中国・経済蟻地獄戦略
Vol.3-02.24-772 中国・経済蟻地獄戦略
2022.02.24
中国問題グローバル研究所所長・遠藤誉先生は中国のスペシャリストだが、いつも歯切れが良い。
月刊Hanada3月号に「中国依存が日本を滅ぼす」として、籾井元NHK会長と激論が面白い。
中国といえば、人権問題で国際的に批判を浴び、冬季北京五輪でも散々に言われているが、どこ吹く風でIOCバッハ会長との蜜月ぶりを見せつけた。すべて金の力だ。
パラリンピックを残し、派手な動きはできないと思うが、ロシアのウクライナ侵攻を注意深く見ていることだろう。
そんな中、白熱を帯びた籾井氏と遠藤誉先生の激論のだが、誉先生の発言を中心に拾ってみた。
誉氏が最も心配しているのは、中国依存である。
まず巷で流れる「六年以内に台湾武力攻撃説」である。日本にとって大変な危険をはらんでいると指摘した。
その理由は
◆「台湾海峡波高しの視点に偏るあまり、その背後で進む中国の狙い、すなわち経済的に日本や周辺国を取り込もうとしている事実に目が向かなくなっている。習近平の思い通りに事が進んでいるのに、全く気付いていない」ということだ。
◆「万が一の場合に備えることは重要だが、軍事面の脅威ばかりに目が向いてしまい、経済的な脅威に全く目が向いていない。」
◆「『政治的な距離はあっても、経済的な結びつきは重要で良いことなんだ』という考えが日本人に刷り込まれている。これこそ中国の思う壺で、習近平の戦略は、その国を経済的にからめとって中国から離れられない状況をつくること」
◆「現実は中国は日本にとって最大の貿易相手国になっており、今尚その依存度を強めている。」
驚くことなかれ
◆「2035年までに台湾海峡大橋を建築して、大陸と台湾を高速鉄道で連結するなど、徹底して経済面でからめとろうとしている事実がある。ところが、日本では誰も目を向けようとしない。」
今、人権問題で揺れる「新疆ウイグル地区」、オリンピックでも盛んにPRしていたが、
◆「新疆を経済的に発展させ、スマートシティにもっていくことで、国際社会のジェノサイド批判をかわそうとしている」
今、アメリカのEV市場で快進撃を続けているテスラ、
◆「テスラは全世界で約3万のスーパー充電ステーションを整備していますが、そのうちなんと8千を中国に設置している。約30%。そればかりか、テスラのEVの約43%をテスラ上海工場で製造している。」
アメリカ国家の中核企業がここまで中国に依存しているとは驚きである。もうほとんど中国の会社である。もし、中国市場を失うとテスラはぶっ飛ぶ。
さらに、テスラのイーロン・マスクは習近平の母校である精華大学の顧問委員会のメンバーで習近平とは親密だという。米中が経済戦争を展開の中、何だこれは???驚きの実態である。
2020年コロナウイルスが発見され、またたく間に広がったわけだが、その影響で中国の工場が休業に追い込まれた時、一気にサプライチェーンが滞り、日本も世界も痛い目にあった。あの経験はまったく生かされていない。
アメリカは昨日のニュースで中国リスクを考え、カリフォルニアでレアアースの開発を進めるようだが、2020だけで対中投資は1642社もありさらに増え続けている。同じく日本も799社と増加しているとは驚かざるを得ない。
カントリーリスクを考えて分散といいながら実態は逆行している。この中国傾斜が大問題だと遠藤誉氏は警鐘を鳴らす。
人権問題という普遍的な価値にすら声を上げられないのはこのような内部事情からきているとすれば大問題だ。遠藤氏に言われるまでもなく、対中包囲網を崩している責任は日本政府にある。
親中の自民党二階氏が最高顧問の「日中イノベーションセンター」も実態は「中国に貢献しよう」というのが真の目的になっているという。新たに親中の林外務大臣が生まれた。そこに与党の公明党が親中。もう何をかいわんやである。
遠藤氏は
◆「日本がいつまでも中国の呪縛から抜け出せないばかりか、雪だるま式に対中依存を増していくなら、自民党など第一党のざからむしろ降ろすべき」と言い放った。
◆「日本のあやふやな姿勢は、中国共産党第一党支配体制を維持させていくことに極めて有利に働いています。習近平の考えは、アメリカと対立していても日米安保条約を締結している日本を自分たちの側に引き寄せておけば怖くない、というのが基本中の基本にある」と断言。
「中国は崩壊する」こんな耳触りのいい話は危険であると遠藤氏。
確かに一帯一路ではないが、多くの国が、中国の経済的支援でにっちもさっちもいかなくなり、国を乗っ取られそうになっている。
経済でからめて落とす。遠藤氏の話を聞いていると、アメリカも日本も蟻地獄に入ったような恐ろしさを感じる。
今秋予定の中国共産党大会で習政権が異例の3期目を確実にした場合、いよいよ厳格な統制のもと毛沢東以上の強硬姿勢に転じる危険性はある。
世界のサプライチェーンを握られ、中国にある企業は一切逃げられないようあらゆる手を使ってくる可能性がある。中国100年の夢はアメリカを抜いて世界制覇である。
ナイーブな日本。金にモノを言わせた一党独裁に立ち向かう戦略も気概も軍隊もない。何しろ牙を抜かれた虎である。猫なで声ですり寄るしかないのか。
ああ、JAPAN、ただ嘆息するのみだ。
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