穴のムジナである。

悲しき日本の姿を改めて実感させた北方領土の日である。

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