TPP と IPEF
Vol.3-6.9-877 TPP と IPEF
2022.06.09
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)
TPPとは、輸出・輸入の際にかかる関税を段階的に引き下げ、自由貿易を推進することを主な目的としたものだ。
参加国は、日本・アメリカ、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの12か国で発足した。
しかし、途中で米国が脱退するというアクシデントが発生した。
アメリカファーストを掲げる前トランプ大統領は、関税の引き下げが盛り込まれたTPPはアメリカにメリットなし、アメリカ経済に与える打撃が大きいと判断し脱退した。
日本はそれにめげず、リーダーシップを発揮し11ヵ国をまとめ上げたのは立派だった。今では、中国、韓国、台湾を始め参加を望む国は多い。
一方、今回バイデン大統領のアジア歴訪中に、米国主導で貿易促進や供給網強化に向けた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が提案され5月に発足した。
目指すところは、中国の影響力拡大を念頭に、自由で開かれたインド太平洋戦略の実現に向けて、アジアにおける経済面での協力、ルールの策定が主な目的である。
今回発足したIPEFは関税障壁などが残る。東南アジア諸国を主に影響力を強める中国を意識しルール作りを優先したものだ。
参加国は米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、そしてオーストラリアの13か国でスタートした。
世界のGDPの約4割を占める規模だが、韓国など積極姿勢を示す国もあれば、インドネシアのように疑問視する声もある。
◇韓国:保守系・朝鮮日報は「米国に安全保障を依存する韓国として、米国主導の経済・安保ブロックに参加する以外の選択肢はあり得ない」とし、IPEFへの参加を全面的に支持した。さらに「米国との堅固な同盟こそが最も確実な安全保障だ」と強調した。
新大統領・尹錫悦氏も文在寅前大統領とは違いいち早く親米を打ちだしている。ただ、日本同様中国とは経済的な結びつきが強い。従って韓国大統領府は「中国をサプライチェーンから排除する議論はない」と一応中国への配慮は見せる。
一方、疑問を呈するASEANの代弁者はインドネシアだ
◇インドネシア:ジャカルタ・ポスト紙は「ほとんどお笑い種だ」と批判し、米国がASEAN加盟国を招待したのは「対中包囲網に参加するよう促すためであることは明らかである」と断定した。さらにIPEFはTPPと違い、関税障壁が残る。よって参加国のメリットは薄いと不満を漏らす。米国は「反汚職」や「環境配慮」などの理念を言うが、「インドネシアやASEANが必要とするのは市場であり、お説教ではない」とし、IPEFを通じた市場開放を求めた。
◇冷静な評価をしたのがシンガポール・ストレーツ・タイムズ
「IPEFの魅力は一見しただけでは分からないかもしれない」
「オープンで包括的かつ柔軟な貿易枠組み」は経済面でのメリットをもたらすと強調した。
このIPEFが信頼性の高い制度として機能するのはアメリカ次第である。TPPを途中で脱退するような信頼性のない行動をされては困るというのが本音だ。
ASEANが心配するのは米国の東南アジア戦略は政権によって振れ幅が激しい。一貫性のない姿勢は不信感を植えつけ、中国の影響力拡大を許す遠因になっている。
結局は米国次第。米国の本気度が試されている。政権が代われば外交政策変わるようでは、こじれた日韓関係と同じである。
世界の警察をやめても、世界のリーダーとしての役割はしっかり果たして欲しいというのが多くの国の本音である。
TPPで指導力を発揮した日本。米国だよりにならず、IPEFでも指導力を発揮すれば、軍事以外で米国の右腕として世界をリードできる。日本の考える平和で開かれた世界の未来を自ら創造できるのではないか。
日本は長く政権を担当してきた自民党次第だ。ブレないことでは米国よりも信頼を得られる要素はある。それには自民党が一党で政権を担える力をつけなければならない。
覚悟をもって決められる政治、それにはしっかりした保守イデオロギーを確立し、党員が覚悟をもって世界のリーダーを意識した政治に目覚めることであろう。
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