香港を救え!
Vol.1-6.10-1.148 香港を救え!
2020.06.10
「一国二制度」とは「1997年、香港が中国に返還された時、統一後も高度な自治の下、社会・経済制度が維持される。」としてイギリスが統治していた時と変わらず、香港の生活方式は「50年間不変」と規定されている。
それが今、中国の独裁に呑み込まれようとしている。
2019年4月、香港政府は「逃亡犯条例」の改定案を議会に提出した。この改定案が通ると、香港との犯罪人引き渡し協定がない中国本土や台湾、マカオの捜査当局は、香港に対して犯罪事件の容疑者の身柄引き渡しを要求できるようになる。
そのため、中国による恣意的な拘束や不当な裁判につながりかねないと批判が上がったのだ。また、中国政府による香港統治が始まり、その高度な自治性が維持されなくなるのではないかという懸念が香港市民の間で高まり、大規模なデモにつながった。
大規模デモは一向に収まる気配無く、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案を、正式に撤回せざるを得なくなったのだ。
昨年のこの苦い経験から、中国政府は着々と準備を進めてきたのが、「国家安全法」の香港への導入だ。
<国家安全法>とは
国家分裂、政権転覆行為や外国勢力による香港への干渉を禁止する。
今後、罪に問われると思われる行為。
①反政府・反中デモ。
②「香港独立」「共産党独裁反対」を主張する。
③海外に香港への支援を呼びかける。
などであるが、この「国家安全法」が導入されれば、昨年「逃亡犯条例」を廃案に追い込んだようなデモはできなくなる。
やったとたんに逮捕・投獄が待っている。
更に中国の大きな目的は、今年の9月の香港の立法会(議会)の選挙で、民主派に過半数と取られてしまうことを阻止することだ。更に来年10月の選挙で再び民主派が過半数を阻止しなければならない。
この2つの選挙で民主派が過半数をとると、予算案が2度否決される可能性がある。その結果として、悪名高き香港政府トップの「林鄭月䖸娥(りんていげつが)」行政長官が辞職に追い込まれてしまう。そのことを中国は恐れているのである。
中国にとって香港トップが民主派の行政長官なるなどは悪夢である。どんな手を使ってでも阻止するだろう。
民主派の中心人物は皆若い人たちだ。
リーダー的存在、「黄之鋒(23)」と女性3人「周庭(23)」「梁凱晴(25)」「余慧明(33)」の命を奪うことなど今回に限っては容赦しないだろう。
「雨傘運動」として香港の主化運動を主導してきた黄之鋒(23)は一度逮捕されている。
昨年6月、拘置所から出所すると米議会の招待を受け、米議会公聴会で「自由主義の砦の香港を共産中国から守るには、国際社会の支援が必要だ」と訴えたのだ。
この訴えが功を奏し、アメリカ議会は「香港人権民主法」を成立させたのである。
もし、「国家安全法」が成立すれば、黄之鋒の行為は法律違反となり、場合によっては正々堂々と法律の下で死刑に処すだろう。
今回の「国家安全法」はまさにそこをターゲットにしている。
今年9月、来年10月の香港議会選挙は、香港市民にとって生きるか死ぬかの戦いなのである。
危険を感じたのか、若い世代の約50%が台湾などへの移民を考えているという。
黄之鋒氏は
「移民しないで、香港にとどまってください。あきらめないで!」と市民に訴えているが、大国中国からすれば、黄之鋒氏は小さな蜂のような存在でしかない。しかし刺されれば蜂の一刺しは命取りになりかねない。
民主派が勝てる方法は、世界を味方につけるしかない。
先進国のすべてが、アメリカのように、国家として「香港人権民主法」を成立させるほどの支援をできるかどうかだ。
日本のように「憂慮」する程度の反応では屁の突っ張りにもならない。
中国は、13億の魅力的な市場をちらつかせ、更に豊富な資金で懐柔すればとの思惑もあるに違いない。
これを崩すには、主要先進国すべてが、自由主義の陣営としてまとまらなくては阻止できないだろう。
G7拡大を図ろうとしたトランプ氏、ドイツのメルケル氏とのギクシャクも懸念材料だ。
香港を第二の ¨チベット¨ ¨ウイグル¨ にしてはいけない。
果たして香港を救えるのか。
自由主義陣営の結束が試される時だ。
シナ海周辺は風雲急である。