イスラエル VS ハマス戦争に消されたウクライナ戦争
Vol.4-10.12-1141 イスラエル VS ハマス戦争に消されたウクライナ戦争
2023-10-12
今月7日のイスラム組織ハマスによる突然のイスラエルへの大規模攻撃。イスラエル軍はパレスチナ・ガザ地区への空爆を強め、ハマス側もイスラエルに対し多数のロケット弾を発射。双方の死者は増え続けている。
いったいなぜ、イスラエルとパレスチナは凄惨な対立の歴史を繰り返してきたのか。NHK国際部の鴨志田郷の解説によれば・・・
◇ パレスチナの地にあるエルサレムには、宗教上とても重要な地域であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれの聖地がある。
1948年にイスラエルというユダヤ人の国家ができた。その後は、この土地の中で “ 将来、パレスチナ人の国家になりたい地域 ” (東エルサレム・ヨルダン川西岸・ガザ地区)を総じて、パレスチナと呼んでいる。イスラエル、パレスチナがそれぞれ国として共存するのが理想だが、イスラエルの建国を発端に対立しているのがパレスチナ問題。
パレスチナ問題の根源は「2つの悲劇」にある。
(1)ユダヤ人が2000年の長い歴史の中で世界に離散し、迫害を受けてきた悲劇。
やっとの思いで悲願の国(=イスラエル)をつくり、それを死守していきたい、そんな強い思いをユダヤ人はもっている。
(2)パレスチナの地に根を下ろしていた70万人が、イスラエルの建国で故郷を追われたという、パレスチナ人の悲劇。
いまパレスチナ人が住んでいるのは、ヨルダン川西岸とガザ地区(日本の種子島ほどの面積に約200万人が住む)という場所。国にはなれないまま、イスラエルの占領下におかれているのが現状。
<パレスチナの歴史>
① その昔、パレスチナの地には、ユダヤ教を信じるユダヤ人の王国があった
② しかし、この国は2000年ほど前にローマ帝国に滅ぼされる
③ このとき、ユダヤ人は、パレスチナを追い出されて世界に散り散りに
④ パレスチナの土地には支配者・アラブ人が住み続ける。散り散りになったユダヤ人はヨーロッパや中東、アフリカで暮らすが差別や迫害に苦しむ
⑤ イエス・キリストがユダヤ教の国で新しい教えを広める
⑥ イエス・キリストはユダヤ教の聖職者たちと対立し、十字架にかけられ処刑
⑦ ユダヤ人はキリストを処刑した人たちとみなされ、さらに差別や迫害の対象になる
⑧ 迫害が続く中、19世紀にユダヤ人たちの中で、かつて王国があったパレスチナの地に戻ろう、国をつくろうという運動が起こる
⑨ 第1次世界大戦の時、イギリスが「ユダヤ人の国家建設を支持します」と約束
⑩ ナチス・ドイツによるホロコーストで600万人のユダヤ人が殺害される
⑪ 1947年「パレスチナの地に国をつくらせよう」という国連決議が採択
⑫ 1948年には、ユダヤ人がイスラエルの建国を宣言
⑬ パレスチナ人は「勝手に国をつくられるのはおかしい」と反発
⑭ 建国の翌日(1948年5月15日)、周辺のアラブ諸国がイスラエルに攻め込む。第1次中東戦争勃発
⑮ アラブ諸国とイスラエルの緊張状態は続き、1967年の第3次中東戦争勃発。イスラエルは、戦争前まで認められていた休戦ラインを越え、国際法上、認められていないところまで占領。事実上「パレスチナ」と呼ばれていた土地のすべてを統治下に置く
⑯ 1993年、アメリカとノルウェーの仲介で、イスラエル、パレスチナ双方のトップにより交わされたのが、パレスチナ暫定自治合意、いわゆるオスロ合意
《オスロ合意》
(1)パレスチナの暫定自治区を認める
(2)ヨルダン川西岸とガザ地区からイスラエルは段階的に軍を撤退させる
いずれはイスラエル、パレスチナの双方が共存することを目指す内容
~この合意によって双方の人たちの多くが、共存できる夢を描いた~
⑰ 2000年9月、当時右派の政治家でのちに首相になるシャロン氏が、エルサレムのイスラム教の聖地に足を踏み入れ和平は瓦解。またもや暴力の応酬が始まる
⑱ 2006年イスラム原理主義ハマスがガザ地区を実質支配。和平交渉を望むヨルダン川西岸とパレスチナが一体ではなくなってしまった
その後、紆余曲折があって現在に至る。・・・以上が解説の大まかな流れだ。
宗教とは何とも恐ろしいものだ。
かのアインシュタインは、科学と宗教の関係について、「 科学なき宗教は盲目であり、宗教なき科学は不具である」といった。一つの見方として「人を幸福にしない科学、理性をなくした宗教ともに不具である、と喝破したように宗教が争いの具になっては本末転倒である。
翻って日本の宗教環境。新渡戸稲造がドイツ留学時、高名な法学者の「エミール・ド・ラブレー」によって「宗教教育がない日本では、どのように道徳教育を授けているのか?」と問いかけられ、返答に窮した新渡戸稲造。
日本独自の複数の信仰や思想(仏教・神道・儒教)が武士道精神の形成に影響を与え、かつ日本人の道徳の基本となっていることに気がつき、「宗教教育がない日本」という問いに、世界に向け自ら著した『武士道』によって、日本の社会通念や道徳観を世界に示した。
宗教というものに執着しないこのような日本である、世界の宗教戦争がなかなか理解できない。
今回のイスラエルとガザ地区を支配するハマスとの戦争はいわば内戦である。
過去4回もの戦争、またかと言う感じがしたのは正直な気持ちである。
現在進行形のウクライナ戦争とは全く質が違う。
ウクライナ戦争は、ロシアの領土強奪を目的とした有無を言わせぬ侵略である。領土と自由民主主義を守る戦いはイスラエル内戦とは全く質を異にする。戦闘の終結は、ロシアが撤退すれば終わる。ただ、完全なる終戦は奪い取った領土がウクライナへ返還されなければならない。イスラム原理主義・ハマスとはそうはいかない。アフガニスタンのタリバンと似ている。
以前、オスロ合意がなされ和平寸前でイスラエルのシャロン氏が、エルサレムの聖地へ足を踏み入れただけで過激なドンパチが始まったように、ヒリヒリする過激な精神性、そこには第三者が入れない微妙で複雑な感情がうずまく。
日本に有効な手段はない。
大いに気になるのはイスラエルとハマスの戦争が始まって以来、NHKニュースから『ウクライナ報道が消えた』ことだ。
イスラエルとハマスの戦争報道は大事である。しかし忘れてもらっては困るのはウクライナが日々命を削って領土と自らの自由と世界の民主主義を守っている終わりが見えない戦いだ。日本にとって、あるいは欧米民主主義国家にとってウクライナに大きな支援をしているのは何故か。その理由を知ってか知らずか、ウクライナ戦争がもう終わったかのようにNHKニュースはイスラエルとハマスに完璧に切り替えてしまった。クローズアップ現代でも取り上げる熱の入れようである。
イスラエル戦争が始まってここ1週間、NHKはウクライナ戦争のニュースを流さなくなったのは意図的なものを感じる。
日本だけではない、アメリカ、特に共和党の中に “ 支援疲れ ” という言葉が目立つ。とんでもない話だ。当のウクライナは世界が共有する『力による現状変更』に対して身を以て戦っているのだ、『支援疲れ』とはあまりにも身勝手である。
日本がその感情に加担するとすれば、日本の主体性が問われる。やはりアメリカの飼い犬か?ということになる。
イスラエルはアメリカにとってはあらゆる意味で関係は深い。しかし日本にすれば、イスラエルとハマスはいわば内戦。勝手にしろと言いたい気分だ。ウクライナは命がけで大国のテロとすでに1年半も戦っている。我が領土と自由を守るためである。いわば、自由民主議 VS 全体主義国家との戦いに世界の思いを一身に背負っている。その戦いに日本は自由陣営の一員とし支援している。
武器支援できない日本は日々のニュースを詳細に報道することでウクライナ支援をしているという意識を強く持たなくてはならない。報道の役割、その力はとてつもなく大きいのだ。
NHKは口が酸っぱくなるほどSDGsを訴える。コロナニュースを3年間一日も切らさず流したではないか。何故、ウクライナ報道を断絶するのだ。
ウクライナ報道は国営放送局として国家の使命である。理解できないNHK報道姿勢は反国家的であるとさえ思う。イスラエル戦争勃発をいいことにウクライナ報道を切ってしまった罪は大きい。
欧米各国がウクライナに多額の武器支援をする中、唯一日本は武器支援をしない先進国だ。であればできる支援はそれ以外の物資や情報、インフラ支援である。その中でも一日も切らさずウクライナ戦争の実相を報道することが最大の支援になる。そのことが何故わからない。
ネタがないとは言わせない。日々命を落としながらもテロ国家・ロシアとの戦っているウクライナ国民は自由主義社会の同胞である。身内を救うためと思えば、報道内容などいくらでも探せる。
ウクライナ戦争の本質を理解し、日本が世界を牽引するウクライナ報道こそ日本の役割である。性根を入れたウクライナ報道を戦争終結まで一日も切らさず報道し続けることこそ使命だ。
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