王毅外相の狙い
Vol.1-11.27-318 王毅外相の狙い
2020.11.27
11月24日中国の王毅外相が訪日した。
今回は中国からの申し出で実現したようだ。
菅総理が早々に中国詣ででもするかと思ったのかもしれない。
就任早々の外遊はインドネシアとベトナムであった。
安倍総理の外交戦略の継承ということでそれを印象づけることもあったが、「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現を前面に出すことで、中国を牽制したことは間違いない。
その後に、10月6日に日本・アメリカ・オーストラリア・インドの4ヵ国の外相会談が日本で開かれた。「日米豪印戦略対話」と言われているが、これも「自由で開かれたインド太平洋」を強く意識し中国を牽制した動きだ。
なかなか中国にお声がかからない。アメリカの大統領選も動きが定まらず、中国としてはイライラがつのったのか、しびれを切らしてとりあえず日本の動きの察知に動いたのではないか。
しかし王毅外相は来ていただいたのはいいが、自分から日本訪問を打診しといて、来てやったと言わんばかりに相変わらず居丈高である。
訪問当日であっても尖閣諸島周辺の接続水域に中国海警局の船が2隻航行している。領海に近づかないよう巡視船が警告している有様だ。
であるにも拘わらず、王毅外相は日本漁船を念頭に「偽装漁船が繰り返し敏感な海域に入っている。このような船舶を入れないようにするのはとても大事だ」と述べたと言うではないか。間違いなく尖閣諸島は中国の島だと言わんばかりの発言である。
産経新聞の社説は「盗っ人たけだけしい」という言い方で非難したが、まさしくその通りだ。しかし本当に中国領だというなら中国のことだ、機関砲で撃沈はありうる。しかし、そうしないところに自国領ではないという後ろめたい確信がある。
だが、実行支配は別である。戦時を想定した上陸を念頭に置いていると思われる。そんなことはよもやすまいという野党議員と与党の一部は思っているかもしれないが、そんな甘い中国ではない。ジイはそのチャンスを探りに来たのではないかと推測する。
なぜなら、中国の要求は習近平主席の国賓としての訪日の実現である。それが難しいとすれば、当面日本を利用する価値などない、と判断してもおかしくはない。
ただ、敵でもない相手をミスミス敵に回すこともない。そこで、探りを入れにきたのだ。
少数民族弾圧の人権問題。香港に「香港国家安全維持法」を制定。自由で緩やかな自治を破壊し、完全に中国共産党の制圧下に置いた。それに台湾問題。これらに対する日本と欧米との温度差だ。日本を敵に回すより、仲間としての可能性を残しておきたい。
しかし、対中感情は最悪の89.7%に達した。こんな状況で国賓として呼べるはずがない。王毅外相もこの案件は無理と察知したことだろう。
ただ、日本政府の態度がイマイチつかめない。そう思っているのではないか。
例えば、欧米の自由主義陣営が、少数民族弾圧や台湾問題、香港自治に是正要求声明を出しているにも拘わらず、日本は一見静観しているかに見える。
今回の訪日で尖閣問題も人権問題にも鋭く切り込むこともしない。日本は何を考えているのか、王毅外相は頭を抱えているのではないか。日本を敵に回すには中国への強硬策や発言が一つのきっかけにできるが、どうもあやふやな日本である。かと言ってすり寄る態度でもない。
一応、政府の体面上、「一国二制度」「人権問題」を提起したようだが、明瞭に内外に発信したわけではない。なんともつかみどころのない日本外交。
王毅外相、とりあえず訪日したものの、習近平主席と李克強、3人顔を突き合わせ、果たしてどうすべきか。
扱いづらい日本の伝統芸に頭を悩ませているのではないか。