グローバル時代の終焉

世界,日本,雑記

Vol.1-5.10-117 グローバル時代の終焉

2020.05.10

衝撃的な論説である。
米歴史学者・エドワード・ルトワック氏が語った言葉は衝撃である。

「グローバル時代は終わった」
果たしてエドワード・ルトワック氏は何を言おうとしたのか。

このコロナウイルスの最中にも小池都知事が「このグローバルな時代に、、、、、」と語ったのは昨日のことだ。その「グローバル」という言葉は国境を越えた繁栄を象徴する言葉として使われている。そのグローバルが終わったとするエドワード氏の真意はどこにあるのか、その衝撃的ないくつかの言葉である。

①「第一は政治的な流れの断絶だ。EUは欧州諸国間の戦争を予防するために設立されたが、EUが直面した初の戦争並の不慮の事態である新型コロナへの対応に失敗した。共有された医療情報や共通の医療戦略は存在せず。加盟国間の相互支援もあまりなかった。」
「EUの連携した外交政策も皆無だった。・・・・融合を目指したEUは役割を見失った。今後は英国に続き、多くの加盟国が静かに脱退していくはずだ。」

②「新型コロナ危機を受けて起きているのは、グローバル化の揺り戻しとしての『脱グローバル化』だ。グローバル化は国際機関の台頭と連動してきた。EUやWHOなどの機能不全となったことで、世界はグローバルや多国間枠組みから後退し、国民国家が責任をもって自国民を守る方向に回帰するだろう。」

③「新たな独裁諸国の台頭こそが、人々が称揚するグローバル化の産物だ。インテリ層は、グローバル化を『世界民主主義』であるかのように主張したが、現実には民主体制からプーチン独裁体制に変容したロシアや、集団指導体制から習体制に移った中国など、多くの国が独裁体制に傾いていくのを促進した。」

④「グローバル化が独裁体制と親和性が高いのは、国際機関が非民主的だからでもある。EUとは選挙で選ばれた各国政府の権限を欧州委員会に移管するもの、欧州諸国の民主体制が弱体化したのは、各国の権力が非民主的な体制に移されたせいだ。グローバル化が民主主義に何ら寄与しなかった。」

これらの発言から読み取れることはの1つは、第二次世界大戦危機以来とされる「新型コロナウイルス」の発生により、中国の存在の大きさが良きにつけ、悪しきにつけ、クローズアップされたことだ。

流通のストップは中国に集中したサプライチェーンの断絶である。この事態を想定した中国の情報操作は、世界への拡散をよそ目に、いち早く自国の回復を想定して自国が握る生産された品々を意図的にストックし、後に世界に供給するという民主主義国家では想定できない戦略を平気で実行したことだ。
さらに欧州各国が自国コロナで手いっぱいの中で、イタリアを見事に自国陣営に抱き込んだ。

このグローバルを利用した中国のなりふりかまわない世界進出、その象徴のような「一帯一路」を強引に進める中国に対する自由主義陣営への注意喚起にも思える。

中国は現在、15の国連専門機関のうち4機関のトップを占めている。国連安全保障理事会や世界銀行など、中核機関以外にも着々と影響力を拡大している。国際機関はすでにニュートラルな思想での機能不全に陥ったということを意味しているのか。

中国人がトップの機関では、中立性を疑わせる事例が指摘されてきたがそのような事を気にする中国ではない。
国際電気通信連合(ITU)は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」との連携を唱え、国際民間航空機関(ICAO)は、台湾の総会オブザーバー参加を認めなくなった。台湾がWHOの総会に参加できなくなったのも中国の影響力である。

<ちなみに国際機関を着々制覇する中国の現在の状況である>
●UNIDO(国際連合工業開発機関)事務局長:李勇 (2013年6月~)
●ITU(国際電気通信連合)事務総局長:趙厚麟(2014年10月~)
●ICAO(国際民間航空機関)事務局長:柳芳(2015年3月~)
●FAO 国際連合食糧農業機関 事務局長:屈冬玉(2019年8月~)
●WIPO(世界知的所有権機関)事務次長:王彬頴(2008年12月~)
●IMF(国際通貨基金)事務局長:林建海(2012年3月~2020年4月)
●WTO(世界貿易機関)事務局次長:易小準(2013年8月~)
●WB(世界銀行)常務副総裁兼最高総務責任者(CAO):楊少林(2016年1月~)
●WHO(世界保健機関)事務局長補佐:任明輝(2016年1月~)
●AIIB(アジアインフラ投資銀行)行長(総裁):金立群(2016年1月~)
●IOC(国際オリンピック委員会)副会長;于再清(2016年8月~)
●IMF(国際通貨基金)副専務理事:張涛(2016年8月~)
●WMO(世界気象機関)事務次長:張文建(2016年9月~)
●UN(国際連合 国際連合経済社会局)事務次長:劉振民(2017年6月~)
●ADB(アジア開発銀行)副総裁:陳詩新(2018年12月~)
●UN(国際連合=国連 事務次長補佐):徐浩良(2019年9月~)

中国は3年連続でアフガニスタンに関する国連決議の中に、習氏がグローバルなインフラ建設構想として推進する「一帯一路」への好意的な文言を挿入させることに成功したとしている。

グローバル化は自由主義体制諸国の特権のようにも見えたが幻想でしかない。独裁体制であるからこそグローバルという舞台を利用した徹底した戦略が功を奏しているともいえる。
中国の台頭はロシアあるいはイランなどとの共闘が予想されるところに恐さがある。すべて核保有国である。

エドワード・ルトワック氏の恐れていることは自由主義陣営が築き上げたグローバルな協調体制を独裁共産勢力に乗っ取られる寸前の注意喚起ともとれる。一旦、グローバルを断ち切り、欧州自由主義陣営をふるいにかけ、赤い糸を断ち切った上での再結成を促しているのか。

自国アメリカ・トランプ大統領が自国主義に陥った隙を狙らわれた反省を暗に指摘したとも言える。
果たして真意はどこにあるのか。

米中の貿易戦争に始まったゴングはコロナ戦争をも抱えたダブル戦となった。

「新型コロナウイルス」は世界の脆弱さをあぶり出し、さらに世界勢力を塗り替えるかもしれない超大型の感染力を有している。

「グローバル」という言葉、共産独裁政権の「世界制覇」のコードネームになっている可能性は十分ありえる。注意せよ!!ということか。

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