日本の平和と人間の條件とは
Vol.1-7.27-195 日本の平和と人間の條件とは
2020.07.27
今から45年も前の話である。
ジイは岐阜のとある映画館で「人間の條件」という映画を見た。
9時間の映画だ。三部に分かれ、一部3時間の映画が一挙に放映されたのだ。
一部が終わると、30分の休憩があった。さらに2部が終わると30分の休憩。
たしか、夜8時30分頃開始で、終わったのが朝の7時頃だったように思う。
この時、反戦という意味すらあまり考えなかった。
『人間の條件』というタイトルに引かれた。
主演は仲代達也だった。後には加藤剛主演でテレビでも放送されどちらもヒットした。
よほど印象に残ったのか、この時のパンフレットは今もある。
これは五味川純平が、自らの従軍体験を基にして昭和30に発表した長編小説『人間の條件』が大ベストセラーとなり映画化されたものだ。
<そのあらすじは>
主人公の梶が、徴兵を免れるため満州に渡り、軍需会社の鉱山の労務管理に従事していたが、中国人捕虜の不当処刑に抗議した結果、憲兵と対立、拷問を受けたのち、召集され、ソ満国境の警備につく。ソ連軍との戦いで部隊は壊滅、梶は数名の兵と満州の曠野を彷徨し、捕虜となるが、脱走し、妻の美千子を求めてさまよい、雪に埋もれて死ぬ。
というものだ。
この戦争を侵略戦争と断定し、戦争の実体とその極限的な状況のもとでの人間的良心の問題を、作者の入隊、戦争、捕虜の体験を背景に探った反戦映画である。
この映画のことを急に思い出したのは7月26日の新聞記事(産経新聞)である。
国連報告としての記事だ。
『国連は24日、イスラム過激派ボコ・ハラムがナイジェリア北東部で2019年までの3年間に、拉致した203人の子供を使った爆弾テロを行っていたとの報告書を発表した。約8割が少女だった。
大人の戦闘員が子供の体に爆弾を巻きつけて雑踏に向かわせ、遠隔操作で起爆する手口で、国連は「人間爆弾」と非難している。
ボコ・ハラムは14年に北東部ボルノ州で女子生徒276人を拉致し、開放を求めるキャンペーンが世界中に広まった。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に忠誠を誓う勢力も現れ、チャド湖に面した地域一帯を混乱に陥れている。
国連によると、ボコ・ハラムはナイジェリア北東部で1385人の子供を拉致し、爆弾テロに利用したほか、「性奴隷」としても搾取した。・・・・・』とある。
この記事の中に「解放を求めるキャンペーンが世界中に広まった」とある。
世界中に広まるほどのキャンペーン、日本人のどれほどの人間がこの事実をキャンペーンとして知ったのであろうか。不肖ジイは恥ずかしながら知らなかった。
もう一つ、我が日本の隣国中国に関するニュースである。
「最近伝えられた2つのおぞましいニュースで、中国政府が新疆ウイグル自治区で行なっているウイグル人弾圧の残虐極まりない実態と恐るべきスケールに世界はようやく気づいた。
1つは、米シンクタンクの調査で、ウイグル人女性に組織的に不妊手術が行われている実態が明らかになったこと。
もう1つは、米税関と国境警備局が新疆ウイグル自治区から発送されたかつらや付け毛など毛髪製品13トンを押収したというニュースだ。
これらは収容所に入れられたウイグル人の髪を強制的に切って作られたと見られる。 この2つの出来事は世界の別の地域で過去に行われた残虐行為とぞっとするほど重なり合う。
一部の国々が、少数民族や障害者、先住民に断種手術を強制してきたこと。そしてアウシュビッツ収容所の展示室のガラスの向こうに山積みにされた毛髪の山……。 ジェノサイド条約(中国も締約国だ)では、集団の構成員に以下のような行為を加えることをジェノサイド(集団虐殺)と定義している。
(a)殺す
(b)重大な肉体的または精神的危害を加える
(c)集団の物理的な破壊をもたらす生活条件を故意に強いる
(d)集団内の出生を妨げることを目的とした措置を課す
(e)集団内の子供を強制的に他の集団に移す。
このうちの1つでも当てはまればジェノサイドと見なされる。夥しい数の証拠が示す中国政府の組織的なウイグル人弾圧は、これら全ての項目に当てはまる。
<でっち上げの罪で投獄> ウイグル人は、テュルク系の少数民族で、多くは世俗的なイスラム教徒だ。中国政府は100万人超のウイグル人を強制収容所や刑務所に入れてきた。
被収容者は軍隊式の規律を強いられ、思想改造や自己批判を強要される。虐待、拷問、レイプは日常的に行われ、殺されることすらある。
生存者の証言から浮かび上がるのは、殴る蹴るの暴行、電気ショック、水責め、心理的ないじめ、中身の分からない注射を打つといった蛮行がまかり通っていること。身体的・心理的に耐えがたい危害を加え続けて、ウイグル人の精神を破壊することが、強制収容所の目的なのだ。
中国政府は繰り返し、「彼らの血筋を断て、彼らのルーツを壊せ、彼らの人脈を断ち切り、起源を破壊せよ」と命じてきた。「逮捕すべき者は1人残さず逮捕せよ」とも。
ウイグル人の出生率を組織的に下げる計画が実施されてきたことも明らかになった。そこから見えてくるのは、ウイグル民族そのものを抹殺しようとする中国政府の意図だ。
とする告発記事だ。
こんな恐ろしいことが相当前からおこなわれているにもかかわらず、習近平国家主席を国賓?で迎えるという頭の構造が理解できない。
中国の何を恐れるのか、中国に進出している企業のダメージか、どこまでも経済重視なのか、国家としての最低限の矜持、理念までも捨てて日本の国家が国家足り得るのか疑問である。
日本の国会議員もやっと重い腰をあげ、自民党の一部が中国大使に抗議文を送った。程度だ。
8月が近い。
また、マスコミ、TVは反戦ムード一色に彩られるだろう。
日頃のテレビは平和そのものである。どのチャンネンルも「お笑いにバラエティ」花盛り、過去の日本の戦争にはとことん糾弾するが、今世界で起こっている人権侵害には全くといっていいほど無関心である。
このギャップ、呑気さはなんであろうか。
果たして、日本が言う、日本人がいう「平和とは」。
さらに言えば『人間の條件』とは
ジイは、いつもこの日本の日本人の思考基準に悩む。